基本的な考え方
私たちは、「あさひ・いのちの森」などの自然環境施設を創設し、生物多様性の保全に関するさまざまな調査・研究を行っています。それらの活動を通じて得た知見を「まちもり®」を通じて、事業活動に活かすことで、ステークホルダーの皆様と共に自然と調和する社会の実現を目指します。
自然共生サイトに「あさひ・いのちの森」認定
「あさひ・いのちの森」は旭化成富士支社内の工場跡地に創出した約1haの人工の森です。この森は、富士市沿岸部の原風景の再生を目指した環境再生ゾーンです。入念な事前調査を経て、旧工場跡の完全な更地に、従業員・地域有志1,900人余による植樹をもって、2007年に活動を開始しました。2007年の設立から2019年度までは、植生の成長観測が主な活動でしたが、森が健全な里山に育った2020年度より、森を活用した地域への環境貢献を目的とした産学共同研究を常葉大学と共に行っています。現在は「里山林」「自然林」「湿地」の3エリアで、それぞれの研究テーマを継続検証しています。
こうした継続的な調査・研究の成果と生物多様性の価値が社外にも認められ、2023年10月には、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「2030年までに地球上の陸域、海洋・沿岸域、内陸水域の30%を保護する」という国際的な生物多様性保全目標30by30の取り組みにおいて、環境省が初めて認定した自然共生サイトに「あさひ・いのちの森」が認定されました。あさひ・いのちの森の調査の知見をもとに生まれた「まちもり」を推進することで、お客様と共に豊かな自然と調和する暮らしの実現を目指し、生物多様性の保全により一層貢献していきます。
「まちもり®」の推進
「あさひ・いのちの森」で得た植生の知見を活用し、住宅の外構計画向けに独自開発した植栽手法が「まちもり」です。高木・中木・低木・地被植物という高さの異なる階層の植栽を、地域の植生を意識しながら組み合わせることにより、鳥や昆虫などの多様な生き物が集まりやすくなります。そして、「まちもり」を搭載した住宅と、街中にある街路樹や公園などの緑とがつながることで、より豊かな生態系が育まれ、地域一帯に「エコロジカル・ネットワーク」を形成していきます。
旭化成ホームズグループは、「まちもり」を戸建・共同住宅などのさまざまな事業活動に取り入れて、2023年度のまちもり採用率(引渡ベース)は、30.5%と前年度に比べ向上しました。さらに、住宅だけでなく、旭化成不動産レジデンスが提供するマンション、アトラスシリーズの植栽計画にも「まちもり」を採用しています。大規模な開発を伴うマンション建設での外構計画に「まちもり」を取り入れることで、より一層都市における生物多様性保全の推進に貢献していきます。
みどり豊かなくらしは生き物にもやさしい | HEBEL HAUS
あさひ・いのちの森にヨツボシトンボを誘致
開発行為や湿地の陸地化により全国的にトンボの生息地や産地が減少し、個体数が年々減少しています。こうした背景から、2024年5月にあさひ・いのちの森の目的の一つである「失われつつある田子の浦地区の原風景の再生と、地域の生物多様性への貢献」の活動として、常葉大学の加須屋真先生の監修のもと、静岡県のレッドデータに掲載されている準絶滅危惧種:ヨツボシトンボが森に定住するために必要と推定される数の卵をあさひ・いのちの森に設置しました。2026年までにあさひ・いのちの森がヨツボシトンボの自然発生する産地となり、地域の生物多様性に貢献することを目標としています。毎年状況をモニタリングしながら、卵の設置や環境の整備を行っていきます。