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未来のあかり その2

大光電機の展示ブース。未来の形から懐かしい形までさまざまなLED照明器具がラインアップ。

「ライティング・フェア2013」の近未来の光

前回に引き続き「ライティング・フェア(国際照明総合展)2013」の会場から「未来のあかり」を紹介しましょう。「ライティング・フェア2013」は3月5日~8日、「東京ビッグサイト」(東京・有明)で開催された照明技術・器具の見本市です。
灯火の時代からLED照明の今日まで、光はさまざまに形を変えて、私たちの暮らしを照らしてきました。LED照明は小さな点の集まりなので、その並び方で多様なフォルムの発光体をデザインすることができます。さらに、LEDのまぶしい光の粒の集合体は、光を制御するシェードや反射板の技術の向上によって、午後の日差しを受けた磨りガラスのような、均一で自然な面発光に進化を遂げています。
では、光の形は、今後どのように変わっていくのでしょうか。今回注目するのは「光の糸」です。
直径わずか0.3ミリ(技術的には約0.1ミリまで可能)。透明な光の線をランダムに編みこんで丸めた、繭のような照明器具「コクーンライト」が、東芝ライテックのブースに展示されていました。強い光ではありませんが、確かに極細の線が発光しています。これは光ファイバーと半導体レーザー(レーザーダイオード)でつくりあげた新しい光の形です。タコ糸でいちばん細い綿糸1号は太さ0.5ミリ程度、「光の糸」はその半分くらいの直径です。
光ファイバーは透明なホースのようなもの。蛇口につないで水を流すとホースの反対側から水が噴き出ます。水はホースによって遠くに運ばれていきます。ホースも水も透明なので、ホースだけを見ると水が流れているかどうかはわかりません。光ファイバーもこれと同じで、透明な「ホース」の中を光が流れているのです。光を流したファイバーの反対側の断面には、水が噴き出すように光が現れます。光ファイバーは光を遠くに運ぶ技術なのです。
ホースの直径が蛇口の径より小さいと、水は注ぎ口側で溢れて、水を効率よく送り出すことはできません。光ファイバーも同様で、ファイバーの直径より小さく強い光源があれば、入り口側で光が溢れることなく、強い光を効率よく遠くまで運ぶことができます。光の糸の直径は0.1~0.3ミリ。果たして0.1ミリの径より小さな光はあるでしょうか。東芝ライテックは光ファイバー用の極小で強い光に、レーザーダイオードを使っています。光の糸の中にはレーザーダイオードの極小の点が発した強い光が流れているのです。その中でも青色のレーザー光だけは、ファイバー側面にわずかに光が滲み出すことがわかっていました。「光の糸」はこの青色レーザーの特性を生かし、ファイバー表面の蛍光物質を発光させることでファイバー全体が光っているように見えるのです。レーザーダイオード一個で、なんと数十~数百メートルの連続した長尺細線発光が実現できます。ふんわりした美しい光の造形の背後には、繊細でハイテクな光の技術が隠されていました。

パナソニックが提案するやさしいLEDのあかり。新製品の面発光LED照明「パネルミナ」が発表されました。 レーザーダイオード技術で実現した
東芝ライテックの「コクーンライト」。

熱は運ばず光だけを運ぶ技術

では、光ファイバーを使い光を遠くまで運ぶメリットとは。光ファイバー通信による高速インターネットやケーブルテレビは既におなじみの技術です。照明器具として考えた場合、いちばんのメリットは「熱のない光」を実現できることでしょう。電球もLEDも発光時には発熱するため、光源が熱くなり器具で放熱させる必要があります。しかし光ファイバーは「光」だけを遠くに運ぶので、発光部分で放熱処理すれば、光を使う場所では熱の心配がありません。この原理を生かして、光を照らす手元が熱くならない読書灯や、熱を避けたいもの(例えば美術品)の照明などに活用されてきました。また、光源と器具を別にすることで照明器具を小型にできる利点もあります。
東芝ライテックでは、このダイオードレーザーの技術を「コクーンライト」の糸状の光素材として活かすのか、表面発光ではなく、ファイバーを束ねて、光は強いけれど熱くない、高効率なスポットライトを開発するのか、現在、技術活用の方向性を模索中なのだそうです。いずれにしても実用化は検討されており、開発担当者は「2015年頃を目標に」と、その希望を語ってくれました。個人的には光の糸でつくった織物や光る洋服を見てみたいのですが、皆さんはどう思いますか。近い将来、機織り機で照明器具をつくる時代が来るかもしれません。

光の糸だけではなく、「光のロープ」もありました。

展示されていたのは同時開催の「JAPAN SHOP 2013」の会場です。愛知県蒲郡市の合繊繊維ロープメーカーの老舗、三栄製綱が出品したのは光るロープ「ヒカロープ」。ちなみに蒲郡市は日本最大の繊維ロープ産地です。三栄製綱は漁業関係者からの要望で、10年ほど前から光るロープの開発をスタートし、2007年にLEDで光るロープは完成します。このロープは、実際には漁業法の規制から漁で使われることはなく、海上や海中の作業の夜間認識や安全確保、潜水士の誘導など、海のプロの仕事の現場で活用されてきました。ロープのように自由自在に曲がり、柱に結びつけたり、ドラムで巻き取ることができるヒカロープ。海の中だけではなく、住宅の中でもアイデア次第でいろいろな使い道があるかもしれません。

三栄製綱の光るロープ「ヒカロープ」。
TRIGONOTRI TERASU
TRIGONOTRI TERASU

アクリル導光板の仕組を生かした照明器具。透明アクリル板の端部を照明で照らすと、光ファイバーのように反対側のエッジに光が現れます。この透明アクリル板の表面に凹凸を付けると、アクリル内部で表面反射していた光が、ドット加工からあふれ板全体が発光するようになります。シェードの下には光の彫刻のような導光板が隠れています。

トライゴノ
幅24×高さ29.5×奥行き21cm。
光源はスマートシャンデリア
(LED+アクリル導光板)。 ¥24,990
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