健康づくりのための睡眠指標2014

眠りの質の向上を目指し2003年に厚生労働省が策定した「睡眠指針」が11年ぶりに改定されました。厚生労働省の睡眠指針検討会では今年３月24日に改定内容を承認し、若年世代、勤労世代、熟年世代の3世代の特長やライフスタイルの変化に応じた、より良い眠りのための新しい指標を発表しています。詳しい情報は厚生労働省のホームページから「健康づくりのための睡眠指標2014（平成26年３月）」（87ページのPDFファイルです）をダウンロードしてください。

今回の指針について、新聞紙上などで注目されたのは若年世代の「寝床でスマホ」でした。これはこの世代に限った問題ではないと思いますが、「健康づくりのための睡眠指標2014」では次のような指摘があります。「現代日本では、中学生、高校生の間にも携帯電話が広く普及しており、日本の中学生および高校生を対象にした横断研究では、就床後に携帯電話を会話やメールのために使用する頻度が多い者ほど、睡眠の問題を抱えている割合が高いことが示されている」（P.45）。つまり、メールの送受信やネット閲覧でついつい夜型になり、睡眠時間が遅れてしまうことへの警鐘がなされたわけです。
「寝床でスマホ」に関しては、睡眠の研究者の間では別の問題も指摘されていました。スマートフォンや携帯電話の画面のブルーライトによる刺激の問題です。その画面を見ることは光を直接見ていることと同じなので、直視による刺激とブルーライトの刺激が眠りに悪影響を与えているという懸念です。光と睡眠の関係については、「健康づくりのための睡眠指標2014」で、「自分の睡眠に適した環境づくり」として次のように説明されています（P.41）。少し長くなりますが引用します。 「入眠前に普通の室内よりも明るい光の下で数十分過ごすだけでも、光の覚醒作用や体内時計を介したリズムを遅らせる作用のために、入眠が妨げられる。普通の室内の明るさで光の質について検討した研究では、明るさが同じでも、青白い光や白っぽい光のように相関色温度の高い光は、白熱電球のような暖色系の光と比べて、覚醒作用が強いことが指摘されている」。
ブルーライトのような色温度の高い光は、覚醒作用によって入眠を妨げ、体内時計のリズムを乱す恐れもある、というわけです。ここではスマホや携帯電話の光と眠りの直接の関係について言及しているわけではありませんが、いずれも私たちの身の回りにあって、常に目にする「発光体」として看過できないと思われます。

色温度の高い光は携帯電話やスマートフォン、PCのような日用情報機器だけではなく、夜の街にも溢れています。夜更かしをしてコンビニで買物をすれば、店内の真っ白な照明でさらに覚醒されて、入眠が妨げられる可能性もあるのです。次回のコラムでは、都市の灯りの取り組みについて、某金融機関のATMの事例を紹介します。