【家づくりのヒント-土地編①】住まいの“基盤”、大切な「地盤」「用途地域」を詳しく解説

家づくりに役立つヒントをまとめるシリーズ記事。第1弾では住まいの基盤となる「土地」を、ふたつの視点から見ていきます。ひとつ目は安全に長く住み続けられる家を建てるための重要な判断基準となる「地盤」です。土地といえば、多くの方は目に見える地表面の状態に注目しがちです。しかし、家づくりで本当に大切なのは目に見えない「地盤(地中の強さ)」。これこそが建物の安全性を左右する最重要ポイントなのです。

ふたつ目は、法令により、その地域の用途に応じて建てられる建物が定められている「用途地域」です。知っておくと家を建てようとするエリアの住環境が予測でき、住み心地をイメージしやすくなります。

1.目に見えない「地盤(地中の強さ)」が家の安全を左右する

どれだけ堅牢な家でも、それを支える地盤が軟らかければ安全に暮らすことはできません。安心して家を建てられる地盤を探すにはどうすればいいのでしょうか。

1)土地の「見える部分」と「見えない部分」…なぜ地盤調査が必要?

大地震の発生後、地盤の液状化などで家が傾き、住み続けることが困難になった、というニュースを見聞きしたことがある方は多いはず。そうした悲劇を回避するためには、目に見える地表ではなく、目に見えない地中の強さ=地盤が、建物を安全に支えられるかを調べなければなりません。それが「地盤調査」です。

2)事前に調べる方法…国・自治体の無料サイト活用法

実際に地盤調査を始める前に活用していただきたいのが、国・自治体が公開している無料サイトである程度の目安を付けることです。

例えば、国土交通省の「国土地盤情報検索サイトKuniJiban」です。このサイトでは、国土交通省の道路・河川・港湾事業等の地質・土質調査成果であるボーリング柱状図や土質試験結果等の地盤情報を検索し閲覧することができます。


「国土地盤情報検索サイトKuniJiban」の画面

また、同じく国土交通省の「国土数値情報ダウンロードサイト」の土地履歴調査(画像)では、過去の地盤沈下のほか、水害、地震被害などをまとめた災害履歴図を閲覧することができます。

さらに、国立研究開発法人産業技術総合研究所は、千葉県北部地域/東京都区部/埼玉県南東部に分割した都市域の地質地盤図を公開しています。地層の3次元の分布形態を平面図・断面図・立体図で表示しているほか、解析に使用したボーリングデータも閲覧できます。

ほかにも各自治体や民間企業が任意の地域の地盤情報を検索できるシステムや、過去の災害履歴、さらに今後想定される地盤沈下、液状化などの程度を示したハザードマップを公開しています。これらも地盤の強度を調べる有効な手段となります。


全国各地のハザードマップを確認できる「ハザードマップポータルサイト」のトップページ

3)本格的な地盤調査…「SWS試験」が一般的

上記のデータで地盤の目安を付けたあと、次に行うステップが地盤調査です。2000年に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに、着工前の地盤調査は必須となりました。また、そもそも調査結果がなければ、地盤の強さに対してどの程度の重さなら耐えられるか、安全性が担保できるのはどのような構造か、などを測定する構造計算ができず、建築確認申請に必要な書類を作成することができません。

地盤調査は建築主が負担して行い、また土地購入の際は、買主が費用を負担して行うケースが大半です。地盤調査と聞くと「ボーリング」を連想する人は多いかもしれませんが、一般的な木造2階建て住宅を建てる場合によく見られるのは、スクリュー状の鉄の棒(ロッド)を地面へ垂直に差し込み、おもりを乗せて回転させた時の沈み方で判定する「スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)」です。建物計画地の四隅と中心部分の計5ヵ所を計測する場合が多く見られます。調査期間は半日程度で、正確な結果の判定には数日かかりますが、簡易的な速報値はその場ですぐに分かります。


地盤調査の様子

ちなみに、「ボーリング調査」が多く用いられるのは、中高層建築となる鉄筋コンクリート造や鉄骨造の住宅、比較的大規模なマンションなどを建てる場合が大半です。調査では、円筒状の穴を掘って、地盤の強度や地質構造、地下水位の高さなどを測定します。合わせて、土壌汚染調査や液状化判定などを行うこともできます。

