メディア向けフォーラムレポート

第12回 くらしノベーションフォーラム

ナワバリ学で家族と住まいを読み解く


報告

ナワバリ学で解釈する二世帯交流空間の変遷

講演:小林氏 報告:松本

ナワバリを柔軟に考え二世帯住宅の将来に対応

 ナワバリ学によって、当社二世帯住宅の多くが明快に説明できます。 まず1975年、最初の二世帯住宅の誕生の際は親のナワバリで暮らす「べったり同居」から、親子世帯のナワバリを分ける上下分離型を提案しました。
 1987年、息子夫婦同居(DUO)と娘夫婦同居(DUET)の交流・協力形態の違いに着目して、息子夫婦同居はオモテ融合・家事分離というフレーズで実子である男のナワバリである玄関を一体とし、お嫁さんのナワバリとなる家事空間を分ける提案を行い、娘夫婦同居では逆のオモテ分離・家事融合の間取りを提案しました。

 2010年の「i_co_i」では「孫共育」のフレーズの元に、育児協力で孫の部屋に行く親世帯の実態を捉え孫の動きを考えながら「孫共育ゾーニング」と呼ぶ親世帯が子世帯に入り込んでもいいナワバリを設定しました。このゾーンの孫の部屋を親世帯と子世帯の中間に作ることで、子世帯のLDKを親世帯が侵さない子世帯のナワバリとしています。

 さらに2013年には、ナワバリを社会に開き、将来に対応させる「都市の実家」を発売。別居の家族が集まるとき、来客のとき、夜間の訪問介護のときなどのシーンを想定してナワバリを社会に開きつつ、かつて続き間の座敷が持っていた機能を受け止めるLDKやタタミリビングを設け、コックピット書斎など家族のナワバリが守られるような提案を行いました。

 小林先生からご指摘いただいたように、二世帯住宅はナワバリを分けたがゆえに、子世帯のナワバリの外である親世帯が空いた際にそのスペースをどう活用するのかという課題があります。活用するためには、親世帯子世帯間のナワバリの設定を柔軟に変える必要があると感じています。活用のストーリーとして、
1)一部を賃貸し他人のナワバリに
2)子世帯が1階にナワバリを移動し2階を孫世帯と二世帯に
3)ナワバリを拡大して趣味室や来客用に一体で使う
の3つがあります。

 私どもが行った、「空き世帯のある二世帯住宅の実態調査」の結果によると、親世帯だけではなく、子世帯の子も独立したケースが半数を占め、同居時から平均2.5人が減っています。親世帯に加えて子世帯のスペースも余る可能性があるわけです。
ところが、親世帯スペースが空いた方に「余っていると感じるか」と聞くと、余っていないと答える方が44%も居ます。この余り感のあるなしの2群を比較すると、来客利用の有無に大きな差があり、社会に開く活用が有効であることが推測されます。

 賃貸活用の例は全国的には少なかったのですが、東京都区内の独立二世帯で、片親+子が居なくなったケースでは5例中4例が貸していました。片方の世帯を賃貸住戸として設計する「ロンド・コンパクト」という提案をしていますが、賃貸可能なエリアでは効果的と言えます。その他、旭化成リフォームで提案しております「ReMake二世帯」のような孫との二世帯へのリフォーム事例や、自分で仕事用に使う家族間賃貸に近いとナワバリ拡大の事例などもご紹介しましたが、これらから二世帯住宅活用の可能性をご認識いただけたかと思います。実際の使われ方は想像を超えて多岐にわたっており、今後も事例を集めていきたいと考えております。

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