親の介護は子どもの義務?親の介護でよくある問題と解決策を解説

子どもによる親の介護が義務なのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。もし、義務だった場合はペナルティが科されるのでしょうか。
この記事では、親の介護は子どもの義務なのか、親の介護でよくある問題、親の介護問題の解決策などを解説します。親の介護について詳しく知りたい方は、是非参考にしてください。

親の介護は子どもの義務なのか?
親が介護の必要な年齢になった場合、子どもは親の介護をしなくてはならないのか、介護を放棄した場合はペナルティが科されるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
トラブルを回避するためには、親の介護について正しい知識を身につけることが大切です。親の介護が子どもの義務なのかを詳しく解説していきます。
扶養・扶助義務がある
要介護者との関係が以下に該当する方は、介護をする対象になります。
- ・直系血族
- ・兄弟姉妹
- ・夫婦
直系血族とは、要介護者と直接的な血縁関係にある人物で、祖父母や父母、子、孫といった人物が該当します。上記に該当した場合は、要介護者の扶養や扶助をしなくてはなりません。
民法第877条には直系血族や兄弟姉妹が互いに扶養する義務があることが明記されており、身の上の面倒を見て、経済的な支援をする必要があります。
また、民法第752条には夫婦は同居して互いに扶助する義務があることが明記されており、夫婦間にも義務があることが分かります。
介護をしないと罪になる可能性がある
要介護者の直系血族や兄弟姉妹、夫婦には、扶養や扶助の義務があることが分かりましたが、介護しなかった場合はどうなるのでしょうか。
介護が必要であるにもかかわらず介護を放棄した場合は、以下の2つの刑事罰に問われる可能性があるので注意してください。
- ・保護責任者遺棄致死罪
- ・保護責任者遺棄致傷罪
保護責任者遺棄致死罪とは、必要な援助や保護をしなかったことで要介護者が亡くなったケースに適用される刑事罰です。亡くならなかった場合でも、相手がケガをしたケースでは保護責任者遺棄致傷罪が適用される可能性があります。
扶養義務が発生しないケースもある
要介護者の介護を放棄したからといって、必ず罪になるわけではありません。介護をすると自身の生活に支障が生じるようなケースでは、無理に介護をしなくても良いのです。
可能な範囲で要介護者の介護をする必要はありますが、可能な範囲かどうかを決めるのは自身ではなく家庭裁判所です。
そのため、家庭裁判所が家庭の事情を考慮しながら総合的に判断するという点に注意しましょう。
親の介護にかかる費用とその対策

親の介護が始まると、想像以上に多くの費用がかかります。介護サービスの内容や期間、要介護度によってかかる費用に差はありますが、どれも経済的負担は少なくありません。事前に把握しておかないと家計に大きな影響を与える可能性があります。
ここでは、介護に必要な平均的な費用の目安、公的支援制度、民間介護保険の利用などの費用負担を軽減するための方法を詳しく解説します。
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介護に必要な平均的な費用とは?
介護にかかる費用は、一時的な支出と継続的な支出に分けられます。
一時的な費用は、介護用ベッドや車椅子の購入、住宅のリフォームなどが含まれ、平均で約74万円です。一方、月々の費用は訪問介護やデイサービスの利用料、紙おむつなどの介護用品を含めて平均約8.3万円となります。
参照:生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
また、介護期間は平均5年1か月(61.1か月)で、総額で約500万円以上かかることもあります。特に認知症などで常に介護が必要なケースは施設利用が多く、その分費用が増加します。さらに、家族の離職や収入減など間接的な負担も無視できません。実情を理解し、早めの備えが重要です。
公的支援制度の活用方法
日本の介護保険制度では、要介護認定を受けた高齢者は、訪問介護やデイサービスなどの支援を原則1割(所得により2~3割)で利用できます。「高額介護サービス費制度」では月ごとの自己負担額に上限が設けられています。
また、介護に関する支出は、医療費控除や障害者控除の対象となることがあり、経済的な軽減が見込めます。住宅改修費や福祉用具の購入費を補助する制度も整っています。
申請や相談は市区町村や地域包括支援センターを通じて行います。これらの制度を事前に知っておくことで、介護にかかる費用を大きく抑えられるでしょう。
民間介護保険のメリットと注意点
民間介護保険は、公的介護保険でカバーしきれない支出に備える手段です。要介護認定を受けた場合は、一時金や年金形式で給付が受けられ、在宅介護や施設入所の経済的負担を軽減できるでしょう。保険金の用途に制限がないという点もメリットです。
一方で、保険料が高めで、加入時の年齢や健康状態によっては、加入できない場合があります。保険会社ごとに給付条件が違うため、内容の比較検討が不可欠です。また、掛け捨て型か貯蓄型かにより返戻金の有無が異なります。契約時はよく確認し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
在宅介護と施設介護の選択肢
親の介護を考える際、在宅介護および施設介護のどちらを選ぶかは、家族にとって重要な決断です。双方にメリットとデメリットがあり、要介護者の状態や家族の事情、経済的な負担などを総合的に考慮する必要があります。
ここでは、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
在宅介護のメリット・デメリット
在宅介護の最大のメリットは、要介護者が住み慣れた自宅で生活を続けられることです。精神的な安心感が強く、家族と過ごす時間も確保できます。施設介護に比べて費用を抑えられる場合もあり、介護サービスを柔軟に選べるのも特徴です。
一方で、家族が介護を担う負担は大きく、特に介護の知識や経験がない場合は、身体的・精神的な疲労が溜まりやすくなります。要介護度が上がった場合は、自宅における対応が難しくなることもあります。在宅介護を選ぶ場合は、地域の介護サービスや制度を上手に活用し、無理のない体制づくりを目指すことが不可欠です。
介護施設の種類と特徴
介護施設にはいくつかのタイプがあり、要介護者の状態および希望に応じて選択することが大切です。
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上が対象で、費用は比較的安く、終身利用が可能です。ただし入居待ちが長いこともあります。一方、介護老人保健施設(老健)は、要介護1以上(または40歳から64歳の特定疾病による要介護認定を受けている方)が対象で医療・リハビリ中心で在宅復帰を目指す施設です。入所期間が限定されています。
有料老人ホームは、民間運営で、介護付きまたは住宅型など多様な選択肢があり、費用やサービス内容も施設によって異なります。グループホームは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送る施設です。家庭的な雰囲気と専門的なケアが特徴です。
各施設の特徴を理解し、必要な支援や本人の希望に合う施設を選ぶことが重要です。
施設選びのポイントと注意点
介護施設を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
立地面では家族が訪問しやすい場所かを確認することが大切です。アクセスの良さは面会頻度にも影響します。見学時には清潔さ、スタッフの対応、入居者の様子といった施設の雰囲気をチェックしましょう。
また、医療対応の有無や介護の質が要介護者の状態に合っているかサービス内容を事前に確認することも欠かせません。入居金や月額費用、追加料金の有無を把握し、無理のない範囲かどうか、費用面も含めてしっかり検討しましょう。
施設選びは、候補を1つに決める前に複数の施設を見学・比較するのが理想です。家族やケアマネジャーと話し合い、最適な選択をしてください。

