【専門家解説あり】カビの原因、結露は夏でも発生する?結露・カビを防ぐ住まいの条件とは

家の中にカビが発生しやすくなる高温多湿の季節。カビの発生に深くかかわるのが「結露」です。「結露といえば冬。夏はあまり関係ないのでは?」と思う方は多いかもしれませんが、近年は「夏型結露」といった問題も増えており、結露、カビのお悩みは季節を問わないものになっています。

本記事では、カビのリスクと対処法を、カビ研究の第一人者である千葉大学真菌医学研究センターの矢口貴志准教授に取材。さらにカビの原因にもなる結露発生を抑えるための家づくりについて解説します。

1.カビが発生しやすい環境と健康リスク

まずはカビが発生しやすい環境や、健康リスクについて解説していきます。

1)「温度20~30℃/湿度60%以上/有機物」がカビ発生の3条件

矢口先生によると、カビの発生には以下の3つの条件が必要とのことです。

  • 温度:20~30℃
  • 湿度:60%以上
  • カビの栄養源となる有機物

家の中で発生しやすい場所は、大きく2つに分かれるとのこと。

「ひとつは浴室、キッチンなどの水回りです。水分が多く、湿度が高くなる上、カビの栄養源となる石鹸カスや湯垢、皮脂、食べかすなどが集まりがちなためです。もうひとつはホコリが溜まりやすい場所です。例えばあまり使っていないクローゼットや家具の裏など、空気が澱みやすい場所が要注意ですね。また、エアコン内部もカビが好む場所。しばらく使っていないとホコリが増えますし、冷房時の除湿による結露によって、内部に水分が溜まりやすくなります」


※画像はイメージです。

2)家の中で発生しがちなカビの種類

「家庭でよく見るカビとしては、まず、黒カビ(クラドスポリウム)と、青カビ(ペニシリウム)が挙げられます。この2種類は、エアコンのフィルター、クローゼット、家具の裏などのホコリの中によく見られます。また、いずれも冷温の中でもゆっくりとですが成長することが可能です。例えば、冷蔵庫の野菜室内の野菜に付着していた土の中に生息していたカビが繁殖するケースです。冷蔵庫のパッキンなどが黒くなるのはクラドスポリウムが主な原因ですし、果物や野菜にペニシリウムが生えることもあります」

そのほかホコリの中からは、黒色と青緑色のコウジカビ(アスペルギルス)がよく検出されるとのことです。このアスペルギルスは、免疫力の落ちた患者の肺に感染する可能性もあるほど比較的病原性が強いため、注意が必要です。

「さらに、カビが発生しやすいキッチン、浴室などの水回りでは、黒色の湿性のカビ(オーレオバシディウム、エクソフィアラなど)や、ピンク色の湿性のカビ(ロドトルラ)などが見られます。エクソフィアラは皮膚の傷口から感染する可能性もあります」

加えて矢口先生は、家の中に発生するカビがもたらす健康リスク全般について、次のように警鐘を鳴らします。

「代表的なものとしては、鼻水、皮膚炎などのアレルギー症状のほか、免疫力の落ちた患者には細胞内部に菌が侵入して、呼吸器系の疾患を引き起こすこともあります。特に高齢者や乳幼児、体調を崩して免疫力が低くなっている方などは注意が必要です」

3)カビの発生を防ぐ方法を解説

場合によっては深刻な健康被害をもたらすこともあるカビ。発生を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。

「前述したカビの3つの発生条件を、できるだけ減らすことが大切です。湿度を下げるために定期的に換気を行う、浴室の使用後に壁、床、天井の水気をざっと拭き取ってから浴室乾燥機を稼働させる、除湿機やエアコンの除湿・送風機能を使う、サーキュレーターで空気を循環させる、などが有効です。また、栄養源となる浴室の石鹸カス、室内のホコリ、髪の毛、キッチン、ダイニング周囲の油脂汚れなどをこまめに掃除する、定期的にエアコンのフィルターを洗うことも効果的です」

2.結露が住宅にもたらす深刻な影響とは?

ここからはカビを発生させる主な原因のひとつ「結露」にフォーカスしていきます。結露の「水分」は、湿度を高めてカビの発生を促すだけでなく、住宅そのものにも悪影響をもたらします。

1)結露は「表面結露」「内部結露」の2種類

結露は発生する場所によって、「表面結露」「内部結露」の2つに分けることができます。

1)窓など見える場所で発生する「表面結露」

ひとつは「表面結露」です。文字どおり、壁や天井の表面で発生する結露で、主に、水蒸気を含んだ暖かい空気が温度の低い建材に触れることで発生します。代表的な例は、冬季に、曇ったり、水滴がついたりする窓ですが、加えて、断熱の不十分な家では壁の表面でも発生します。特に温度が下がりがちな家のコーナー部や家具の裏側、人が使っていない空き部屋などでは要注意です。

