
ペットにとって冬の快適な住環境とは?犬・猫ともに理想的な温度・湿度を解説

室内でペットと暮らすスタイルが一般的な今、現在の住まいの環境がペットにとって快適なのかを気にしたり、ペットのことを思って夏も冬もエアコンをつけっぱなしにしたりしている方も多いのではないでしょうか。国の統計によると、国内で飼育されている犬や猫などペットは約1589万頭であり、15歳未満の人口・約1450万3000人を上回る結果となりました(2022年時点)。それほどペットは私たちに身近な存在であり、今や家族の一員と言えます。
本記事では、獣医師の茂木千恵先生に、年間で最も寒いこの季節に注意するべきことを中心に、ペットが快適に過ごせる室内環境についてうかがいました。
1.ペットにとって快適な温度・湿度とは?
1)部屋の適切な温度は犬・猫ともに20~25℃
まずは、室内環境の快適度を測る上で最も重要なバロメーターのひとつ、室温についてうかがいました。
「冬は犬・猫にほぼ共通で20~25℃が適温といわれています。哺乳類や鳥類などの恒温動物は、体温を一定に保つために、体内で常に熱を生産しなければなりません。この仕組みに関連して、特別なエネルギーを必要とせず、基礎代謝だけで体温を維持できる“サーモニュートラルゾーン”という温度帯があり、犬・猫は気温20~25℃が、このゾーンに当たります」
犬・猫の種別によっても室温は異なるのでしょうか?
「寒冷地に行くほど、動物の身体のサイズが大きくなるとされる『ベルクマンの法則』という理論では、体重に対する表面積の割合が小さい動物ほど寒さに強いと言われています。これに則ると、秋田犬、シベリアンハスキー、ニューファンドランドなどが寒さに強い代表的な犬種ですね。逆に、小型の短毛犬のチワワやダックスフントは体重に対する表面積の割合が大きく、熱が奪われやすく寒さに弱い。また体格にかかわらず生まれたばかりの子犬や子猫、シニアの犬・猫などは体温の調節機能が弱いので寒さに弱い。前述の室温を維持していても、暖かいベッドやソファの上で過ごせるような家具の配置などをすると良いでしょう」
室内の適切な温度帯は20~25℃を軸にしつつも、ペットの種別や年齢などによって、室温を微妙に変える必要もありそうです。その点で言えば、快適な温熱環境を作りやすい断熱・気密性能の高い家は、ペットと暮らす方にとって理想的ではないでしょうか。
2)部屋の適切な湿度は犬・猫ともに40~60%
次に湿度について聞きました。
「理想的な湿度も犬・猫にほぼ共通で40~60%です。適切な湿度が維持された環境なら、乾燥に伴う皮膚トラブルや湿疹、かゆみ、肌のひび割れなどが起きにくくなる効果があります。また、身体が静電気を帯びにくくなり、犬・猫にとっても非常に不快な放電のショックが減ることにも期待できます」
冬の室内では、一般的に加湿器などを使って乾燥を防ぎますが、これはペットに対しても有効と考えて良いでしょうか?
「もちろん有効です。加湿器やエアコンの調湿機能を活用する、あるいは濡らしたタオルを室内に掛けておくのもおすすめです」
ペットの留守番時に「乾燥」「高湿」「低湿」などの室内環境を飼い主のスマホに知らせてくれる加湿器も登場している
近年では、ペット専用運転モードや消臭機能で排せつ臭や体臭を除去できるなど進化した加湿器も登場しています。ただ、家全体で適切な湿度を保つという点では、湿度を安定させる効果が高い、住まいの断熱・気密性能に着目するのもひとつの方法です。
2.温度・湿度以外にもまだ注意点が!
1)飼い主とペットの行動範囲の“高低差”に注意
ペットにとって理想的な室内環境づくりで、温度・湿度以外に注意すべき点はありますか?
「飼い主とペットの呼吸する空間の高低差に着目してください。私たちは一般的に、彼らよりも比較的高い場所で暮らしており、ペットは床に近い場所が主な行動エリアになります。冬に室内を暖めると暖気は上に向かうため、人間が快適と感じている温度、湿度が、ペットが体感しているものとは異なっている可能性もあります。理想的には『温湿度計』を使い、ペットがよく行動している床上数十センチで測定し、その数値を参考にして温度・湿度を調整することをおすすめします」
床面からの冷え込みというのは意外に強いものです、と茂木先生。特に小型犬でお腹の毛が少ない子たちは体が冷えて下痢になりやすいとのことで、注意が必要です。
「また、ガスファンヒーターなどで室内を暖めているご家庭の場合、温風が出る方向の“ペットの回遊性確保”に注意を。例えばわが家の犬は、寒い冬場の散歩から帰って来ると、ガスファンヒーターの温風の出口前にしばらく座ります。彼も私たち同様、すぐに暖まりたいと思っているわけですが、しばらく時間が経って満足すると、ヒーターの前からいなくなっています。一定の方向に温風が出る暖房機器の場合、ペットが温風に当たり続けることで低温やけどのリスクが高まります。温風の出先をサークルなどで囲み、そこからペットが動きづらくなるような場所づくりはやめるべきです。うちの場合のように、ペットが自発的に移動してきて、自発的にほかの場所に動いていける環境をつくることが大切です」
ファンヒーターの温風が当たり過ぎると低温やけどのリスクも。暖房器具の前にはあまりモノや家具を置かず動きやすい環境に。立ち入りを制限するようなガードを置くのも良い
