
「温度・湿度調整」の重要性と空調設備の種類・方法

今回は、心地よさを左右する室内の「温度・湿度調整」です。「冷暖房」の機器選びだけではない、温度・湿度調整の基本を学びます。

本記事の動画バージョンもご用意しています。以下の2本の動画では、温度湿度調整の基本から、設備による温度湿度調整の種類、ポイントなど分かりやすく紹介しています。視覚的により深く理解したい方はぜひご覧ください。
1.設備での温度・湿度調整の必要性
まず、エアコンなどの設備以外で住まいの中で快適に過ごす方法としては、これまでにお話ししてきた断熱、気密、日射遮蔽・取得などの建物性能の向上、次に室内外の「設え(しつらえ)」および人の「行動」が上げられます。
「設え」は、敷物やカーテンを替えたり、外部にスダレを掛けたり。これらは、住み手が手軽にできる方法です。「行動」とは、気候に合わせて衣類を替えたり、食べ物で体をあたためたり冷やしたり、うちわを扇いで気流をおこすことです。
しかし、現在の日本の厳しい夏の暑さや湿気、冬の寒さや乾燥下では、建物性能を上げ、「設え」と「行動」で工夫をしても快適に暮らすことが難しいため、設備での温度・湿度調整(暖房・冷房・除湿・加湿)が必要となります。さらに、温度・湿度調整をうまく機能させるためには、建物と一緒に考えることが不可欠です。すなわち、「断熱」「気密」「換気」「日射取得・遮蔽」などと合わせて、設計段階から冷暖房を計画することが、快適な温熱環境の実現につながり、それが省エネにもつながります。

2.冷暖房による温度・湿度調整の種類・方法は?
冷暖房設備機器を選ぶ際に考えたいのが、居室ごとに冷暖房する(個別式冷暖房)か、または住戸全体を冷暖房する(全館式冷暖房)かという点です。 それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。

1)「個別式」冷暖房
機器を居室ごとに設置し、必要な時に稼動させる方法です。メリットとしては、必要な場所に大きな工事を要せず容易に設置できること。デメリットは、廊下や浴室など冷暖房を入れていない場所との温度差が生じることで、不快感に与えるだけでなく、ヒートショックなどの健康被害につながる可能性もあります。また、エアコン等を複数台を使用する場合やそのオンオフを頻繁にする場合には、光熱費がかかる場合があります。建物の断熱性能が低い場合は、さらに光熱費が高くなってしまいます。
2)「全館式」冷暖房
廊下や脱衣室などを含めた住戸全体を冷暖房する方法です。一般的な方法として、1ヵ所に設置した機器からダクト配管などで冷暖房された空気を送り、住戸全体を冷暖房する方法があります。
大きなメリットは居室とそれ以外の空間との温度差がほとんどなくなるので、住まいのどこにいても快適な環境が得られることです。また、断熱・気密性能の良い家だと、全室の快適性と光熱費抑制を両立することも可能です。ただし、効率よく使用するには、間取りや断熱性能などを建物全体で計画しなければなりませんし、個別式に比べ初期費用がかかる傾向にあります。
3.冷暖房設備はどんなものがある?
熱は「対流」「伝導」「放射」によって伝わりますが、冷暖房の種類も この3種類の熱の伝わり方を利用した方式で分けられます。下のイラストのように、放射式、伝導式、対流式があります。

1)「放射式」
設置した機器からの放射によって空間や人をあたためたり冷やしたりするものです。
パネルヒーターや放射冷暖房、床暖房もこれに当たります。メリットは、風を生じずに室内をあたためたり冷やしたりするので、おだやかな快適さを得られることです。全館式で用いることがより効果的ですが、その場合は初期費用が他の設備よりかかってしまいます。
2)「伝導式」
「伝導式」は、熱源に直接触ることで、あたたかさを感じる方式です。
ホットカーペットや床暖房があります。直接あたたかさを得られることはメリットですが、断熱性能の低い住宅の家全体をあたためることには適さない方式です。
3)「対流式」
「対流式」は、温風や冷風による対流によって部屋の温度を上下させる方式です。
エアコンやファンヒーターなどがあります。稼動後すぐ冷暖房が効くことがメリットです。風を不快に感じたり、天井付近と床付近で温度差を生じやすいというデメリットもありますが、高断熱高気密住宅で全館式を用いる場合は、それらのデメリットを減らすことが可能です。
まとめ
冷暖房方法を検討の際は、家族構成や在宅時間などのライフスタイルを考慮の上、どんな室内環境にしたいか明確にしておくことが大切です。どんな方式を選択するにせよ、建物の断熱性能を上げることは、快適性の向上と省エネ&光熱費の削減につながります。
いずれにしても、冷暖房方法は設計担当者などに相談の上、建物や予算などの条件によって選びましょう。
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