「窓に結露が発生すると、水分とホコリを栄養源に窓枠やパッキンの内部、カーテンなどにカビが繁殖しやすくなります。最近は、24時間換気システムや二重窓、断熱サッシなどで結露を防止する住宅も増えていますが、冬は加湿器の使用で結露が発生する場合もあるので注意が必要です」(矢口准教授)


熱を通しにくい断熱サッシ。

2)見えない場所で発生する「内部結露」

もうひとつは「内部結露」です。これは暖かい空気が壁や天井、床下など家の内部に侵入することが原因で発生し、「壁体内結露」とも呼ばれます。放っておくと柱や土台を腐らせる要因となり、建物に必要な強度が失われる恐れもあります。

また、水蒸気圧の関係から、水蒸気を含んだ暖かい空気は、冬は屋内から屋外に、夏は屋外から屋内へと移動するため、冬だけでなく、夏にも「夏型結露」と呼ばれる内部結露が発生することが指摘されています。今後、夏型結露は、地球温暖化に伴って増加することが懸念されます。これからは年間を通じて結露の発生を防ぐ対策を講じる必要があるでしょう。

3.結露を防ぐ住宅性能とは

結露の発生を抜本的に防ぐには、家の基礎となる住宅性能から考えることが必要です。

1)「家の中に温度差をつくらない」のが結露防止のカギ

前述のとおり、表面結露は、暖かい空気が表面温度の低い建材に触れることで引き起こされるケースが大半です。したがって結露を発生させづらい家をつくるためには、二重窓、断熱サッシなどを使って家の中に冷えている場所をつくらず、壁や天井の表面温度を下げないことがポイントになります。また、断熱性を高めることと同時に、温度差が生じる隙間を防ぐために気密性能を高めることも重要です。さらに、室内の湿度が高くならないように、湿度をコントロールすることも大切。内装材に珪藻土や漆喰、紙クロスなど、調湿性の高い建材を使うのもひとつの方法です。

また、内部結露を防ぐためには、壁や天井の内部、床下などに温度の低い部分をつくらないことと、低温部分に水蒸気を入れないことが必要になります。水蒸気の分子は、水滴の約250万分の1という微細な物質であり、多くの建材を通り抜けてしまいます。そのため、水蒸気を通しやすい繊維系の断熱材では、高品質の防湿材の施工が必要です。

まとめ

本記事では、高温多湿の夏が近づくにつれて気になる家の中のカビ、そしてカビの主因となる結露について解説しました。結露といえば窓が曇ったり、水滴が付いたりするシーンが多い冬を連想する方は多いはずですが、夏でも、壁や天井の内部などに夏型結露が発生する恐れもあるため、結露、カビの対策は季節を問わず立てていかなければなりません。家の湿度のコントロール、水蒸気を通しづらい断熱材、家の中に暖かい場所・冷えた場所を混在させず、一定の温度を保つことなどが、有効な結露・カビ対策であることが分かりました。

このことから、全部屋の24時間の温度差は±1℃以内/全部屋の温度が夏は26-28℃、冬は20-23℃を維持/全部屋の湿度が夏は60%以下・冬は40-60%、という環境を維持しやすいAsu-hausは、結露・カビの発生を防止する意味で、ひとつの理想的な解と言えます。また、Asu-hausは家の隙間が非常に少ない高気密住宅であるため、カビ菌が侵入する経路が極めて限られる点も特筆できます。

下記から甲州街道モデル体験棟の詳細をご覧いただけます。


矢口 貴志
(やぐち たかし)
プロフィール

千葉大学真菌医学研究センター准教授。早稲田大学理工学研究科博士前期課程修了。明治製菓株式会社を経て2023年より現職。生活環境におけるカビの影響、特に病原性カビ(アスペルギルス症原因菌など)にフォーカスし、その性質や健康被害のメカニズム解明に取り組む。

矢口 貴志(やぐち たかし) プロフィール

千葉大学真菌医学研究センター准教授。早稲田大学理工学研究科博士前期課程修了。明治製菓株式会社を経て2023年より現職。生活環境におけるカビの影響、特に病原性カビ(アスペルギルス症原因菌など)にフォーカスし、その性質や健康被害のメカニズム解明に取り組む。

居室間の室温が一定に保たれることで湿度の変化が少なく、結露やカビの抑制にも効果があるAsu-haus。以下の記事では、酷暑に見舞われた2024年8月でも、室内平均温度は全室25~26℃/各部屋の温度差は±1℃/1日を通じて湿度50%台維持/室温と表面温度の差は±2℃以内/外壁表面約60℃でも室内表面は24℃台といった温熱環境を維持したという実証実験の結果が紹介されています。ぜひご一読ください。

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