4)地盤改良工事…地盤によって対応方法がさまざま

地盤調査によって軟弱であることが判明した場合は、地盤改良工事を行う必要があります。

地盤改良工事には主に次の3種類があります。

  • 表層改良工法…表層以下2mほどが柔らかい地盤で用いられる工法。深さ2mほどの土を掘ってセメント系固化剤を注入し、地表周辺を固める。
  • 柱状改良工法…コンクリートの柱を注入して、摩擦力で地盤を強固にする。強固な地盤がそこまで深くない場合、支持杭としても用いられる。一戸建てに加え、自重の重いビルやマンションなどでもみられる。
  • 鋼管杭工法…柱状改良工法と同じ要領で、軟弱地盤の下部にある強固な地盤(支持層)まで、鋼管やコンクリートなどの杭を設置する工法。

地盤改良工事の費用は、地盤調査同様、買主負担が一般的です。なお、地盤改良工事が必要になるかどうかは、地盤調査をしてみないと分からないのが実情のため、調査や改良工事費用は、予め、かかりそうな予算を担当者に聞いておくのが無難です。

2.住環境を決める「用途地域」…建てられる建物で変わる暮らし

家を建てるための土地を探している時、よく耳にするのが「用途地域」というワードです。住み心地や暮らしの利便性は、その土地および周辺の用途地域の種類を知ることで、事前にイメージすることができます。

1)用途地域とは?…住み心地に直結する重要な制度

用途地域とは、その地域の用途に応じて13に分けられたエリアを意味します。国は「都市計画法」を定めており、都道府県知事がこの法律に基づいて「都市計画」を立て、地域を1)都市計画区域 2)都市計画区域外 3)準都市計画区域の3つに分けています。さらに1)の都市計画区域が、a)市街化区域 b)市街化調整区域 c)非線引区域の3つに大別されます。

そして、a)市街化区域の内部に定められるのが「用途地域」です。土地の利用法が住居系と商業系、工業系の3つに分けられており、計13種類あります。各地域に建てることが許される建物や建て方のルールが定められ、土地利用に応じた環境が確保されています。

用途地域によって「建てられる家の大きさや高さ」や「周辺の住環境」は明確に異なります。事前に用途地域を分かっていれば、どのような新生活を送ることになるか、イメージしやすくなるでしょう。

2)一般的な住宅に適した用途地域の選び方

一般的な住宅には、建物の高さが10m~12mなどに制限された「第一種低層住居専用地域」や、「第一種」と同様の建物に加えてコンビニ、小規模店舗が建てられる「第二種低層住居専用地域」、住宅以外は「第一種」「第二種」で建てられる建物に加えて、床面積3000㎡までの店舗や事務所、ホテルが建てられる「第一種住居地域」などが適していると言えます。逆に、「工業専用地域」は、工場のための地域であり、住宅はもちろん、店舗、学校、病院、ホテルなどは建てることできません。

3)インターネットでの調べ方

所有している土地や、購入を検討しているエリアがどの用途地域に該当するのかは、役所の窓口で調べられますが、最近ではほとんどの自治体がインターネット上に用途地域図を公開しています。「市区町村名+用途地域」で検索すると、色分けされた地図で確認することができます。

まとめ

本記事では、家を支える「土地」に関して、地盤と用途地域の2つを解説しました。いずれも住み心地はもちろん、安全性や資産性などに直結する非常に大切な部分です。特に地盤については事前にしっかりリサーチし、必要に応じて地盤改良工事を行ってください。強度の判断は専門性が極めて高いため、専門の施行会社、工務店、ハウスメーカーなどに依頼することになりますが、丸投げするのではなく、具体的な説明を求め、納得した上で進めていくことが大切です。

また、記事中でも触れましたが、地盤調査・改良工事は一般的に買主が費用を負担するため、家を建てる場合は、その費用をあらかじめ準備しておきましょう。

今後も引き続き、理想の家を建てる大切な要素・土地探しに役立つヒントをまとめた記事をシリーズでお届けします。ぜひご覧ください。

下記から、Asu-hausの甲州街道モデル体験棟の詳細をご覧いただけます。


家づくりに役立つ基礎知識をまとめたシリーズはほかにも、【50代からの住まい購入で知っておくべき資金計画の基礎知識】、快適、健康に暮らせる家づくりのヒントになる【用語解説】「断熱性能・気密性能」や、安全性、耐久性の高い家づくりに必要な【用語解説】「耐震等級・耐風等級」など、役立つラインナップが公開されています。ぜひご一読ください。

家づくりの基礎知識や暮らし方のコツなど、役立つ新着情報をメールでおしらせします。
住んでからも後悔しない、しあわせが持続する家づくりのために、参考にしていただければ幸いです。

学習するトップへ戻る

カテゴリ