私たちは今、社会全体を揺るがすような3つの大きなターニングポイントを迎えています。まず1995年、生産年齢人口(15-64歳)が減少に転じ、2005年、総人口が減少に転じました。そして2015年には総世帯数が減少に転じると予測されています。世帯数は住宅の数とリンクしますので、住宅がどんどん余っていく時代がすぐそこまで来ているわけです。
また、家族類型の変化を見ると、従来最も割合の大きかった「夫婦+子」の世帯数を2010年は単独世帯数が上回ると予測されることも転換点と言えるでしょう。
今急速に高齢化が進んでいるのは大都市とその周辺部です。戦後の高度経済成長期に都市を拡大し東京や大阪周辺部の「郊外住宅地」に住んだ世代が今本格的に高齢化を迎えているのです。高齢化が進んでいるところは同時に少子化も進んでいます。ですから、東京・大阪周辺と愛知・福岡という四大都市圏を中心に猛烈な少子高齢化が進んでいるわけです。
この半世紀足らずの間に、平均寿命はほぼ1.5倍に延びました。少子化の進行もあり、子育ての時期はむしろ短くなっていますので、子育て後の期間が大きく伸びて約30年あるわけです。従来は結婚して末子が誕生するまでを「世帯形成期」、末子が社会に出る時期および夫の定年までを「世帯成長期」、それ以降を「老後期」と大きく3つに分けていましたが、平均寿命が1.5倍になった今、この30年を一括りに老後と言ってしまうのは無理がありますので、私はこれをさらに3つのステージに分け55-65歳を「成熟期」、65-75歳を「引退期」、75歳以上を「老後期」と名付けました。つまり住まいのあり方もそれまでの「世帯形成」「世帯成長」「老後」の3拍子から「成熟期」「引退期」を挟んだ5拍子に対応する家が必要になったと言うことです。
都市が拡大し、35歳で入居した新興住宅地は、50年後に世代交代してきました。例えば1995年以降の都心再開発は、戦前に開発された住宅地で、2005年を中心とした東京23区内のマンション建設は概ね1955年頃開発された場所です。70年代後半に開発された郊外住宅地は2025年以降に世代交代の時期を迎えることになります。
街はまるで植物のように駅から道路を延ばして成長し、お父さんは働き蜂のように養分を丘の上の家に運び、子どもは巣立っていきます。そして定年でお父さんは養分を運ぶ生活をやめて丘の上に留まる暮らしが始まります。「まち」が枯れないためには何をすればよいのか。76年に入居が始まった典型的な郊外住宅地の自治会の協力を得てアンケート調査を実施しました。