親の介護でよくある問題

親の介護では、以下のような問題が発生するケースが多いので注意が必要です。
- ・ストレスによる精神的・体力的負担
- ・介護放棄や介護殺人
- ・介護を原因とする人間トラブル
問題が起きる前に元気なうちに近くに親を呼び寄せも検討の1つです。へーベルvillageは、こんな方におすすめです。
それぞれの問題を詳しく見ていきましょう。
ストレスによる精神的・体力的負担
親の介護を自身で行うことは容易ではありません。介護に多くの時間を費やすだけでなく、十分な体力も必要とされます。
介護の時間を確保するために、正社員から時間的な融通が利きやすいパートやアルバイトに切り替える方、介護で体を痛めて日常生活に支障が生じる方も少なくありません。
人との付き合いが減少する、収入が少なくなる、体を痛めるなどの精神的・体力的な負担が原因で、うつ病などを発症してしまう方も多いので注意が必要です。
介護放棄や介護殺人
うつ病を発症しても、第三者に相談できれば症状の改善が見込めます。しかし、ストレスを抱え込んでしまい、誰にも相談できずに状況が悪化する方も少なくありません。
状況が悪化した場合は、介護放棄に発展する可能性があります。介護のストレスや将来への悲観が原因で、親を殺してしまう、無理心中に至る事件も発生しています。
このような事件に至る前に少しでも早く第三者に相談することが大切です。
介護を原因とする人間トラブル
要介護者の介護の義務を負う介護者が複数人いる場合は、誰が介護を担当するかを巡って親族間でトラブルに発展する可能性があります。
長男・長女だから、仕事が忙しい・子どもが受験などの理由で互いに介護を押し付け合って、トラブルに至るケースも少なくありません。
また、親の預貯金や年金などを介護に利用するだけでなく、介護を担当している親族が他の親族に黙って搾取するといった金銭的なトラブルも想定されます。
親が介護を必要とする前は関係が良好であった親族であっても、介護をきっかけに関係が悪化する可能性があるので注意が必要です。
介護と仕事の両立を支援する制度
高齢化社会の進展とともに働きながら家族の介護を担う人が増えています。介護と仕事の両立には、身体的・精神的・経済的に大きな負担を伴うため、制度の整備と適切な支援が不可欠です。
厚生労働省では、介護離職を防止し、働く世代を支援する目的で介護休業制度や両立支援措置を法律で整えています。さらには、企業による柔軟な勤務制度の導入や、地域資源の活用も両立の鍵です。
ここでは代表的な公的制度と企業による支援、実際に両立を成功させるための工夫などを紹介します。
介護休業制度の概要
介護休業制度とは、育児・介護休業法に基づいて、労働者が家族の介護に専念できるよう設けられた制度です。
要介護状態にある家族1人につき、通算93日まで、最大で3回に分けて取得可能です。休業中には雇用保険から「介護休業給付金」が支給され、賃金の67%が補償されるため、収入面の不安を軽減できるでしょう。
対象家族は配偶者、親、子、祖父母、兄弟姉妹など幅広く、実質的な介護を行う場合には利用が認められます。また、介護開始時の準備およびサービス調整にも活用できるため、仕事と両立するための重要な一歩です。申請手続きは勤務先を通じて行い、早めに職場と相談して準備を進めましょう。
職場でのサポート体制
企業においても、従業員の介護と就労の両立を支援する体制の整備が求められています。代表的な制度には、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差出勤制度、介護費用の助成制度などです。これらは介護休業とは別に利用可能で、導入から3年以内に2回以上利用することが可能です。
例えば短時間勤務制度の場合、労働時間を短縮して家庭と職場を両立しやすくします。フレックスタイム制度や時差出勤制度は、通院や訪問介護の時間帯に合わせて勤務時間を柔軟に調整できる点が魅力です。
また、企業によっては介護費用の補助制度や専門相談窓口を設けている場合もあります。加えて、残業の免除または深夜勤務の回避などのように、就業環境に対する配慮も法律で保障されています。企業側の理解と支援の姿勢が、介護と仕事の両立には不可欠です。
介護と仕事を両立するためのポイント
介護と仕事の両立を実現するには、制度を利用するだけでなく、日々の生活設計と職場・家庭との連携も重要です。特に押さえておきたいのは、早めの情報収集、職場との円滑なコミュニケーション、地域資源の活用、専門家への相談です。
介護が始まる前から制度や支援内容を理解しておけば、慌てずに対応できます。職場には早期に状況を伝え、業務負担の調整や休業取得の相談をしましょう。また、地域包括支援センターなどの公共窓口では、介護サービスの紹介や助成制度などを案内してくれます。
ケアマネジャーまたは社会福祉士など、専門家のアドバイスを得ながら、無理のない介護計画を立てることが重要です。企業独自の両立支援研修や相談制度を導入している場合もあるので、自社の取り組みも確認しておきましょう。
親の介護問題の解決策

