ルーツはドイツ

ルーツはドイツvol4:松任谷正隆 / 僕がドイツ車に乗る理由

COLUMN

「6.3」の世界が忘れられず、その影をずっと追い続けていた

松任谷正隆さん(以下松任谷):ドイツ製品については、ドイツが同盟国だったせいか、小学校低学年の頃からライカ、ゾーリンゲン、フォルクスワーゲンは質実剛健で素晴らしい工業製品なのだと教え込まれていました。
初めてドイツ製品に接したのがブラウンの初代シェーバー。
あれが僕にとってはドイツ製品そのもので、ずっしりと塊感のあるイメージを象徴していましたね。
後年、叔父から、バルナック型ライカの原点とされるⅢ型を譲り受けたのですが、やはり想像どおりの塊感を感じました。
かつてのメルセデス・ベンツも同様に。

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ライカコレクターの叔父から譲り受けたというⅢ型。
前身のⅡ型にスローシャッター機能が追加されているモデル。

数々のクルマ遍歴を重ねてきた松任谷正隆さんにとって、ドイツ車には特別な印象と記憶があるようだ。
まだ22、23歳の頃。
とある出版社の社長とゴルフに行き、帰りに運転を任された。
その社長が乗っていたのがメルセデス・ベンツ300SEL 6.3だった。

松任谷:素晴らしいクルマとは思いませんでした。
しかしケタ外れのパワーを持つ異常な世界をどうやらその時に刷り込まれてしまったようです。
その後ドイツ車が欲しくて73年にアウディを手に入れ、それに満足できずに77年にメルセデスのW116に買い替えました。
このクルマがまさにドイツプロダクトを体現していて、高級な金庫のような重厚な雰囲気をもっていましたね。
80年に500SELに乗り換えたのですが、 "金庫感"が薄れて残念でした。
この頃から本来あったドイツらしさが薄れ始めたのかもしれませんね。

それでも現在の愛車はメルセデス・ベンツC63。
2011年から乗り始め、ボディにマットグレーのカーフィルムを貼り、質実剛健なルックスをより際立たせている。

松任谷:かつて運転した6.3の影を追いかけてここに行き着いているんでしょう。
このクルマにはパフォーマンスパッケージクラスというオプションがついていて、LSDとハードサスペンションを搭載している。
いわばサーキット仕様。
だから乗り心地は硬くて、この年齢にはきつい。
でも手放せない。
この後継モデルから4Lターボになってしまって、面白くない。
あの頃初めて運転した6.3から今の63までずっと乗り続けているような、そんな不思議な錯覚も感じていて、特別な愛着もあるんです。

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現在の愛車の1台、メルセデス・ベンツ C 63。マットグレーのカーフィルムを貼った色味も気に入っている。
鍛造19インチアルミホイールから透けて見えるレッドペイント仕上げの強化ブレーキシステム。
エンジンは怪物的パワーを誇るV型8気筒DOHC 6208ccを搭載。

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german4-2.jpgPROFILE松任谷正隆(音楽プロデューサー)
音楽プロデューサー・アレンジャー・キーボーディスト・作曲家。
モータージャーナリスト・タレントとしても活動。
東京都出身。

written by Masaki Takahashi /
photographed by Shinichi Miura

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HailMaryこちらのコラムはHailMary8月号に掲載されています。
※WEB掲載用に一部加筆・修正しています。

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