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暮らしのコツ

プネの「夜のあかり」

日没後の楽しみ

 高原に位置するプネでは一日の最高気温と最低気温の差が大きく、夜間は昼間に比べると過ごしやすくなる。このため、人々が買い物などの日常的な活動を行うのは決まって夕方以降。昼間はあまり人の姿を見かけない市場や商店街も、夜は打って変わって活気づき、夕食と翌朝の朝食用の食材を求める人々であふれる。八百屋は帰宅のラッシュアワーに合わせて、新鮮な野菜を仕入れて待っている。
 主にヒンズー教が信仰されているので、学生が多い学術都市といえどもアルコール類の消費量は少なかった。しかし最近はビールが飲めるパブなど、アルコールの摂取を恥じない学生や若い会社員のための憩いの場が出現するトレンドが生まれている。音楽を楽しめる店も多い。シーシャ・カフェという、以前は水タバコ*¹を振舞っていたイラン系のカフェでは、若者たちがジャズを聞きながら食事を楽しむ。アルコールを提供する店はまだモラル的には快く思われていないので、人の目を気にすることなくお酒を楽しめるように、テーブルを照らす灯りはろうそく程度に抑える配慮がされている。
 いっぽう、お酒を飲まない人々の楽しみは、スナックの屋台だ。屋台は人々の帰宅時間を狙って、オフィス街の道端に並び始める。ベジタリアンのヒンズー教徒にはフルーツの生ジュース、肉を含まないパヴ・バジ(ミニバーガー)、サモサ(小麦粉で作った衣でポテトカレーを包んで揚げたもの)、ノン・ベジタリアンにはエッグ・ブルジ(唐辛子やトマト、たまねぎ、スパイスの入ったインド式スクランブルエッグ)が人気だ。屋台の周りに老若男女が集い、夜風に当たりながらスナックを頬張って、おしゃべりに興じる。

1.IT会社が並ぶオフィス街の夕景。 2.ショッピングモールは、車や動物に煩わされずゆっくりと寛ぐ人々であふれる。 3.夜になると立ち並ぶスナック屋台。 4.停電時は懐中電灯を灯し営業する。

眠りのスタイル

 現在も、郊外の村部では、ろうそくやケロシンランタンの灯りで商いをしたり、薪で煮炊きをする家も少なくないインド。プネでは毎週木曜日の夜に2時間程度の停電がある。その間は家の玄関や窓を開け放ち、外に出て風に当たって凌ぎ、懐中電灯やろうそくの灯りで通電の再開を待つ。それ以外は比較的、電力供給は安定しているので、照明はあるだけ目一杯点ける。というのは、家電を持っていること自体にまだまだステータス的な感覚があるようだ。家の照明は白色蛍光灯が主流。青みを帯びた涼しげな照明による空間作りが好まれている。
 夕食の時間は夜9時から10時くらいとやや遅めで、食後にはテレビを見る家庭が多い。就寝前には必ず沐浴するか足だけでも洗い、油の灯りを点してマントラを唱える。ガネーシャを祭る家ではガネーシャの灯りは絶やせない。小さな裸電球を油の灯りの代わりに夜通しで灯し、神様の供をする。神様とのコミュニケーションは心を鎮め、静かな眠りに導く準備とされている。
 インドには「ヴァストゥ」と呼ばれるインド風水があり、良い眠りのためにはベッドの位置や寝る方向も大事だと考えられている。一般的に、頭を日の出る東か北東へ向け、足を西方向へ向けて寝る。暑さのせいか、寝具はキングサイズのベッドを選ぶ人が多い。ただ、綿を詰めた敷布団のようなものを板張りの台に載せた寝床で、とても硬いのが西洋のベッドとは異なるところだ。
 就寝時の眠り衣は、保守的な老齢の女性の中には木綿素材のサリーを着る人が今も稀にいるようだが、たいていは男女ともにゆったりとしたパジャマ*²に着替えて眠りにつく。
 12月から2月の肌寒い時期だけ、綿の入った掛け布団が使われる。最近はベッドルームだけには冷房をつける家も少しずつ増え、暑い盛り(4~6月初旬、10~11月)は冷房をつけっぱなしにして、薄い布団を被って寝ている家庭もあるが、一般的には窓を開けっぱなしにして、シーリングファンを回して眠る。郊外に行けば行くほど電力は不足し、プネの周辺の村の民家になるとファンなどもない。インド全体の家庭における冷房の所有率はいまだ10%以下といわれている*³。

*1 北インドでよく好まれる喫煙具の一種
*2 パジャマの語源はヒンディー語の「パエ・ジャマ」で、民族衣装のズボンを意味する言葉が発祥とされる。大英帝国による植民地統治時代に、英国人が眠り衣として取り入れたことがきっかけとなり、世界に広まった
*3 冷房の所有率は2010年で8.2%〔出典:2010年電通資料、India TGI 2010 May-Aug2010調べ〕
5.インドの家庭でよく見られる、むき出しの白色の蛍光灯。灯りを絶やしてはいけないガネーシャ神の神棚にはハロゲンをつけている。 6.夕食後の楽しみはテレビ。睡眠の妨げになることを恐れて視聴時間に制限を設ける家庭も増えてきている。 7.木張りの台に綿のマットを乗せたシンプルなベッドがインド流。
DATA
インド共和国 Republic of India

人口

約12億1000万人
(2011年国勢調査(暫定値)、世界2位)

面積

約328万7000㎢(パキスタン、中国との係争地を含む)

首都

ニューデリー

宗教

ヒンドゥー教徒80.5%、イスラム教徒13.4%、
キリスト教徒2.3%、シク教徒1.9%、仏教徒0.8%、
ジャイナ教徒0.4%(2001年国勢調査)

言語

ヒンディー語

時間帯

UTC + 5:30

マハラシュトラ州プネ市は港湾商業都市ムンバイから南東へ車で5時間ほど向かった先、デカン高原の上に広がる学術都市。バンガロールに並びインドのIT産業、自動車産業の中心。かつての司祭階級が最初に定住し始めたこともあり、教育機関、政府の研究機関などが多く集まり、「東のオックスフォード」と言われる。産業の発展も手伝って一人当たりの収入がインドで6位。インド全体の不調がささやかれるなか、人口の約55%が第三次産業、約49%が第二次産業に関わり、めざましい成長を遂げている。

プロフィール

とみた・みずほ ● デザイン・プランナー。東京都出身。早稲田大学卒業。日産関連のカーデザインスタジオ勤務を経て、デザインスタジオBEESTUDIO PVT.LTD で企画担当に。スイスに1年、イタリアのトリノに5年ほど在住。2011年、古くから自動車産業の拠点のあるプネにスタジオ支所を設立。OEMで活躍するいっぽう、プネの大学でカーデザインに特化した企画や戦略メソッドの非常勤講師を行う。http://www.beestudio.it/

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