安心して生活を送るために-看護師からのアドバイス-

第1回

家族の誰かに透析治療が必要になったら

Q.1
「透析治療」とはなんですか?どのようなときに「透析治療」が必要となるのですか?

A.

 何らかの病気により、腎臓の働きが悪くなった場合を「腎不全」といいます。「腎不全」が更に進み、腎臓の働きが回復できなくなった場合を「慢性腎不全」といい、血液中の老廃物や水分などを身体の外へ出すことができなくなってしまいます。それにより、日常生活に支障をきたし、放っておくと生命の維持にも関わるという場合、透析治療が必要となってきます。
 透析治療は、本来腎臓が行なう役割を、ダイアライザー(人工腎臓)や腹膜を利用して行なうものです。ダイアライザー(人工腎臓)を利用して行なう場合、身体から血液を出し、ダイアライザー(人工腎臓)を通して血液を浄化し、また体内に戻すというのが透析の仕組みです。
 現在では、糖尿病から腎不全を起こすケースが非常に多くなってきています。



Q.2
医師から自分の親へ透析が必要と言われました。本人へどの様に説明したらよいですか?また、どの様に励ましてあげたらよいですか?

A.

 一生ダイアライザー(人工腎臓)に頼らねばならない不安はどの透析患者さんにも共通のものです。会社はどうしよう、経済的には…、といった悩みは患者さんひとりでは解決できない大きなものです。皆さん透析を受け入れるまでには、さまざまな葛藤を経験し乗り越え、治療を受けられています。
 少しでもその不安や悩みを和らげるため、家族で一緒に透析専門のスタッフから話を聞くことが大切だと思います。医師や看護師、ソーシャルワーカー(※)との信頼関係を築くことは、受け入れ後の透析治療中にも心強い支えとなります。
 家族、そして医療スタッフの支えは、患者さんにとってなにより大切なのです。

(※) ソーシャルワーカー・・・社会福祉の立場から、医療費、生活費、保険制度、患者さんやご家族の心理、社会的問題を解決するために専門的なアドバイスを行います。



Q.3
自分の親が透析治療を受けることになりました。 介護が必要なのですが透析治療は受けられますか?

A.

 腎不全での腎代替療法として、血液透析、腹膜透析、腎移植がありますが、現在、日本及び世界で一般的に行われている血液透析を例に挙げて、説明していきます。
 週3回、1回4時間というのが日本で行われている血液透析(※)の標準的な時間と思われます。透析治療のために週3回病院またはクリニックへ行くことを考えると、送り迎えなど家族の方の負担も大変だと思います。高齢者のための介護保険では、昼間介護をしてくれるデイサービスやショートステイといった制度もあります。また、最近は介護タクシーのサービスもあります。介護タクシーとは、厚生労働省が認可する実施要領の規定に基づいた「ホームヘルパー2級」を取得したドライバーが外出のお手伝いをするタクシーのことで、タクシーの乗降の介助から、付き添い、会社によっては入浴の介助を行うところもあります。
 透析治療は一生続くものです。役所の福祉課やソーシャルワーカーに相談し、積極的にいろいろなサービスを利用されることをお勧めします。

(※) 透析療法は大きく分けて二つあります。血液透析とは、血液を体外へ送り出し、ダイアライザー(人工腎臓)を使って血液中の老廃物や塩分・水分を取り除き、血液をきれいにする治療法です。また、腹膜透析といって、体内の腹腔(腹部の臓器をおおっている腹膜に囲まれた空間)に透析液を出し入れして、血液中の老廃物や、塩分・水分を取り除き、血液をきれいにする治療法もあります。



Q.4
日常生活はどの様に変わりますか?

A.

 透析は、週に3回、あるいは2回というように、一週間をひとつのサイクルとして考えます。そのサイクルを自分の生活にうまく組み込むように今までの生活を調整する必要があります。
 透析治療が順調に行なわれて、体調に問題がなければ、透析をしない日は健常者とほぼ変わらない生活が可能です。ただし、身体の中に老廃物や水分などがたまりすぎないよう、食事などの自己管理が必要になります。



Q.5
仕事は続けられますか?影響は出ませんか?

A.

