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暮らしのコツ

バルセロナの「夜のあかり」
バルセロナの書店「ラ・セントラル」の紙袋を使ったランプ。ジョセフ・コンラッドの顔がプリントされています。

暗いあかりで本を読む

 子供を毎日気持ちよく学校へ通わせてあげるために規則正しい生活と十分な睡眠はかかせませんが、夜遊びたがってなかなか眠りたがらない、そして翌朝なかなか起きてくれなかったり寝不足で機嫌が悪いという子供も多いのではと思います。
 こちらでは一般的に、小さい頃から子供に個室を与えて、早いうちから子供が一人で寝るようにとしつける傾向があります。子供が一人で眠ってくれれば、親はその後自分たちの時間も大切にできるからです。もちろんそんなことは言うほど簡単には行かないので、皆苦労してノウハウを提供しあったり、あるいは赤ちゃんのうちから「多少泣かせても夜寝るときに付き添わない」という少し過激なメソッド本が売れて物議を醸し出したりしています。
 けれども我が家では、夫婦とも本を作る仕事をしているということもあり、私達にとっても絵本を読む時間は楽しみの一つです。そして夜寝るときに親に付き添って欲しいという子供の気持ちが続くのも実はほんの数年の間だけかもしれません。そこで我が家の場合は私と夫のどちらかが、子供が寝てしまうまで絵本を読む、という習慣を今のところ続けています。
 一つだけ夜気をつけているのは、夕食後寝るまでの間は子供になるだけ直接光を見せないことです。夕食の時間にはテレビやビデオ、パソコンやiPadなどのスクリーンはすべて消して、それから眠る時間まで気持ちを落ち着かせるように持っていくのです。夜のスクリーンがダメな理由はそのコンテンツが刺激的だからというよりも、スクリーンは直接光なので、見ているとどうしても目が覚めて眠れなくなってしまうと思うからです。絵本なら間接光を見るということになりますから、視覚的には刺激も少ないし、明るさも調節できます。
 同じ理由で、夜家を照らす明かりは9時以降は天井からの全体照明ではなく部分照明に、子供の寝室のライティングも、寝る前は間接光による照明のみにしています。パジャマに着替えるときは明るい照明でもいいのですが、着替え終わってベッドに入るときにひとつ明かりを切り替え、一冊絵本を読んだらまたもう少し暗い明かりに切り替えて、とだんだん照明のトーンを落としていきます。

バルセロナのナイトライフ

 そこでできるだけ「暗い照明」が必要になるので、クリスマスのツリーにつけるイルミネーションを部屋に置いたり、コンセントに差し込むと光る人形などいろいろ試してみて、現在はこの赤いキノコの照明がとても重宝しています。最初からこのキノコの照明だけでは暗すぎると感じるかもしれませんが、段階的に暗くしていくなら、この明るさ(暗さ)は絵本がかろうじて読めるぎりぎりの照度で、温かい幻想的な色も気に入っています。最後は子供たちが目をつぶっていても物語を楽しめるように、また途中で眠ってしまってもいいように、ちょっとまだ難しいけれど、文字ばかりの長めの物語を読み聞かせたりすることもあります。
 子供が出来てからはアクシデントが起きるといけないからという理由であまり日常的には使っていませんが、夜の部屋の照明としてキャンドルを使う人も決して少なくありません。「暗い照明」としてのろうそくはヨーロッパではまだまだ健在なのです。

スペイン王国
人口
約4702万人(2010年1月)
面積
約50.6万㎢(日本の約1.3倍)
首都
マドリード
宗教
キリスト教(約75%がカトリック教徒)
時間帯(バルセロナ)
UTC +1(夏時間は+2)

バルセロナ(人口約170万人)は、地中海貿易の拠点として栄えた、スペイン第二の都市。カタルーニャ州の州都です。19世紀後半から目覚しい経済発展を遂げ、今日ではスペイン一の商工業地域となっています。カタルーニャでは、「スペイン人である前にカタルーニャ人である」と言われるほど地方色が強く、地元同士の会話はカタルーニャ語も用いられ、表示や看板の多くはカタルーニャ語とスペイン語(カステヤーノ)で併記されています。1992年のオリンピック開催や強豪サッカークラブで日本でもお馴染みの街。古くから芸術活動が盛んで、ガウディに代表されるモデルニスム芸術誕生の地としても知られています。

プロフィール

坂本知子●スペイン在住14年目。早稲田大学工学部で建築を学び同大学院の修士課程を修了。文化庁派遣芸術家在外研修員として渡西し、2年間、建築家エンリック・ミラージェスの建築設計事務所EMBTに勤務。その後、出版社Actar Publishersで建築とデザインの書籍の編集、展覧会の企画製作などを手がける。2012年にグラフィックデザイナーの夫(David Lorente)と、ブックデザインとその周辺の業務を行う会社SPREADを設立。さらに活動の領域を広げている。「遊んであげない。一緒に遊ぼう!」をモットーに二人の男の子(6歳と3歳)を育児中。
http://www.chocolatmag.com/column/do-it-in-barcelona/
http://www.spread.eu.com/ja

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