
【専門家解説あり】ペットが夏に快適な温度・湿度は?犬・猫の理想の住環境を解説

ペットの愛犬や愛猫を熱中症、夏バテから守るためには、部屋の温度を25~27℃、湿度を40~60%に――酷暑続きの近年、室内をこの温度帯・湿度帯に保つことは、室内で過ごすペットと安全に夏を乗り切るための重要なポイントです。
本記事は、「ペットにとって冬の快適な住環境とは?犬・猫ともに理想的な温度・湿度を解説」の夏季編です。冬季編と同じく、獣医師の茂木千恵先生にペットが快適に過ごせる室内環境について伺いました。
1.ペットにとって快適な温度・湿度とは?
まずは、室内環境の快適度を測る上で最も重要なバロメーターとなる、住まいの温度、湿度について伺います。
1)部屋の適切な温度は犬・猫ともに25~27℃
「夏の適切な室温は、犬・猫ともに25℃~27℃です。夏場、体温が41℃を超えると熱中症になるリスクが高まるのは、すべての哺乳類に共通していることです。そこを超えないようにするためには、室温を低めに設定しておかなくてはなりません。ただし、エアコンの室温設定を25~27℃にしておけばそれで安心ということではありません。特に酷暑の時期はエアコンの温度設定と実際の室温が異なってしまう場合があるため、厳密には『温湿度計』で測定し、調整することをおすすめします」
ペットに快適な室温は25〜27℃
ペットの健康を気づかい、エアコンを常にオンにしてペットに留守番をさせる飼い主は増えていますが、ただし、その場合には注意点も。
「エアコンの冷風や扇風機の風が直接当たる場所にペットサークルを置き、そこからペットが動きづらくなるような場所づくりはしないようにしてください。体調不良の原因になる場合があります。エアコンの冷風や扇風機の風が出る方向は、ペットが回遊しやすい環境にして置くことが大切です。また、若い犬~老犬と、幅広い年齢の犬を多頭飼いしている人も要注意です。若く元気な犬は暑さに比較的強いのですが、老犬は冷気の溜まる床に寝ていることが多く、冷え過ぎに注意が必要です。若い犬に合わせて温度を設定すると、老犬にとって寒過ぎる環境になってしまいかねません。こうしたケースでは、若い犬に合わせて室温を前述した25~27℃に設定し、寒がりの老犬には服を着せるなどで対応すると良いと思います」
2)部屋の適切な湿度は犬・猫ともに40~60%
次に湿度はどうでしょうか。
「犬猫全般にほぼ共通で40~60%です。湿度が上がると、犬や猫は汗をかけない分、口だけで体温の調節をしようとします。口を開けて、よだれ、唾液が染み込んでいる舌に空気を当てることで、そのよだれが蒸発して舌から気化熱を奪って舌を冷やし、それを続けることで身体を冷やすという方法で体温調節をしているのです。しかし、湿度が80%を超えてくると、舌での水分の蒸発がうまくいかなくなり、体温調節に支障をきたしてしまいます。特に湿度が高い日は、エアコンの調湿機能の設定変更、除湿器の併用なども行ってください」
犬や猫は舌を出すことで体温調節をしている
高過ぎる湿度は犬にこんな健康リスクをもたらすとのこと。
「身体の表面にいる細菌の中のアクダマ菌が増えやすくなり、脂質が生じます。そのまま状況が改善されないと“膿皮症”に罹る恐れが高まります」
膿皮症は、お腹や背中、手や足の指の間、脇の下などに、皮膚のかゆみや発疹、脱毛などが起きる皮膚病の一種です。直接命を脅かすことはないものの、皮膚のかゆみは犬にとって大きなストレスに。治療が長引くと気性が荒くなったり、不眠症になったりする犬もいるため、室内の適切な湿度の維持は非常に重要です。
3)暑さに弱い犬・猫種は
さらに、特に暑さに弱い犬・猫種も伺いました。
「頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短い『短頭種』のパグ、シーズー、ボストンテリア、フレンチブルドッグなどを飼っている方は気を付けてあげてください。短頭種は鼻腔が細く、空気が肺に入りにくいため、特に夏は、パンティング(浅速呼吸)がしづらく、また、舌での水分蒸発がうまくいかなくなりがちです。また、寒冷地原産のゴールデンレトリバー、シェットランドシープドッグ、シベリアンハスキー、アラスカンマラミュートなども暑さに弱いですね。夏の散歩から帰宅した直後、鼠径部や毛の薄い部分に、水で濡らし、固く絞ったタオルを当てて冷やすと良いでしょう。アイスパックなどは急激に温度が下がり過ぎるため、あまりお勧めできません」
原産が寒冷地でなくても、鼻の短い犬種も暑さに弱いとされる
猫はどうでしょうか。
「猫の原産は、暑い地域がほとんどのアフリカ北部や中東のアラビア半島に生息するリビアヤマネコといわれていることもあり、犬に比べると暑さには強いとされています。とはいっても、心疾患、腎疾患などを持つ老猫になると暑さには弱くなります。また、長毛種のペルシャ、ヒマラヤンなども暑さは得意ではないですね」
2.温度・湿度以外の注意点も解説
続けて、温度・湿度以外に注意すべき点について聞きました。
