
快適な温熱環境とは?-快適な空間づくりのために、建てる前から知ってほしいこと

「しあわせな空間」を実現するための「温熱性能体系」
Asu-hausでは、地球や、社会、地域、家族、そして自分自身とつながった暮らし、そして、それらが今だけでなく未来につながった暮らしを「しあわせな暮らし」と呼ぶことにしました。私たちはそんな暮らしを実現するための空間を「しあわせな空間」とし、その「しあわせな空間」の因子の一つが「快適な温熱環境」であると考えています。

これから学ぶ学習コンテンツでは、「快適な温熱環境」の重要な建物側の4要素である「温度」「湿度」「表面温度」「気流速」とそれらを適正な数値とするために必要な「断熱」「気密」「換気」「日射(遮蔽・取得)」「温度湿度調整」という5つの性能・機能について学びます。そして最後にその機能・性能を成り立たせる6つの部材についても解説していきます。

また、本記事では、快適な温熱環境を実現するために必要な要素や性能・部材についての解説動画もご用意しています。記事全体の内容に加え、「なぜ温熱性能が必要について、学んでおくとよいのか」を、家づくりで後悔したことなどのアンケート結果も踏まえてご紹介しています。記事と併せて、ぜひ動画もご覧ください。
1.目指すべき温熱環境は?
まず、はじめに「快適な温熱環境」であるための4つの要素について解説していきます。断熱・気密性能をはじめとする温熱性能を高めていくと、快適な暮らしになりますが、そもそも、どんな温熱環境(温度、湿度など)が快適といえるのでしょうか。
1)家の中で「暑い」「寒い」と感じるのは、何が影響する?
温熱環境の要素は、空気の温度、湿度、気流(風)、室内表面温度の4つの環境側の要素と、活動状態(代謝量)と服装(着衣量)の2つの人体側の要素ですが、特に大事なのは環境側の4つの要素です。環境的要素の温度、湿度、気流については、すぐ理解できると思いますが、室内表面温度は耳慣れない言葉かもしれません。室温が快適域でも、壁や床、天井の表面温度が低い(冷たい)と体の表面から放射で熱を奪われ、人は寒さを感じます。夏はその反対で、冷房で室温を下げても、床・壁・天井の温度が高ければ、暑さを感じます。
ここでは、「温度」「湿度」「表面温度」「気流速」を取り上げます。

2)理想の室内の温熱環境とは?
温度は、冬20〜23℃、夏26〜28℃で、湿度は40~60%です。室内の表面温度は、室温と同じが±2℃以内が理想です。気流速は、冬は0m/s、夏は0.5m/s 以下としています。これらが快適な温熱環境の目安の数値となります。
理想の室内の温熱環境


2.「温度」「湿度」「表面温度」「気流速」の適正な数値とその理由は?
1)空気の温度
空気の温度とは気温のことで、温度計で示される値のことです。
夏の温度は26〜28℃が理想的で、部屋でくつろぐにはちょうどよい温度といえるでしょう。私たちがよく耳にするのはクールビズで推奨されている28℃ですが、26℃〜と幅をもたせているのは、活動状態や服装によって暑さの感じ方が異なるからです。冬は20℃〜23℃が理想的です。その参考となるのが、英国保健省が推奨する推奨室温で、21℃とするのがよいとされています。



イギリス保健省の基準 冬の推奨温度は21℃。
(資料:英国保健省年次報告書、2010.3)
2)湿度※
湿度とは空気中の水分量のことです。「じめじめしていて暑い」とか「からっとしていて気持ちがいい」という表現があるように温度が同じでも、湿度が違うと感じる暑さが異なります。夏の湿度は、省エネと快適の観点と熱中症リスクから70%まで許容されていますが、40~60%が理想的です。人は同じ温度でも、湿度が低いと寒く、湿度が高いと暑く感じます。湿度が高い場合は、汗とともに熱が放出されにくくなります。室内温度が27℃の場合、湿度が75%を超えると、熱中症への警戒が必要になります。(下図WBGT簡易推定図Ver.4(室内用)参照)カビも繁殖しやすい環境といえます。
冬の湿度は40〜60%が理想的です。湿度を上げて、暖かく過ごしましょう。日本の太平洋側は、カラッとした晴天が多く、外気の湿度が15%を下回ることもあるので注意です。加えて、湿度が低いと、インフルエンザなどのウイルスへの感染が懸念されます。これは、過乾燥の状態では、粘膜が乾き、ウイルスが体内に侵入しやすくなるからです。
※「相対湿度」とは、ある温度の空気中に含むことができる最大限の水分量に対して、実際に含まれている水蒸気の割合を%で表します。 それに対し、「絶対湿度」は空気中に含まれる「水蒸気の自体の量」をg/㎥で表しますが、ここでは「相対湿度」で解説します。

相対湿度70%超では熱中症に厳重注意!
WBGT簡易推定図Ver.4(室内用)WBGT:暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的とした指標。(環境省ホームページ)


3)表面温度
ここでいう表面温度は壁や窓などの物体の表面全体にわたる平均的な温度を示しています。
熱は、床から伝導で、床、壁、天井からは放射(赤外線)によって伝わります。夏の表面温度は室温+2℃以下が理想的です。室温が26〜28℃で、表面温度もほぼ同じであれば快適に過ごせます。壁や天井温度の値が室温よりも高いと、周囲から受ける熱放射による暑さを感じます。
冬の表面温度は室温―2℃以上が理想的です。冬は壁面などの表面温度が低くなりがち。とりわけ、窓は表面温度が下がりやすく、放射によって、熱が高いほう(人体)から低いほうに移動する(熱が奪われる)ので、室温が20〜23℃と理想的であっても、寒く感じます。

4)気流速
空気の動きのことで気流が強くなるほど寒く感じます
夏の気流速は0.5m/s以下が理想的。適度に気流があれば、体の熱が奪われるので、暑さがある程度解消されます。無風状態なら、エアコンや扇風機を使って空気の流れを起こしましょう。ただし、1m/sを超える気流に当たり続けていると、体感温度が下がりすぎて不快に感じることもあります。
冬の気流速は0m/sが理想的です。その理由は、冬に風があると体感温度が下がるからです。風が無い状態でかつ窓の断熱性能が低いと、コールドドラフトが発生し、足元に冷たい気流が流れます。その冷風も不快に感じるでしょう。

快適と感じるために必要な環境の条件については下の動画でも解説しています。温度・湿度・表面温度・気流速の快適域のめやすなど、快適な温熱環境の実現に必要な条件や記事の内容をより深く理解できます。
まとめ
「快適な温熱環境」の重要な建物側の要素には「温度」「湿度」「表面温度」「気流速」が4つがあります。一つの要素だけ満たされていても、快適な生活は実現できません。4つの要素をすべて考慮し適正な数値に近づけることで、 快適な環境になるのです。
そして、これらを実現するためには「断熱」「気密」「換気」「日射(遮蔽・取得)」「温度湿度調整」という5つの性能・機能が必要です。
5つの性能については、以下の関連記事より詳細をご覧ください。
快適がずっと続く、しあわせなくらしを叶えるために必要な性能について、学んでいきませんか?
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快適な室内環境をつくるポイントは、温度・湿度・表面温度・気流速を最適域にととのえることだとわかりました。では、家づくりにおいてその条件を満たすためには、どのような性能が必要でしょうか?必要な5性能をまとめました。興味がある方は下の関連記事をご覧ください。
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