 治療開始後、約一ヵ月の入院期間がありますが、透析治療を開始しても仕事を続けていらっしゃる方はたくさんいます。夕方4-5時頃からの夜間透析を行っている病院で治療を受けられる方も多いようです。また出張時には、出張先で透析を行なっている病院があれば、事前に予約を入れて治療を受けることも可能です。
 上司の理解を得るため、一緒に病院へいらして説明を受け、状況を把握してもらう方もいます。時間が不規則な仕事をされている方は、会社側とよく相談して勤務時間の調整をしていだだければと思います。
 仕事と透析治療の両立は大変だと思いますが、仕事の継続については、結論を急がず、主治医と身体の状態をよく相談してほしいと思います。



Q.6
学校へはそのまま通えるのでしょうか?体育などの授業はもうできないのでしょうか?

A.

 学校への通学は可能です。
 学生である患者さんの気持ちを理解し、医師、看護師との連携はもちろんのこと、教師との連携も図りながら、皆が一丸となって学校生活を順調に送ることができるよう配慮することが大切です。
 成長期、思春期とさまざまな悩みも出てくると思いますが、そのようなときには家族や医師以外にも、サイコセラピスト(※)やソーシャルワーカーという相談できる窓口があります。
 運動については透析治療の大幅な進歩により、現在では体調などに応じて、積極的に身体を動かすことを勧めています。運動の種類や強度、時間は、主治医と良く相談し、身体の調子をみながら無理のない範囲で行ないましょう。

具体的な注意事項としては、

1. 最初は軽い運動からはじめ、徐々に時間や量を増やしていくとよいでしょう。
2. 決して無理はせず、翌日まで疲労感が残らないことを運動量の目安としてください。
3. 透析後は、活発な運動は避けましょう。
4. 風邪などで体調の悪いときの運動は避けましょう。
5. 血圧がいつもより高いとき、低いときなども、運動はしない方がよいでしょう。
6. バレーボールなど、直接ボールを手首や腕に当てる球技は避けましょう。

   透析をはじめる際、たくさんの血液を流すために、手首(あるいは腕)に、動脈と静脈をつないで、シャントと呼ばれるものを作る手術をします。シャント手術自体は大掛かりなものではありませんが、シャントからの出血や閉塞などを避けるため、ここにボールが当たる球技などは避けてください。

(※) サイコセラピスト・・・こころの問題で悩む人たちから相談を受け、カウンセリングや専門的療法を用いて問題解決を図る専門家です。患者さんの精神面的な側面をサポートします。



Q.7
好きなものを食べられなくなってしまうの?

A.

 好きなものをまったく食べられなくなるということはありません。食べてはいけないものというのもありません。ただし、透析治療を行なう上で、食事療法は切っても切れない関係にあります。栄養障害(※)を起こしたり、腎臓に負担をかけないために、蛋白食品、塩分、水分などを中心に、食べる量を制限したり、そのバランスを考えることが必要となってきます。
食事はなるべく細かく記録し、それをもとに栄養士のアドバイスを受けましょう。定期的に血液検査を行ない、その結果と患者さんの体調に合わせた食事療法を行ないます。

(※) 栄養障害・・・栄養のバランスが崩れたり、特定の栄養が過剰になったり欠乏したりする状態をさします。



Q.8
透析にはどれくらいお金がかかるの?保険制度はどうなっているのですか?

A.

 透析治療をはじめる前に、検査やシャント手術を行ないますので、一概には言えませんが、透析治療自体の費用は、週3回の血液透析を一ヶ月行なうと約50万円かかります。そのうち自己負担は、国民健康保険をお持ちの方、社会保険の本人・ご家族ともに3割(約15万円)となります。ただし、同一の月内に特定疾病療養受領(※)の手続きをすると、上記の自己負担額が一ヶ月あたり1万円になります。ほとんどの患者さんが特定疾患療養受領手続きをされています。
その他、更生医療など医療費が助成される場合がありますので、現在かかりつけの医療機関やソーシャルワーカーなどにお尋ねください。

(※) 特定疾病療養費・・・人工透析、血友病など、長期療養者の自己負担限度額が月に1万円になる制度です。



Q.9
透析はどれくらいの頻度で行なわれますか。

A.