1)飼い主とペットが過ごす場所の“高低差”に注意
「冬季編の記事で指摘したのと同様、夏季も飼い主とペットが過ごす空間の高低差に着目してください。一般的に人はペットより高い場所で暮らしており、ペットは床に近い場所が主な行動エリアです。夏に室内を冷やすと冷気は床に向かうため、人間が快適と感じている温度、湿度が、ペットが体感しているものとは異なっている可能性もあります。また、南に面したリビングの掃き出し窓の前あたりは日当たりが良いために、局所的に温度が上がっている場合もあるので要注意。微妙な温度・湿度の差を測るには、前述した温湿度計を使うのが理想的です。ペットが大半の時間を過ごす床上数十センチで測定し、その数値を参考にして温度・湿度を調整することをおすすめします」
2)夏本番前、梅雨明け前後でも熱中症リスクが
梅雨明け前後~夏本番を控える頃は、温度・湿度差が開く季節の変わり目。注意すべきポイントを伺いました。
「酷暑の8月~9月だけでなく、まだ身体が暑さに慣れていない6月後半から梅雨明けをして気温が上がっていくころも熱中症リスクが高い時期です。ペットは、暑さに身体が慣れるまで3週間程度を要します。気温が高くなると、ペットは体内から熱を逃がそうと血管を拡張させ、気温が低くなると、熱を逃さないよう血管を収縮させるのですが、これがうまくいかないと自律神経が乱れ、胃腸の調子が悪くなって食欲不振、嘔吐、下痢などといった症状が出ることもあります。朝晩と日中で温度・湿度が大きく変わる場合には特に注意して温度、湿度を調整してください」
さらに、9月~10月の夏から秋に移行する季節の変わり目も要注意とのこと。
「夏から秋にかけての時期は、日によって気温が大きく変わることがあります。例えば、昼間は暑くても、夜になると風が出て体感温度が急激に下がる、といったケースです。また、9月頃は急激な気圧の変化をもたらす台風も増えます。こうした環境下では、ペットは梅雨明け前後と同様、血管を拡張・収縮させて体温調節のエネルギーを多く使うのですが、まだ夏季~初秋の頃は、冬季よりもエネルギーが消耗されやすく、血管拡張・収縮がうまくいかず自律神経が疲弊する場合があります。気温が変わりやすいこの時期は、夏用の冷感ラグや、ふわふわの暖かいベッドなどをすぐに使えるようにして、ペットが休む場所の選択肢を増やしてあげると良いと思います」
暑い日には冷汗マットなども有効活用できる
寒暖差によって体調を崩すのは人間もペットも同じです。1日を通して家の中の温度が極端に変化しにくい、高断熱・高気密な住まいも検討の価値はありそうです。
3.快適な室内環境で健康的な暮らしに
快適な室温、湿度が保たれた室内環境で暮らすことで、ペットの心身にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。
1)ペットと飼い主のQOLが上昇する
「皮膚トラブル抑止、自律神経の安定、胃腸の状態を健全に保つことができる、などを先述しましたが、獣医動物行動学の点で言いますと、特に大きなメリットはストレスの軽減だと思います。ストレスが溜まると、他のペットや人間に対し、うなる、吠える、歯をむき出す、咬みつく、といった問題行動があらわれる場合もあるのですが、室内の温度・湿度が適切に保たれていることで、間接的にそうした問題行動を起こしにくくすることができます」
上記のメリットは、ペットだけでなく飼い主にも多大な好影響を与えますと茂木先生は言います。
「愛犬、愛猫がストレスなく健やかに毎日を過ごし、問題行動を起こさない状況は、ペット自身はもちろん、飼い主のQOLを高く維持することにもつながります。温度、湿度は目に見えないものですが、ペットと人が心身ともに健康な生活を送る上で、極めて重要な要素と言えます」
ペットと飼い主の理想的な関係を支える大きな要因となるのが、室内の適切な温度と湿度。ペットとともに暮らしたいと考える方は、それをどのように実現し、維持していくかをもっと考える必要がありそうです。高断熱・高気密な家に暮らすことは、その有効な手段になると言えそうです。
まとめ
本記事で、家で過ごすペットの夏バテや熱中症を防ぐ適切な温度・湿度を解説しました。その環境を維持することが、ペット、ひいては飼い主の心身健康をも大きく左右することが分かりました。
これを実現する選択肢のひとつとして考えられるのが、断熱・気密性能の高い住まい、Asu-hausです。Asu-hausがめざす理想「夏の室内温度が26~28℃」「湿度は60%以下」は、本記事で解説したペットにとっての理想の室内環境をかなえる性能です。さらに、各部屋の温度差が全居室で±1℃以内、壁・床・天井の表面温度が室温±2℃以内で保たれるため、寒暖差が生じにくく、体調をくずしにくくなることも見逃せないメリットです。
下記から、Asu-hausの甲州街道モデル体験棟の詳細をご覧いただけます。
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