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暮らしのコツ

楽園写真家が語る「楽園のあかり3」vol.1写真家:三好和義

リゾートホテルでは心身ともにリラックスできて、ぐっすりと眠ることができた。そんな経験をした方は多いのでは。それは、リゾートホテルの「夜のあかり」と関係があるのかもしれません。世界のリゾートを写真に収めてきた「楽園写真家」の三好和義さんに、「楽園」の印象深い夜のあかりを語っていただくこのコラム。今回から日本のお宿を離れ、海外のリゾートやホテルの「楽園のあかり」をご紹介いただきます。美しい写真と三好さんの言葉から、快適な暮らしの照明のヒントを見つけてください。第1回はインドネシア、フローレンス諸島の野生動物保護区の島に隠されたリゾート「アマンワナ」の灯りのお話です。

アマンワナ

ジャングルと一体になる自然への礼節。アマンワナ(モヨ島/インドネシア)「アマンワナ」があるモヨ島へはボートで上陸します。空港のある島からフローレンス海を航行する約1時間の船旅。ようやくたどり着く熱帯雨林の孤島は、インドネシアの野生動物保護区で、この自然と自分が一つになるリゾートが静かにスタートします。宿泊するのは島に設置された20張のテント。テントと言っても、インドのマハラジャが遠征の旅の宿泊地に建てる天幕の宮殿のような立派な造りで、客室は海辺とジャングルの中に適度な距離で置かれています。テントに滞在するリゾートは近年、いくつか開発され、人気を集めていますが、「アマンワナ」は、私の最初のテントリゾート体験でした。白い布の天井は雨が降れば雨音が、風で葉が散るとその音まで聞こえ、朝には野生のサルがテントを滑り台代わりに遊んでいました。テントの壁の部分は大部分がガラスの開口で、大自然の光景とともにジャングルと海のいろいろな音が伝わってきます。寂しいから音楽を聴くとか、暇に任せて読書を楽しむとか、そんないつもの感情は消え失せて、五感が研ぎすまされ、自然と一体になる原始の感覚がよみがえってくるようです。そこに必要なあかりとは、どんなものなのでしょうか。

孤島の暗闇を楽しむ

太陽が沈むと自然と眠くなり、朝日とともに目を覚ます。太陽の光とともに自然の時を過ごす「アマンワナ」では、夜は必要最小限の小さなあかりをテント内に点在させて、暗闇の時間を楽しみます。ロウソクや電球の小さな光は、天井の白いテント地に反射して部屋全体を覆い、控えめで柔らかな光の中で就寝までのひとときを送るのです。夜は布に反射した光に包まれる優しさを感じ、朝は薄手のカーテン越しに差し込む朝日の爽やかさとともに目覚めの時を迎える。一枚の布は外の自然の気配を伝えるとともに、光をまとい心地良い雰囲気をつくりだして、自然と私たちをつなぐ媒介として使われていました。

布を反射光に利用

私たちの暮らしを見回すと、ファンションからインテリアファブリックスまで、住まいの中にはたくさんの布が使われていることに気づきます。カーテンは夜の部屋の視界の中で大きな面積を占めているのではないでしょうか。このカーテンに照明を当てると、光が布のテクスチュアやドレープを立体的に浮かび上がらせて、柔らかな反射光と相まって、昼間とは違うインテリアの表情を描き出してくれるはずです。柔らかな布を使った間接照明は、都市生活にテントリゾートのあかりの雰囲気を醸し出す工夫になるかもしれません。

「楽園のあかり」が、みなさんの暮らしの灯りを考え直すきっかけになりますように。

Kazuyoshi Miyoshi
Kazuyoshi Miyoshi

三好和義

みよし・かずよし ● 1958年徳島生まれ。85年初めての写真集「RAKUEN」で木村伊兵衛賞を受賞。以降「楽園」をテーマにタヒチ、モルディブ、ハワイをはじめ世界各地で撮影。その後も南国だけでなくサハラ、ヒマラヤ、チベットなどにも「楽園」を求めて撮影。その多くは写真集として発表。近年は伊勢神宮、屋久島、仏像など日本での撮影も多い。近著は『死ぬまでに絶対行きたい楽園リゾート』(PHP)。日本の世界遺産を撮った作品は国際交流基金により世界中を巡回中。

ご紹介頂いた宿 : アマンワナ

http://www.amanresorts.com/amanwana/home.aspx

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