
高気密・高断熱住宅とは?メリット・デメリットと家づくりのポイントを紹介

住宅業界で注目度が高まっている「高気密・高断熱住宅」。夏の酷暑や冬の冷え込みをやわらげ、快適な暮らしを実現すると言われています。
しかし実際のところ、どのような仕組みで成り立ち、どのようなメリット・デメリットがあるのか、まだよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、高気密・高断熱住宅の基本的な仕組みや暮らしに与える影響、家づくりのポイントをわかりやすく解説します。
1.高気密・高断熱住宅とは|高い保温効果で夏は涼しく、冬は暖かい家
高気密・高断熱住宅とは、すき間が少なく熱が逃げにくい構造で外気の影響を抑え、室温を保つ「保温ポット」のような住まいです。冷暖房効率が高まり、省エネと「夏涼しく冬暖かい」快適な暮らしを実現しやすくなります。
この快適性を支えるのが「気密性能」と「断熱性能」です。
性能 | 気密性能 | 断熱性能 |
---|---|---|
概要 | 建物のすき間がどれだけ少ないかを表す | どれだけ屋外の熱の侵入を抑えられ、屋内の熱を留められるかを表す |
特徴 |
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|
これらの性能がしっかり備わっているかどうかは、住宅を選ぶときの重要なポイントになります。あわせて、高気密・高断熱の住宅かどうかを見極める際に役立つ、2つの基準も確認しておきましょう。
1)高気密の住宅はC値が小さい
住宅の気密性能は、C値(相当隙間面積)という指標で表します。C値が小さいほど「住宅の隙間が小さい」という意味であり、気密性が高いと判断できます。
例えば、C値が1.5㎠/㎡であれば、100㎡の床面積に150㎠の隙間(はがき一枚分)があることを意味します。
一般的な住宅の場合はC値5.0㎠/㎡、高気密住宅の場合はC値2.0㎠/㎡以下が目安となることを覚えておきましょう。
以下の記事では、気密性能が大事な理由と性能を上げる工夫を解説しているので、あわせてご覧ください。
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「気密性能」が大切な理由とは?メリットやC値の基準を解説
2)高断熱の住宅は断熱等級が高い
住宅の断熱性能は、UA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)で判断します。ただし、それぞれを細かくチェックするのは難しいため、住宅を見るときはUA値とηAC値を踏まえて断熱性能を評価する「断熱等級」を参考にしましょう。
断熱等級は1~7で評価され、数値が高いほど断熱性能が高くなります。旭化成ホームズの「Asu-haus(アスハウス)」は最高等級7を基準にしています。
住宅の断熱性能や省エネ性能を示すUA値・ηAC値は、等級4を満たすことが基準上の最低ラインです。ただし、寒冷地や暑さの厳しい地域では、それ以上の性能を確保する必要な場合もあります。
断熱等級について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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断熱等級とは?等級5・6・7による生活や性能の違い、基準値・メリットを解説
2.高気密・高断熱住宅のメリット
数値や基準だけでは見えにくいのが、暮らしのなかで感じる高気密・高断熱の効果です。ここからは、高気密・高断熱住宅の主なメリットを4つに分けて紹介します。
1)快適・健康に過ごせる温熱環境が整う
高気密・高断熱住宅は、夏は涼しく冬は暖かく、部屋間の温度差も小さく保てます。
近畿大学・岩前篤教授の研究によると、断熱性能が高い住宅ほど入居後に持病や体調不良が改善した人の割合が高く、快適な温熱環境が健康にも良い影響を与えることが示されています。
出典:近畿大学 岩前篤教授「断熱性能と健康」日本建築学会環境工学委員会熱環境運営委員会 第40回熱シンポジウム
また、各部屋の温度差が小さいことで住人の血圧変動が抑えられることもわかっており、住宅性能によってヒートショックのリスクを軽減できます。
こうした特性から、高気密・高断熱住宅は快適で健康的な住環境の実現につながります。
高断熱・高気密性能が健康に及ぼす影響については、以下の記事でも紹介しているので、あわせてご覧ください。
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2)冷暖房効率が上がり光熱費を軽減できる
高気密・高断熱住宅は外気温の影響を受けにくく、少ないエネルギーで効率よく室内を冷やしたり温めたりできます。その結果、光熱費を軽減することが可能です。
例として、旭化成ホームズが2024年12月におこなった実験では、「断熱等級7」「C値0.2以下」という高気密・高断熱住宅に第一種全熱交換型換気システムを組み合わせたところ、外気温が0℃近い真冬でもエアコン1台で全室を22℃前後に維持できました。
このときの電気代は8,830円/月、うちエアコン分は約3,500円相当でした。2023年1~3月の4人世帯の月別電気料金の全国平均である19,941円/月(※)と比べると、11,000円以上も電気代を抑えられています。
※ 出典:家計調査 家計収支編 第4表 世帯人員・世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出【2023年1~3月期】| 総務省
実験の詳細は以下の記事で紹介しているので、あわせてご覧ください。
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【Asu-haus実測データ公開(冬)】0℃近い厳冬期でもエアコン1台で全部屋22℃を実現!
