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日本人と蛍光灯

日本で蛍光灯が好まれる理由

現在の日本の生活者は、光の量だけではなく質や色温度にも関心を持つようになり、暮らしの照明はずいぶんと進化しました。でも、つい15年くらい前までは、都市の集合住宅の夜景を眺めると、どの窓も一律に蛍光灯の白い光が輝いていました。多くの日本人は、色温度が低い赤みのある温かな光ではなく、南中した太陽光のような高い色温度の光の下で夜を過ごしていたのです。ちょうどその頃、オランダの照明専門誌「ILR(International Lighting Review)」の編集長で光の研究者のJ.F.カミナダさんに、日本の住宅照明事情について話を聞く機会がありました。西欧の人々は色温度の低い白熱電球の落ち着いた光で暮らしていているが、蛍光灯の下で無抵抗のまま漫然と暮らす日本人は、住宅照明への意識が低いのではないか。そんな問いに対して、カミナダさんからは意外な答が返ってきました。以下、簡単にまとめてみましょう。

照明の色温度と国の経度

多くの日本人は北欧のライフスタイルへの憧れがあり、北欧諸国の人々のように電球色の照明で暮らすことがハイセンスと考えているようだ。でも、ヨーロッパの国々から見ると日本は「南国」で、西欧人が南の都市としてイメージするイタリアのナポリは、日本だと青森県とほぼ同じ緯度になる。ある電球メーカーがヨーロッパにおける電球の売れ行きを調査した時、北欧では、蛍光灯を始めとする放電灯が、一般の市場ではほとんど売れていなかった。売れていたのは色温度の低い電球などのタングステン灯だ。しかし緯度が低い南ヨーロッパでは、日本ほどではないが色温度の高い白っぽい光の蛍光灯が売れている。これについてメーカーは、光の色温度の好みは太陽の高さと関係があるのではないかという仮説を立てた。東南アジアの国々でも放電灯は普及している。もし色温度の好みと太陽高度に関係があるとしたら、南の国の日本で蛍光灯が好まれているのは当然だと思う。

光のコントロールが大切

日本人の蛍光灯好きは当たり前。「日本人は光への意識が低いから蛍光灯を使う」という見解は歪狭な視点だと、カミナダさんは言うのです(ほかにも日本人が蛍光灯に馴染んでいる理由を説明していますが、ここでは割愛します)。ただ、まぶしさが強い蛍光灯をむき出しで使うことには苦言を呈していました。また、色温度の高い光は人を覚醒させるので、眠りに悪い影響を与えることも、当時から知られていました。「蛍光灯の光は悪」と、夜の家庭から執拗に白い光を排除するのではなく、蛍光灯のスッキリした白い光が好みの人は、就寝までの光のプログラムを考えて、昼白色の光源と上手に付き合いながら暮らす方法もあるはずです。ただし、睡眠前のベッドサイドの灯りには色温度の高い強い光は避けましょう。光のコントロールが必要です。

D'E-Light/FLOS

LEDデスクライト・調光機能付/無印良品

発熱が少ないLEDは夏の夜にもぴったり。LED12灯に特殊構造の反射板と拡散板を組み合わせて、まぶしさの少ない自然な光をベッドサイドに落とします。色温度は昼光色の5600Kですが、5段階の調光機能を搭載しているので光量の調節が可能です。前面配光設計のため、ベース位置は左側置きになります。

高さ31.5×アーム長さ30cm。ベース22×19×1.2cm
重量1.7kg 光源0.5W LED×12(色温度5600K)
アルミニウム、ABS製。 ¥7,900 無印良品

D'E-Light/FLOS

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