月・水・金、あるいは火・木・土など、週3回、1回4時間が標準的ですが、週に2度の方、1回3時間の方もいます。血液検査の結果や体重の増減などから個々の患者さんに合わせて決定されます。
 時間をかけて充分に老廃物や水分を取り除いた方が、身体への負担も少なくなります。

 

安心して生活を送るために-看護師からのアドバイス-

第1回

家族の誰かに透析治療が必要になったら

 
 
1
「透析治療」とはなんですか?
どのようなときに「透析治療」が必要となるのですか?
写真
 何らかの病気により、腎臓の働きが悪くなった場合を「腎不全」といいます。「腎不全」が更に進み、腎臓の働きが回復できなくなった場合を「慢性腎不全」といい、血液中の老廃物や水分などを身体の外へ出すことができなくなってしまいます。それにより、日常生活に支障をきたし、放っておくと生命の維持にも関わるという場合、透析治療が必要となってきます。
 透析治療は、本来腎臓が行なう役割を、ダイアライザー(人工腎臓)や腹膜を利用して行なうものです。ダイアライザー(人工腎臓)を利用して行なう場合、身体から血液を出し、ダイアライザー(人工腎臓)を通して血液を浄化し、また体内に戻すというのが透析の仕組みです。
 現在では、糖尿病から腎不全を起こすケースが非常に多くなってきています。
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2
医師から自分の親へ透析が必要と言われました。
本人へどの様に説明したらよいですか?
また、どの様に励ましてあげたらよいですか?
 
 一生ダイアライザー(人工腎臓)に頼らねばならない不安はどの透析患者さんにも共通のものです。会社はどうしよう、経済的には…、といった悩みは患者さんひとりでは解決できない大きなものです。皆さん透析を受け入れるまでには、さまざまな葛藤を経験し乗り越え、治療を受けられています。
 少しでもその不安や悩みを和らげるため、家族で一緒に透析専門のスタッフから話を聞くことが大切だと思います。医師や看護師、ソーシャルワーカー(※)との信頼関係を築くことは、受け入れ後の透析治療中にも心強い支えとなります。
 家族、そして医療スタッフの支えは、患者さんにとってなにより大切なのです。
(※) ソーシャルワーカー・・・社会福祉の立場から、医療費、生活費、保険制度、患者さんやご家族の心理、社会的問題を解決するために専門的なアドバイスを行います。
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3
自分の親が透析治療を受けることになりました。
介護が必要なのですが透析治療は受けられますか?
写真
 腎不全での腎代替療法として、血液透析、腹膜透析、腎移植がありますが、現在、日本及び世界で一般的に行われている血液透析を例に挙げて、説明していきます。
 週3回、1回4時間というのが日本で行われている血液透析(※)の標準的な時間と思われます。透析治療のために週3回病院またはクリニックへ行くことを考えると、送り迎えなど家族の方の負担も大変だと思います。高齢者のための介護保険では、昼間介護をしてくれるデイサービスやショートステイといった制度もあります。また、最近は介護タクシーのサービスもあります。介護タクシーとは、厚生労働省が認可する実施要領の規定に基づいた「ホームヘルパー2級」を取得したドライバーが外出のお手伝いをするタクシーのことで、タクシーの乗降の介助から、付き添い、会社によっては入浴の介助を行うところもあります。
 透析治療は一生続くものです。役所の福祉課やソーシャルワーカーに相談し、積極的にいろいろなサービスを利用されることをお勧めします。
(※) 透析療法は大きく分けて二つあります。血液透析とは、血液を体外へ送り出し、ダイアライザー(人工腎臓)を使って血液中の老廃物や塩分・水分を取り除き、血液をきれいにする治療法です。また、腹膜透析といって、体内の腹腔(腹部の臓器をおおっている腹膜に囲まれた空間)に透析液を出し入れして、血液中の老廃物や、塩分・水分を取り除き、血液をきれいにする治療法もあります。
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日常生活はどの様に変わりますか?
 
 透析は、週に3回、あるいは2回というように、一週間をひとつのサイクルとして考えます。そのサイクルを自分の生活にうまく組み込むように今までの生活を調整する必要があります。
 透析治療が順調に行なわれて、体調に問題がなければ、透析をしない日は健常者とほぼ変わらない生活が可能です。ただし、身体の中に老廃物や水分などがたまりすぎないよう、食事などの自己管理が必要になります。
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5
仕事は続けられますか? 影響は出ませんか?
 