3)住宅の耐久性能が高まる
高気密・高断熱住宅は、外気の侵入を抑えつつ室内の温度を安定させることで、壁内や窓際の結露が発生しにくい構造です。そのため、柱や梁を腐食させる原因となる結露やカビを効率的に防ぎ、住宅の耐久性を高められます。
また、計画的な換気や湿度管理を組み合わせれば、構造材や断熱材の性能も長く維持しやすくなります。
4)計画的な換気で空気を新鮮に保てる
高気密・高断熱住宅は、すき間が少なく外気の出入りが抑えられるため、すき間風による漏気が発生しにくい構造です。
その特性を生かし、適切な換気システムを組み合わせれば、必要な量の外気を計画的に取り入れられます。これにより、室内の空気を常に新鮮な状態に保つことが可能です。
3.高気密・高断熱住宅のデメリット
高気密・高断熱住宅は、十分な計画のもとで建てないと、快適性が下がる恐れがあります。
ここからは、代表的な3つのデメリットを紹介します。
1)初期費用がかかる
高気密・高断熱住宅は、一般的な住宅よりも建築コストが高くなる傾向があります。専用部材や専門的な施工が必要となり、その分の費用が加算されます。
ただし、光熱費の削減や補助金の活用によって負担を抑えられるケースもあるため、長期的な視点でコストを検討することが重要です。
2)乾燥しやすい
高気密・高断熱住宅では、冬は外気の影響で相対湿度が低下しやすく、室内の湿度が下がって乾燥を感じやすくなります。特に、断熱性の高い住宅は暖房効率がよい反面、湿度がこもりにくいため、肌や喉の乾燥につながりやすいのが特徴です。
加湿器の利用や換気の工夫によって、室内の湿度を快適に保つことができます。普段から少し意識すれば、乾燥はそれほど気にならない程度に抑えられます。
3)結露が起こりやすくなる場合がある
高気密・高断熱住宅は、外気との温度差が大きくなるため、換気や除湿が十分でないと窓や壁に水滴がつきやすくなる場合があります。
結露を放置するとカビやダニの原因にもつながるため、風通しを考えた間取りや換気の工夫、エアコンを適切に使うことが大切です。
4.高気密・高断熱住宅で後悔しない家づくりのポイント
性能が高くても、設計や暮らし方を誤ると、乾燥や結露といった不満につながることがあります。
こうした後悔をしないために、ここからは高気密・高断熱の家づくりのポイントを紹介します。
1)温度・湿度をコントロールできる環境を整える
高気密・高断熱住宅で快適な住環境を保つには、温度や湿度を適切に調整できる設備が欠かせません。エアコンや空調設備を活用し、住人がコントロールできる状態にしておくことで、結露やカビの発生リスクを抑えられます。
全館空調システムは住宅全体を均一な環境に保つのに効果的で、高気密・高断熱住宅との相性もよいとされています。
こうした設備やシステムはあとから導入するのが難しい場合もあるため、家づくりの初期段階で選択肢を比較しながら計画に組み込むことが大切です。
温度・湿度をコントロールするために必要な設備については、以下の記事も参考にしてください。
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快適な室内環境に不可欠な冷暖房・空調設備とは?その種類と特徴を解説
2)換気システムを考慮する
高気密・高断熱住宅は外気の出入りを抑えられる反面、室内の空気がこもりやすくなります。これを防ぐには、新鮮な空気を取り入れて循環させる換気システムが重要です。
戸建て住宅では改正建築基準法により24時間換気設備の設置が義務付けられ、第1種換気は室温をほとんど変えずに換気でき、省エネにも有効的です。
設計段階から換気を考慮し、快適で健康的な住環境を整えましょう。
換気システムについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
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「温度・湿度調整」の重要性と空調設備の種類・方法
「換気性能」が大切な理由とは?種類や快適で省エネにもなる方法を解説
3)カビ・結露に強い断熱材を使う
断熱材には、調湿効果のあるものやカビ・結露に強いものを選ぶと、湿度の高い地域でも結露やカビの発生を抑えられる可能性があります。
結露の発生を防ぐには、室内側の壁面は水蒸気を通しにくく、外気側は通しやすくする断面構成が効果的です。以下のような充填断熱工法と外張り断熱工法を組み合わせた付加断熱工法は、その一例として挙げられます。
家づくりでは、使用する断熱材や工法について、ハウスメーカーや工務店に確認し、理解・納得したうえで選択することが大切です。
以下の記事では、断熱材の種類や選ぶポイントを解説しているので、あわせてご覧ください。
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「断熱材」の種類は?施工方法や選ぶポイントを解説
4)夏の暑さ対策は日射取得・遮蔽にも配慮する
高気密・高断熱住宅は太陽光が入りやすく熱がこもりやすいため、家づくりの段階で窓の大きさ・位置・種類を計画することが重要です。
日射遮蔽型の窓は夏の暑さ対策に有効ですが、冬は室温低下の恐れもあるため、日射取得とのバランスを考えましょう。
さらに、夏は遮光性カーテンなど暮らし方の工夫も快適性向上に役立ちます。
日射取得・日射遮蔽について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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まとめ
高気密・高断熱住宅は、外気の影響を抑えて快適な室温を保ち、省エネや健康面への効果も期待できます。
一方で、乾燥や結露などのリスクもあるため、温湿度管理や換気計画、断熱材選び、日射取得と遮蔽のバランスなどを、家づくりの段階から考えることが大切です。
高気密・高断熱性能と配慮を標準で備えているのが、旭化成ホームズの「Asu-haus(アスハウス)」です。「Asu-haus」は、標準で断熱等級7(UA値0.26W/㎡K以下)、気密性能C値0.2㎠/㎡以下を備えた高気密・高断熱住宅です。
カビや結露に強い高性能断熱材「ネオマフォーム」を採用しており、快適な住環境を維持できます。また、第一種換気システムと組み合わせることで、日本最高レベルの温熱性能を実現します。
高気密・高断熱住宅の選択肢のひとつとして、ぜひ「Asu-haus(アスハウス)」をご検討ください。