2)冬~春、季節の変わり目にも気配りを
今はまだ寒い日が続きますが、3~4月の季節の変わり目はすぐそこ。寒暖差の激しい時期に気を付けるべきポイントを聞きました。
「冬から春にかけての季節の変わり目の時期は“三寒四温”とも呼ばれ、日ごとに気温がめまぐるしく変わることがありますが、1日のなかでも昼間はぽかぽかなのに、夜になると北風が吹いて体感温度が急激に下がることがありますよね。私たちや犬・猫などの恒温動物は、そういう環境に置かれると体温を維持するため体温調節のエネルギーを多く使わざるを得ず、自律神経が疲弊する場合もあります」
自律神経が不調になったペットによく見られる症状は、胃腸の不調であると茂木先生。例えば食欲不振、嘔吐、下痢などだそう。
「そうした事態を招かないためには、ペットに朝晩の寒暖差をできるだけ経験させないことがポイントです。そのため、彼らが寒さを感じたとき、すぐに暖を取れるようなベッドや毛布、ハウスなどを室内に常備しておきましょう。ある調査によると、犬・猫はサーモニュートラルゾーンより低い・高い温度にさらされる場所に置かれると、その環境に順応するまでに10~20日を要し、最長では60日ほどかかるケースもあったそうです」
寒暖差で体調を崩すのは人間もペットも同じ。特に早春の時期には、フレキシブルに暖まれるような準備をしておくことが重要です。また、1日を通して家の中の温度が極端に変化しにくい、高断熱・高気密な住まいも検討の価値はありそうです。
3.快適な室内環境がもたらすメリット
1)ペットと飼い主、双方のQOLが上昇
快適な室温、湿度が保たれた室内環境で暮らすことで、ペットの心身にどのようなメリットがもたらされるかをお聞きしました。
「適切な温度・湿度を維持することで期待できる効果として、皮膚トラブル抑止、静電気の放電ショックの軽減、胃腸の状態を健全に保つことができる、などを先述しましたが、私の専門である獣医動物行動学の点で考えますと、やはりストレスの軽減が大きいと思います。ストレスが溜まると、他のペットや人間に対し、うなる、吠える、歯をむき出す、咬みつく、といった問題行動があらわれる場合もあります。ペットが長い時間を過ごす室内の温度・湿度が適切に保たれていることで、間接的にそうした問題行動を起こしにくくすることが可能です」
このメリットは、ひいては飼い主にも多大な好影響を与えるとのこと。
「愛犬、愛猫がストレスなく健やかに毎日を過ごし、問題行動を起こさない状況は、ペット自身はもちろん、飼い主のQOLも高く維持することにつながります。温度、湿度は目に見えないものですが、心身ともに健康なペットライフにおいて極めて重要な要素なのです」
ペットが幸せなら飼い主も幸せ。これを実現するのに欠かせないのが適切な温度、湿度が維持された室内環境
ペットと飼い主の理想的な関係を支える大きな要因となるのが、室内の適切な温度と湿度。ペットとともに暮らしたいと考える方は、それをどのように実現し、維持していくかをもっと考える必要がありそうです。高断熱・高気密な家に暮らすことは、その有効な手段になるのではないでしょうか。
「冬の風物詩である、シベリアから日本に飛来する渡り鳥のハクチョウを連想してみてください。彼らが何千キロも命がけで大移動する理由のひとつは、冬になるとシベリアが“寒過ぎる”場所になるためなんですね。そこでシベリアに比べれば温暖な日本にわたって冬を越し、春にシベリアに戻っていくわけです。哺乳類と同じ恒温動物である鳥類にとっても、周囲の環境の温度が非常に大きな影響をもたらすことを示しています」
まとめ
ここまでペットにとって理想的な、冬の住まいの快適な温度・湿度を学んできました。その環境を実現する選択肢のひとつとして考えられるのが、断熱・気密性能の高い住まい、Asu-hausです。
例えば、各部屋の温度差が全居室で±1℃以内、壁・床・天井の表面温度が室温±2℃以内で保たれるため、茂木先生が次に示す、猫の深刻な病気を予防する効果も期待できます。
「冬になると腎臓病になる猫が、非常に増える傾向があります。猫の腎臓病は一度罹ってしまうと完治が難しいため、悩んでいる愛猫家は多いのです。ではなぜ冬に猫の腎臓病が増えるのでしょうか? 大きな要因のひとつが、猫のトイレがリビング以外の寒い場所に置かれており、寒さを嫌って猫がトイレに行きたがらなくなるためなのです」
その点、各部屋の温度差が小さいAsu-hausであれば、どこにトイレがあっても猫は快適に用を足すことができそうです。
さらに、Asu-hausがめざす理想「冬の室内温度が20~23℃」「湿度は40~60%」なども、本記事で茂木先生が話したペットにとっての理想の室内環境をかなえる優位性と言えるでしょう。
Asu-hausの甲州モデル体験棟では、各部屋の快適な温度・湿度などを実際に体験することができます。飼い主とペットの呼吸する空間の高低差も意識しながら、ご自身の五感で感じてみませんか?
下記から甲州街道モデル体験棟の詳細をご覧いただけます。
関連記事
冬の時期、飼い主とペットが暮らす住まいとして理想的なAsu-hausでは、冬だけでなく暑いの夏の間も、冬同様、快適に暮らすことができます。酷暑に見舞われていた2024年8月、Asu-haus甲州モデル体験棟で実測した温度・湿度データの結果をまとめた以下の記事で、その優れた性能を確かめてみてください。