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暮らしのコツ

yellow 楽園写真家が語る「楽園のあかり」写真家:三好和義

リゾートホテルでは心身ともにリラックスできて、ぐっすりと眠ることができる。
それは、リゾートホテルの「夜のあかり」と関係があるのかもしれません。
世界のリゾートを写真に収めてきた「楽園写真家」の三好和義さんに、
これまで撮影してきた「楽園」の印象深い「夜のあかり」を語っていただきます。
美しい写真と三好さんの言葉から、快適な暮らしの照明のヒントを見つけてください。
第6回は熊本、人吉温泉「清流山水花 あゆの里」について。

清流山水花 あゆの里

川面に反射する自然光と。石壁の表情を際立たせる光

たくさんの照明スイッチの意味

自然の水の音には、私たちの気持ちを鎮める効果があるのではないでしょうか。波の音や川のせせらぎの音を耳にしながら、ゆったりと過ごす一日は、リゾートならではの幸福感があると思います。写真で紹介している「清流山水花 あゆの里」の客室の特長は、山並みや球磨川の流れが照り返す自然光の変化を、絵画のように額縁に収める大きなガラス窓でしょう。力強い川音を聞き、下流に沈む夕日の照り返しを眺めていると、それだけで贅沢な気分に浸ることができます。もし、夜になってガラスに室内の照明の映り込みが気になったら、天井灯を消してフロアライトだけにしたり、調光で光量を絞るなど、室内外の光のバランスを考えて調節すればよいのです。この客室の照明スイッチは自分の好みにあわせてコントロールできるよう、二列にずらりと並んでいます。客室の照明スイッチの数が増えたのは、ここ7、8年のことです。以前は私も、たくさんのスイッチやコントローラーを見て「多すぎてわからなくなるのでは」と思うことがありました。今では、お宿に泊まると、夕食前、食事中、夕食後、就寝前など、その時の気分や過ごし方で、フロアスタンドを移動したり、室内照明を調節することで好みの光環境をつくることは当たり前になっています。光をコントロールする面白さや心地よさは体験しないとわかりません。照明が細かく調節できるお宿に泊まった時は、お仕着せの光で満足するのではなく、自分の光を探しだしてみてください。

壁に表情を与える光

この部屋は和室なのですが、大きな開口部の手前はテラスのような設いになっていました。重厚で表情豊かな天然木の床と、天井の木の端正な質感。それに石壁とブラインドの木質が響きあい、自然で心地よい雰囲気をつくりだしています。中でも、細かな石が積み重ねられたような壁面は、壁をなめるように照明が当てられ、石肌の微妙な凸凹や色の変化が光によって浮かび上がり、空間のアクセントになっています。昔なら絵画が掛けられていた場所でしょう。しかし天然石の割肌と照明がつくる光と影、色の濃淡は彫刻的で、額縁の絵がなくてもそれだけで美しいのです。もし普通の天井灯でフラットに光を当てていたら、壁紙の模様にしか見えないかもしれません。斜め上からの光で立体的に照らすことで、石の表情が生きてくるわけです。壁に何かを飾るだけでなく、灯りの工夫だけでもインテリアの表情は大きく変わります。「楽園のあかり」が、みなさんの暮らしの灯りを考え直すきっかけになりますように。

「楽園のあかり」を暮らしに

家のダイニングの照明は白すぎないか、寝室のスタンドは明るすぎないか……。自分好みの光にコントロールできる場所で寝泊まりし、体感することで、暮らしの灯りを省みることができるのではないでしょうか。照明の良さは体験しなければわかりません。また、照明器具を天井から吊るすだけではなく、「清流山水花 あゆの里」の石壁のように、壁や天井を照らすことで思わぬ効果が得られることもあります。

▶快適な照明の三つの手法

Kazuyoshi Miyoshi
Kazuyoshi Miyoshi

三好和義

みよし・かずよし ● 1958年徳島生まれ。85年初めての写真集「RAKUEN」で木村伊兵衛賞を受賞。以降「楽園」をテーマにタヒチ、モルディブ、ハワイをはじめ世界各地で撮影。その後も南国だけでなくサハラ、ヒマラヤ、チベットなどにも「楽園」を求めて撮影。その多くは写真集として発表。近年は伊勢神宮、屋久島、仏像など日本での撮影も多い。近著は「京都の御所と離宮」(朝日新聞出版)。日本の世界遺産を撮った作品は国際交流基金により世界中を巡回中。

ご紹介頂いた宿 : 人吉温泉 清流山水花 あゆの里

熊本県人吉市九日町30 tel.0966-22-2171 http://www.ayunosato.jp/

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