親の介護問題は正しく向き合わないと、介護放棄や介護殺人などの事件に発展する可能性があります。トラブルを回避するためには、対策を事前に練っておくことが重要です。
親の介護問題の解決策として、以下の3つが挙げられます。
- ・元気なうちに介護について話し合う
- ・介護に必要な知識を身につける
- ・親族間で役割分担を決める
それぞれの解決策について詳しく説明していきます。
元気なうちに介護について話し合う
年齢がまだ若く、元気な方であっても、病気やケガが原因で介護が急に必要になるケースも少なくありません。急な要介護状態になっても、親族が速やかに対応できるようにするには、元気なうちに介護について本人と親族間でしっかり話し合っておくことが大切です。
例えば、老後に不安を抱え始めたタイミングでトラブルが発生した際に駆けつけてくれる高齢者向け住宅に入居するのか、介護が必要になったタイミングで介護施設に入所するのかなどです。
老後の迎え方、利用したい施設などを本人と話し合っておけば、そのような状況になっても速やかに対応できるでしょう。
介護に必要な知識を身につける
親の介護は親族間でするべきと考えている方も多いのではないでしょうか。施設への入所を嫌がる親もおり、親族間で介護をするケースも一定数見られます。
しかし、専門知識を有しておらず、設備が整っていない状況で親の介護をするのは簡単ではありません。特に、慣れていない介護を設備が整っていない環境で行うことによって、介護者が腰痛を発症したりケガをしたりする可能性があります。
親に介護が必要になった場合にどのようなサポートが必要なのか、どのようなトラブルが想定されるのかなどの知識をしっかり身につけておきましょう。
親族間で役割分担を決める
親の介護は全員で行うべきものです。そのため、親族間で役割分担を決めることが大切です。
金銭的な負担ができない介護者は身の回りのサポートを行う、遠方に住んでいる・時間的に参加が厳しい介護者は金銭面のサポートを行うなどです。
役割分担を決める際は、介護者全員で話し合いましょう。全員が話し合って納得しておけばトラブルに発展するリスクを軽減できます。
まとめ
民法には、扶養・扶助について明記されているため、親の介護は子どもの義務といえます。しかし、原則義務ではあるものの、金銭的な問題があるといったケースでは、介護の義務が免除される可能性があります。
介護の義務があるかどうかは自身で判断するものではありません。家庭裁判所が各家庭の状況を踏まえながら判断するものである点に注意してください。
親の介護をする際は、問題が発生しやすいため、どのような問題が発生する可能性があるか確認しておくことが重要です。解決策も確認しておけば、トラブルを未然に防げるでしょう。
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