くらしノベーションフォーラム レポート

第1回 くらしノベーションフォーラム  2010.6.24開催

テーマ: 少子高齢化・人口縮減時代における家族と住まい

講 師:園田眞理子氏
明治大学理工学部建築学科教授 工学博士・一級建築士。石川県生まれ。1979年千葉大学工学部建築学科卒。1993年同大大学院自然科学研究科博士課程終了。専門は建築計画学・住宅政策論。特に高齢社会に対応した住宅・住環境計画について、多数の研究、政策提言などを行なっている。

はじめに─人口縮減・3つのターニングポイント

私たちは今、社会全体を揺るがすような3つの大きなターニングポイントを迎えています。まず1995年、生産年齢人口(15-64歳)が減少に転じ、2005年、総人口が減少に転じました。そして2015年には総世帯数が減少に転じると予測されています。世帯数は住宅の数とリンクしますので、住宅がどんどん余っていく時代がすぐそこまで来ているわけです。
また、家族類型の変化を見ると、従来最も割合の大きかった「夫婦+子」の世帯数を2010年は単独世帯数が上回ると予測されることも転換点と言えるでしょう。

拡大拡大

都市部は今後高齢化が急速に進む

今急速に高齢化が進んでいるのは大都市とその周辺部です。戦後の高度経済成長期に都市を拡大し東京や大阪周辺部の「郊外住宅地」に住んだ世代が今本格的に高齢化を迎えているのです。高齢化が進んでいるところは同時に少子化も進んでいます。ですから、東京・大阪周辺と愛知・福岡という四大都市圏を中心に猛烈な少子高齢化が進んでいるわけです。

拡大

長寿化により、人生は3拍子から5拍子へ

この半世紀足らずの間に、平均寿命はほぼ1.5倍に延びました。少子化の進行もあり、子育ての時期はむしろ短くなっていますので、子育て後の期間が大きく伸びて約30年あるわけです。従来は結婚して末子が誕生するまでを「世帯形成期」、末子が社会に出る時期および夫の定年までを「世帯成長期」、それ以降を「老後期」と大きく3つに分けていましたが、平均寿命が1.5倍になった今、この30年を一括りに老後と言ってしまうのは無理がありますので、私はこれをさらに3つのステージに分け55-65歳を「成熟期」、65-75歳を「引退期」、75歳以上を「老後期」と名付けました。つまり住まいのあり方もそれまでの「世帯形成」「世帯成長」「老後」の3拍子から「成熟期」「引退期」を挟んだ5拍子に対応する家が必要になったと言うことです。

拡大

住宅地開発の50年後に、まちは世代交代を迎える

都市が拡大し、35歳で入居した新興住宅地は、50年後に世代交代してきました。例えば1995年以降の都心再開発は、戦前に開発された住宅地で、2005年を中心とした東京23区内のマンション建設は概ね1955年頃開発された場所です。70年代後半に開発された郊外住宅地は2025年以降に世代交代の時期を迎えることになります。
街はまるで植物のように駅から道路を延ばして成長し、お父さんは働き蜂のように養分を丘の上の家に運び、子どもは巣立っていきます。そして定年でお父さんは養分を運ぶ生活をやめて丘の上に留まる暮らしが始まります。「まち」が枯れないためには何をすればよいのか。76年に入居が始まった典型的な郊外住宅地の自治会の協力を得てアンケート調査を実施しました。

拡大拡大

調査した郊外住宅地の環境

調査の対象としたのは約100ha、2100区画の住宅地で、多くは建売分譲です。65歳以上の高齢者比率は2005年に26%ですが、第一世代の60代の住民が多く、これから急速に高齢者の比率が上昇することが予測されます。写真はこのリタイア世代のお父さんに地域イベントへの参加を呼びかけるポスターです。地区計画によって最低面積160m2、最高高さ9m以下、3戸以上のアパート等は不可、外構は生垣またはフェンスとする、等が定められており、土地の細分化や賃貸アパートの建設が抑制され、緑豊かな住宅地としての良好な環境が保たれています。

拡大
ページ:12
ページのトップへ戻る