高齢者への賃貸物件の貸し出しはリスクが多い?オーナーが不安に思うこととは
高齢者が賃貸物件への入居を希望しても、オーナー側の判断で断られてしまうことがあります。過去に入居を断られた経験がある方は、オーナー側の考えを知っておくことで賃貸を借りやすくなるかもしれません。
今回は高齢者に賃貸物件を貸し出す際のリスクとして、オーナーが不安に思うことをご紹介します。賃貸物件への引っ越しを検討している方は、ぜひご一読ください。
高齢者の賃貸実情
まずは、賃貸物件に住む高齢者の割合や高齢者が賃貸を選ぶ理由など、賃貸実情をご紹介します。
高齢者の住宅
総務省の「平成30年 住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」によると、高齢者のいる世帯は持ち家が1,848万9,000世帯(82.1%)、借家が400万9,000世帯(17.8%)となっています。高齢者の単身者世帯では、持ち家が422万5,000世帯(66.2%)、借家が213万7,000世帯(33.5%)という結果です。
このことから、高齢者で単身者の3人に1人が賃貸物件に住んでいることがわかります。「高齢者は賃貸物件を借りにくい」と言われていますが、借りられないわけではありません。
不動産会社に賃貸を断られた人の割合
65歳以上の高齢者を対象におこなわれたアンケート調査をみると、不動産会社に賃貸を断られた人の割合は、全国で23.6%が断られた経験があると回答しています。賃貸を断られた回数は1回と回答した人が半数近くですが、5回以上と回答した人も13%以上と多いことがわかりました。高齢化が進む日本で、高齢者の賃貸物件問題はより深刻になっていくでしょう。
出典:株式会社R65『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査
高齢者が賃貸を選ぶ理由
高齢者が賃貸を選ぶ理由としては、自宅をもともと所有していない方はもちろん、子どもの独立や、配偶者が亡くなったタイミングで自宅を売却したなどがあります。
高齢者が賃貸物件を選ぶメリットは、今の生活に合った間取りや好きな住環境が整っている場所に住めること、急な修理などの大きな支出を抑えられることでしょう。子どもが独立したあとは、自宅が広すぎるので自宅の修理やリフォームの費用を抑えるために賃貸にするなど、高齢化が進む社会の変化とともにシニア層の家に対する考え方も多様化しています。
「高齢者は断りたい」オーナーにとってのリスクとは
高齢者への賃貸物件の貸し出しを「断りたい」と考えるオーナー側のリスクには、どのような理由があるのでしょうか。
高齢者の賃貸に拒否感があるオーナーの割合
前述で、賃貸を希望する高齢者の23%以上が入居を断られた経験があるとお伝えしました。
国土交通省の資料である、多様な世帯が安心して暮らせる住まいの確保に向けた当面の取組みについての「民間賃貸住宅における入居選別の状況」では、高齢者世帯の入居に拒否感があると回答しているオーナーは7割を超えていると示しています。
次では、オーナーが不安に思う主な理由を4つ見ていきましょう。
①支払いについて
国土交通省住宅局の「平成28年家賃債務保証の現状」によると、6割近いオーナーが家賃の支払いに対する不安から入居を制限していることがわかりました。特に70歳以上の高齢者になると断られやすい傾向があります。
理由としては、毎月の収入が年金のみの高齢者の場合、さまざまな事情で貯金がなくなると家賃を滞納するリスクがあるからです。家賃が支払われなければ回収に手間がかかり、オーナーにとって大きな損害となるため、定年退職をした高齢者の入居に慎重になります。
②孤独死のリスク
令和2年版高齢社会白書の「第2節 高齢期の暮らしの動向_4生活環境」によると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成30年には3,882人と、約10年で2倍になっていることがわかります。高齢化が進む日本では、今後孤独死のリスクはさらに増えるでしょう。
もし、賃貸物件で孤独死が起きて遺体の傷みが進んでしまうと、場合によってはリフォームや特殊清掃など原状回復が必要です。さらに、「事故物件」などと呼ばれると賃貸物件の価値が下がるため、単身の高齢者の入居はオーナーにとってリスクと言えます。
③保証会社の審査が通りづらい
一般的に、賃貸物件に入居する際には連帯保証人を立てる必要があります。
連帯保証人とは、借主が家賃を支払わないなどの問題を起こした場合、借主の代わりに家賃や修理費などを支払う義務のある人のことです。しかし、配偶者が他界していたり家族と疎遠になったりしている高齢者は、連帯保証人を立てることが難しくなります。
基本的に連帯保証人を立てられないときには「家賃保証会社」を利用しますが、60代以上になると審査時間が長くなり、金銭面の不安から家賃保証会社の審査も通りにくい傾向です。連帯保証人がおらず、保証会社の審査も通りづらいとなるとオーナーとしては家賃が支払われるか不安になるので、高齢者は断りたいと考えるのでしょう。
④病気やけがのリスク
高齢者は若い人に比べて、病気やけがを引き起こすリスクも高いです。深夜に大声を出したりや徘徊したりなど、他の入居者や近隣住民とのトラブルになる可能性も考えられます。
入居者同士のトラブルにはオーナーが間に入って対応しなければならないこともあるため、高齢者のサポートをしてくれる身内や親しい人が近隣にいなければ、高齢者の入居は難しいでしょう。
リスク以外を理解しているオーナーもいる
「高齢者は断りたい」と考えるオーナーがいる一方、高齢者の入居に対して理解を示しているオーナーもいます。
高齢者は支払いが堅実なこともある
高齢者は、若者よりも支払いが堅実なこともあります。
これまでの貯蓄などが十分にある場合や、安定した収入・仕送りがある場合、きちんと支払いをする高齢者がほとんどです。そのため、高齢者が賃貸物件を希望する場合、安定した収入や仕送りがあることを伝える、通帳をコピーして貯蓄を証明するなどの方法でオーナーを安心させることができます。
安定して長く住んでくれる可能性がある
高齢者は若い世代に比べて、転職や結婚・出産といったライフスタイルの変化が少ないので、引っ越しの可能性が低いです。10年、20年と安定して長期間住んでくれると、入居者を募集する機会が減り家賃収入も安定するため、オーナーにとってのメリットと言えます。さらに、入居者の入れ替わりが多いとオーナーは家賃の減額を検討しなければなりませんが、入居者の入れ替わりが少なければ減額回数が減る点も魅力でしょう。
空き部屋対策にもなる
高齢者の入居は、空き部屋対策にも有効です。一般的に防犯性が低いことから1階はあまり人気がなく、空き部屋になりやすい傾向にあります。しかし、高齢者は階段を登らなくてもよい1階のほうが足腰に負担がかからず暮らしやすい傾向にあるため、高齢者の賃貸需要を取り込むことで空き部屋対策になるでしょう。
まとめ
「高齢者の賃貸物件の入居は断りたい」と考えるオーナーもいますが、オーナーが不安に感じている金銭面や病気などの問題を解消または対策することで、入居できる可能性が高くなるでしょう。
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