創業から息づいているサステナブルな社会への想い
素材メーカーであった旭化成が住宅づくりという新たな事業領域に進出したのは、今から52年前の1972年です。旭化成にとって住宅事業やB to Cの市場など未経験の分野に飛び込んだことから、事業の立ち上げは当時、大きな挑戦でした。それでも、大きな一歩を踏み出す決意をしたのは、旭化成の創業から変わらぬ“人びとがよりよい生活を実現できるように”という想いがあったからに他なりません。当時は、国内の住宅が不足しており、建物の品質も現在ほど高いものではありませんでした。そこで、当社は「素材メーカーならではの頑強で堅牢な住宅づくりで社会に貢献すること」を目指して、住宅事業をスタートしました。
1970年代においては、家は30年程度で建て替えるものといった風潮があり、旭化成ホームズの“頑丈で長持ちする家づくり”は、当時の住宅業界のトレンドとは少し異なっていたかもしれません。しかし、50余年が経った今、世界中がサステナブルな社会を目指しており、当社グループの「ロングライフ住宅」に寄せていただくお客様や社会からの期待は、非常に高まっていると感じています。先輩方が50年以上前に抱いた「日本の住宅を吾等の力で向上させる」という想いと志を引き継ぎながら、私たちはサステナブルなくらしを社会に提案し続けていきたいと思っています。
ビジネスを成長させ続けることで、持続可能な社会貢献を
私たちが持続可能な社会貢献を実現していく上で、事業の継続的な成長は不可欠です。2024年度は、当社グループが掲げる「Challenge & New Growth」を基本方針とする中期経営計画の最終年度となりますが、3年連続で過去最高の売上と利益を更新しています。また、すべての事業で黒字を継続しており、2017年から豪州、北米で展開している海外事業も着実に成長しています。お客様の満足度についても、2020年度以降は、入居時・1年時・中長期・リフォームとすべての指標が右肩上がりとなっています。これらの成果は、建築請負からアフターメンテナンス、リフォーム、不動産仲介、賃貸管理、金融・保険までサービスを提供できる旭化成ホームズグループのバリューチェーンを強化することで生まれています。
そして、この原動力となっているのが、社員の努力と成長です。創業時から「人財の成長=事業の成長」という考えを大切にしてきましたが、コロナ禍に直面しても社員一人ひとりがビジネスと働き方の変革に柔軟に対応し、お客様の期待に応え続けたことが、まさに事業の成長につながっていると実感しています。そして、2030年のあるべき姿「Vision for 2030」の第1ステップとして掲げた「2025年に売上高1兆円」の達成に向けて、着実に前進できていると感じています。
4つのテーマからなるマテリアリティについて
旭化成グループでは、2017年度に取り組むべき重要課題・テーマを「旭化成グループのマテリアリティ」として特定しました。当社でもサステナビリティ委員会において重要課題の検討を行い、「With Customer」「With Environment」「With Employee」そして「Our Integrity」という4テーマからなるマテリアリティを2023年度に特定しています。
4つのテーマの中で、With CustomerとWith Environmentを象徴する取り組みが、ヘーベルハウスやヘーベルメゾンの屋根で太陽光発電した余剰電力を買い取る「ヘーベル電気」のサービスです。お客様から買い取った電力を施工現場等の事業活動で使用する電力に活用することで、当社グループは「RE100」の目標達成に取り組んでいます。当初は2038年度の達成を見込んでいましたが、お客様から当初の想定以上の電力買取の契約をいただくことで、2023年度に大幅に前倒して目標を達成できました。これは、旭化成ホームズグループの社員がこれまでに安全で快適な住まいづくりに真摯に向き合い、定期メンテナンスやHEBELIAN NET.(HEBEL HAUSのオーナー様サイト)などを通じてお客様と築いてきた信頼関係の証であると感じています。ヘーベルハウスやヘーベルメゾンのお客様と一緒になって環境に貢献するこの取り組みは、当社グループならではのサステナビリティ活動であり、With CustomerとWith Environmentを連動させることができたと考えています。
With Employeeについては、これまでもさまざまな取り組みを実施していますが、より一層注力していかなければならないと感じています。先ほどお話しした通り、当社の価値創出の源泉は「人」です。多様な人財が成長・活躍し、幸せを実現するために、働き方改革やDXをはじめとするオフィスなどの環境整備、在宅・フレックス等の勤務形態の柔軟化をさらに推進し、社員一人ひとりが理想のキャリアを歩んでいくための支援を続けていきたいと考えています。また、旭化成グループは「健康経営優良法人2024~ホワイト500~」の認定を受けていますが、71項目の指標を設けて組織状況を診断する「活力と成長アセスメント(KSA)」やストレスチェック(e診断)などを活用しながら、今後も社員の健康と心理的安全性が確保された職場環境づくりに努めていきます。そして、社員と組織の活性化の土台として、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組みも推進していかなければなりません。この点に関しては、制度の充実だけではなく、制度を利用しやすい環境をつくっていくことが重要であり、多様性についての理解浸透や管理職登用に関する意識改革を進めています。私自身もキャリア採用の社員との座談会を企画・開催したり、他の役員も各事業本部を訪問するなどして、積極的に社員の声を聴く機会を増やしています。当社の強み・課題がどこにあるのかを把握する良い機会になっています。
最後のOur Integrityには、「誠実」「真摯」といった意味があり、具体的にはコンプライアンスや情報セキュリティ、社会貢献などの取り組みを指します。これらは事業を行う上での大前提であり、3つのマテリアリティのテーマの基盤となります。社会課題は日々変化するものですが、いかなるときにも重要であるのは誠実に事業を継続することだと考えます。事業領域やサプライチェーンが拡大していく中でも、創業から脈々と受け継がれてきた誠実さ・真摯さを盤石なものにしていくため、Our Integrityをマテリアリティに掲げています。
社会から必要とされるEssential Companyに向けて
当社が目指すありたい姿は、「お客様や社会、社員にとって真に価値のある会社、Essential Company」です。優良な企業として認められるだけではなく、お客様から感謝していただける、世の中から必要とされる会社を私たちは目指していきたいと思っています。
ありたい姿にある「価値」とは、財務・非財務の双方の価値を意味します。財務面では堅調な成長を遂げており、計画も順調です。この状況を維持しながら、非財務における価値向上も目指していきます。そこでカギとなるのは、やはり社員の力です。先ほどお話したキャリア採用の社員との座談会で、当社グループの印象を必ず聞くのですが、「皆さん本当に“お客様のために”働いている」「質問をすると、必ず手を止めて向き合って相談に乗ってくれる」という声がいくつもあがってきます。そんな話を聞いて、私は改めて旭化成ホームズグループの財産と誇りは、人であると実感しました。だからこそ、社員がさらなる成長をしていけるように、スキルアップやコミュニケーション活性化の仕組みづくりや環境を構築するための投資を惜しまず、続けていきたいと思っています。
社員一人ひとりが自身の価値を高めて、お客様や社会への貢献度を高めていく。その積み重ねによって、私たちの考えるEssential Companyを実現していきます。