安心して高齢者が一人暮らしをするには?近居とはどのようなもの?
親元から子どもが独立していくことは喜ばしいことですが、年齢や健康状態によっては子どもが近くにいないことに不安を感じている高齢の親御さんもいるのではないでしょうか。一方、子ども側も、もし親が病気やケガをしてしまったらすぐに駆け付けられないという心配があるでしょう。そのような問題を解決する暮らし方として「近居」があります。
今回は、近居がどのような暮らし方なのかをご説明します。
近居ってどんなもの?
近居とはどのような暮らし方か、近居以外との違いや近居をするきっかけと併せて説明します。
近居とは
近居とは、文字通り「近くに居を構える」という意味で、親世帯と子世帯が近い距離に住むことです。国土交通省では、近居について「住居は異なるものの、日常的な往来ができる範囲に入居すること」と定義されています。また、その具体的な範囲は「徒歩・自転車・車・電車で1時間以内」に行き来できる距離です。親と子の距離が近すぎず、遠すぎずという、ほどよい距離感を持って暮らすことができます。
近居以外の暮らし方
親と子での暮らしについて、近居以外には下記のような暮らし方があります。
- ・同居
- ・隣居
- ・遠居
どのような暮らし方か、それぞれの特徴を解説していきます。
<同居>同居とは、親世帯と子世帯が同じマンションの1室や、いわゆる二世帯住宅などの同じ住居に住むことです。それぞれの個室があってもキッチンやお風呂などが共用の場合が多く、住んでいる皆がお互いの生活リズムを気にかけて過ごす必要があります。
<隣居>隣居とは、同じ敷地内や隣同士などのごく近距離に親と子それぞれが住居を構えることです。また、二世帯住宅の場合でも、廊下や階段など建物内部で行き来できない「完全分離型」の二世帯住宅は隣居となるケースもあります。
<遠居>遠居とは、親世帯と子世帯の住居が別々かつ、その距離が遠い状態のことです。近居の定義は住宅間の距離が車・電車で1時間以内であることから、それ以上の距離に住んでいる場合を遠居と呼びます。
近居をしている割合
国土交通省がおこなった「家族の住まい方の実態と将来意向」についてのアンケート調査によると、既婚者とその親との住まい方は同居が23%であるのに対して、近居は約52%という結果が出ており、近居の割合が多い状況です。
しかし、高齢になるにつれて日常生活のサポート・介護が必要になり、同居の割合が増えていく傾向です。65歳以上になると、同居は約30%となっています。
近居のきっかけになったもの
内閣府がおこなった「少子化社会対策に関する意識調査結果」でわかった、近居することになったきっかけとして、以下が挙げられています。
- ・気軽に顔を見に行ったり、話し相手になったりできるから(29.9%)
- ・緊急の事態が心配だから(27.8%)
- ・介護・老後のため(13.4%)
- ・子育て支援のため(10.8%)
など
高齢である親が、すぐに駆けつけられる距離で生活をしていることは、万が一の事態を想定した時に安心です。また、子どもがいる家庭であれば、育児のサポートを親にお願いすることができます。なおかつ、定期的に孫の顔を親にみせられるので、親子で子どもの成長を見届けられます。住まいは別なので、親と子のそれぞれのプライベートも守りつつ、互いにサポートしながら生活をしていけるのは、理想的な生活の仕方ではないでしょうか。
出典:国土交通省「既婚者とその親との住まい方-「近居」を中心とした実態と将来意向-」
子世帯と親世帯が考える近居のメリット・デメリット
近居のメリット・デメリットは、子世帯と親世帯で異なります。ここでは、それぞれの世帯が考える近居のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
【子世帯】近居のメリット・デメリット
<メリット>- ・育児や教育のサポートを受けられる
- ・親の安否を確認しやすい
- ・介護や身の回りの世話ができる
なにかと手がかかる育児も、親世帯が近くにいればサポートしてもらえます。子どもが生まれた後も共働きする場合、そのようなサポートが助かり、共働きを続けやすくなるといったメリットがあります。また、行き来するのに時間がかからないため、緊急事態でも動きやすいでしょう。
<デメリット>- ・頼りにされすぎて負担が増える
- ・家事や育児に口出しされる
- ・気疲れする
近居すると介護などのサポートがしやすくなる反面、何をするにも頼られて負担が増えたと感じてしまう可能性も考えられます。また、家事や育児についてもサポートしてもらうことはできますが、親のやり方に口出しされてしまい、結局は頼りづらくなることもあるでしょう。
【親世帯】近居のメリット・デメリット
<メリット>- ・生活の中での心配事を相談しやすい
- ・子どもや孫と交流しやすい
- ・自身の安否を確認してもらいやすい
親世帯の近居の大きなメリットは、日常生活で起こる心配事を相談しやすい点です。自分一人ではできないことも、サポートしてもらいやすいです。また、子どもや孫と交流しやすいことも、メリットに挙げられるでしょう。頻繁に顔を合わせられるため、普段からお互いに様子を気にかけることができます。災害などの万が一の際にも、すぐに安否を確認してもらえます。
<デメリット>- ・何かと心配されてしまう
安否確認がしやすいのは良いことですが、日頃から些細なことについて心配されてしまうため、気疲れすることがあるかもしれません。心配されないように、距離をとってしまいたくなる可能性もあります。
うまく近居をするポイント
近居には、多くのメリットがある反面デメリットも存在するため、計画的に近居を始めなければ失敗してしまう可能性があります。ここでは、うまく近居をするためのポイントを説明します。
まずは短期間から始めてみる
最初から住宅を購入して近居を始めてしまうと簡単に引っ越しができないため、失敗してもリカバリーできない可能性があります。そのため、まずは賃貸住宅で期間を決めて近居が適正かを見極めてみましょう。
ルールを事前に決めておく
近居は、お互いの家への訪問頻度や方法などを巡ってトラブルが起こる可能性もあります。事前にルールを決めておくと、お互いの負担も小さくなるでしょう。
感謝の気持ちや思いやりを忘れない
近居だと、どうしても頼りにしてしまい、一方的に甘えてしまう可能性があります。そのため、お互いに助け合うことを大切に、思いやりや感謝の気持ち・行動を忘れないようにしましょう。
お互いのライフスタイルを尊重する
親世帯と子世帯では、それぞれにライフスタイルが異なります。お互いの生活リズムや習慣などを尊重し、それらを乱さないように交流することが大切です。
まとめ
近居は、同居と比べて程よく距離感があるため、それぞれのライフスタイルを守って生活できる住まい方です。安否を確認しやすいなどのメリットがある一方で、過干渉になるなどのデメリットも存在します。また、必ずしもすべての人にとって近居が最適な住まい方ではないため、近居以外にもさまざまな選択肢を検討しておきましょう。
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