 治療開始後、約一ヵ月の入院期間がありますが、透析治療を開始しても仕事を続けていらっしゃる方はたくさんいます。夕方4-5時頃からの夜間透析を行っている病院で治療を受けられる方も多いようです。また出張時には、出張先で透析を行なっている病院があれば、事前に予約を入れて治療を受けることも可能です。
 上司の理解を得るため、一緒に病院へいらして説明を受け、状況を把握してもらう方もいます。時間が不規則な仕事をされている方は、会社側とよく相談して勤務時間の調整をしていだだければと思います。
 仕事と透析治療の両立は大変だと思いますが、仕事の継続については、結論を急がず、主治医と身体の状態をよく相談してほしいと思います。
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学校へはそのまま通えるのでしょうか?
体育などの授業はもうできないのでしょうか?
写真
 学校への通学は可能です。
 学生である患者さんの気持ちを理解し、医師、看護師との連携はもちろんのこと、教師との連携も図りながら、皆が一丸となって学校生活を順調に送ることができるよう配慮することが大切です。
 成長期、思春期とさまざまな悩みも出てくると思いますが、そのようなときには家族や医師以外にも、サイコセラピスト(※)やソーシャルワーカーという相談できる窓口があります。
 運動については透析治療の大幅な進歩により、現在では体調などに応じて、積極的に身体を動かすことを勧めています。運動の種類や強度、時間は、主治医と良く相談し、身体の調子をみながら無理のない範囲で行ないましょう。

具体的な注意事項としては、

1. 最初は軽い運動からはじめ、徐々に時間や量を増やしていくとよいでしょう。
2. 決して無理はせず、翌日まで疲労感が残らないことを運動量の目安としてください。
3. 透析後は、活発な運動は避けましょう。
4. 風邪などで体調の悪いときの運動は避けましょう。
5. 血圧がいつもより高いとき、低いときなども、運動はしない方がよいでしょう。
6. バレーボールなど、直接ボールを手首や腕に当てる球技は避けましょう。
 
 透析をはじめる際、たくさんの血液を流すために、手首(あるいは腕)に、動脈と静脈をつないで、シャントと呼ばれるものを作る手術をします。シャント手術自体は大掛かりなものではありませんが、シャントからの出血や閉塞などを避けるため、ここにボールが当たる球技などは避けてください。
(※) サイコセラピスト・・・こころの問題で悩む人たちから相談を受け、カウンセリングや専門的療法を用いて問題解決を図る専門家です。患者さんの精神面的な側面をサポートします。
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好きなものを食べられなくなってしまうの?
 
 好きなものをまったく食べられなくなるということはありません。食べてはいけないものというのもありません。ただし、透析治療を行なう上で、食事療法は切っても切れない関係にあります。栄養障害(※)を起こしたり、腎臓に負担をかけないために、蛋白食品、塩分、水分などを中心に、食べる量を制限したり、そのバランスを考えることが必要となってきます。
食事はなるべく細かく記録し、それをもとに栄養士のアドバイスを受けましょう。定期的に血液検査を行ない、その結果と患者さんの体調に合わせた食事療法を行ないます。
(※) 栄養障害・・・栄養のバランスが崩れたり、特定の栄養が過剰になったり欠乏したりする状態をさします。
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透析にはどれくらいお金がかかるの?
保険制度はどうなっているのですか?
 
 透析治療をはじめる前に、検査やシャント手術を行ないますので、一概には言えませんが、透析治療自体の費用は、週3回の血液透析を一ヶ月行なうと約50万円かかります。そのうち自己負担は、国民健康保険をお持ちの方、社会保険の本人・ご家族ともに3割(約15万円)となります。ただし、同一の月内に特定疾病療養受領(※)の手続きをすると、上記の自己負担額が一ヶ月あたり1万円になります。ほとんどの患者さんが特定疾患療養受領手続きをされています。
その他、更生医療など医療費が助成される場合がありますので、現在かかりつけの医療機関やソーシャルワーカーなどにお尋ねください。
(※) 特定疾病療養費・・・人工透析、血友病など、長期療養者の自己負担限度額が月に1万円になる制度です。
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透析はどれくらいの頻度で行なわれますか。
 
 月・水・金、あるいは火・木・土など、週3回、1回4時間が標準的ですが、週に2度の方、1回3時間の方もいます。血液検査の結果や体重の増減などから個々の患者さんに合わせて決定されます。
 時間をかけて充分に老廃物や水分を取り除いた方が、身体への負担も少なくなります。
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