最強の壁 ヘーベルを科学する

PART4 ONE FOR WALL:ドイツにある世界最大のALCメーカー

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PART4 ONE FOR WALL

ドイツにある世界最大のALCメーカーエクセラ社の研究所に息づくもの

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バウハウスの時代から受け継いできた「職人魂」

ヴァルター・グロピウスやミース・ファン・デル・ローエが軽量気泡コンクリート(以下ALC)の研鑽を重ねたバウハウス。この学校が教育機関として評価されるべき最大のポイントは、芸術性以上に技術に基づく実現可能性を追求していた点にある。

グロピウスの言葉を借りれば「材料と仕事の段取りについての深い知識によってデザイナーたちが工業的な大量生産のためのモデルをつくり出せる」よう教育をほどこしたのだ。技術的な質が高く、大衆生活に寄り添うところに価値を見いだすプロダクツを生み出してきた国に根づくクラフツマンシップの原点がここにある。

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「Hebel」「Ytong」「Silca」といったトップブランドの製造を担当する世界最大のALCメーカー、エクセラ社には、その時代から受け継がれてきたドイツのクラフツマンシップが宿っている。この会社は単なる建材メーカーではない。

ALC商品の製造部門とは別に(建材メーカーの領域を越えた)研究設備を整え、鉱物学や化学をはじめあらゆる関連分野のスペシャリストを集めたうえで未来へ向けた最先端の研究を行っている。(日本ではパネル型が主流だが)現在のドイツで主流になっているブロック型のALCが、研究所のあちこちで実験台になっている。

その白く美しいブロックを手に、真剣なまなざしで実験や研究をつづける若者たちの姿に、バウハウスで学んだ職人たちの面影が重なってしまうのだ。

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グローバル建材メーカーであるエクセラ社の研究所では、マテリアルの研究開発から耐久性や遮音性をはじめとする実験まで、一般の建材メーカーには見られない設備や最先端技術を駆使し、ALCに関するさまざまなイノベーションを進めている。

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写真中央の人物がグループのCEOを務めるJ.ファブリティウス博士。「ALCはしっかりとしたサイエンスに基づく建材」と明言する。

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研究所の屋外にレイアウトされたALC製の地球儀が、世界最大のALCメーカーを物語る。

 

これが2018年のドイツに建つヘーベルハウス
堂々とした容姿にはピュアな職人気質が宿る

ヘーベルの壁はベルリンの"障壁"も取り払い、ALC発展に寄与した

きわめて地震が少ないドイツでは、主に(パネル材ではなく)ブロック体のALCが住宅建材として利用される。このため、目地のないフラットな外壁の家が多く見られる。

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郊外に建つドイツのヘーベルハウス。威風堂々とした外観に圧倒される。

現地のヘーベルハウスを訪ねても、上写真のように真白でフラットな外壁をもつ家が多く、ファサードにはバウハウスの実験住宅のDNAを感じやすい。

ヘーベル・ブランドは、現在エクセラ・グループのなかで最も認知度の高いALCブランドのひとつであり、ヨーロッパでは住宅以外に「大型商業施設に使用される最強建材のひとつ」としても認知されているそうだ。

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ヘーベルハウスの建築現場で働く人たちが掲げる横断幕に書かれたコピーは、英語に訳せばI am hebel HAUS=I love hebel HAUS!

エクセラ・グループの公式サイトによれば、「ヘーベル社はドイツ統一に最も貢献した建材ブランドとして、1990年から1996年の間、計5回にわたる国際建築フォーラムを主催した」とある。ベルリンの壁によって閉ざされていた「西」と「東」のモダン建築を今一度お互い見直し、統一後はすべてのハザードを取り払い、力を合わせて建材開発を進めていこうとする狙いがあったのだ。

そういった努力が実り、ALCは21世紀に入っても成長しつづけ、最近では東欧やアフリカなどでも市場拡大している。国際交流も盛んで、「国際AAC 会議」(ICAAC/編註:ヨーロッパでは「ALC」を「AAC」と呼ぶケースが多い)が定期的に催されている。この会議には世界各国の科学者、大学教授、メーカーの研究者などが集い、研究発表や意見交換によってボーダーレスな交流がはかられている。

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HailMaryこちらのコラムはHailMary1月号に掲載されています。

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