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2020年賃貸市場総決算!10大トピックスを振り返る

市場動向

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2020年12月15日

2020年賃貸市場総決算!10大トピックスを振り返る

今年は、新型コロナウイルスにより世界が一変し、賃貸市場も一時は大きく低迷しました。ワクチン開発のニュースも届き出しましたが、まだまだ予断を許さない状況です。感染拡大防止と経済活動の両立を求めたウイズ・コロナの時代は、しばらく続きそうです。今年の賃貸市場におけるコロナの影響を中心に10のトピックスを振り返りたいと思います。

2020年賃貸市場10大トピックス
 1-<コロナ関連1>賃貸市場を直撃
 2-<コロナ関連2>家賃相場は横ばい、一部上昇で大きな影響はなし
 3-<コロナ関連3>新しい生活で生まれた新しい賃貸ニーズ
 4-<コロナ関連4>地価は下落基調も大幅な下落はなし
 5-<コロナ関連5>部屋探しもデジタルトランスフォーメーションの波
 6-<コロナ関連6>確定申告・相続税等、申告納税期限緩和
 7-民法改正(債権法改正)で賃貸借契約に変化
 8-「賃貸住宅管理適正化法」施行
 9-重要事項説明で「水害リスク情報」説明義務づけ
 10-自筆証書遺言書保管制度開始

<コロナ関連1>賃貸市場を直撃

新型コロナ感染者は、今年の3月後半から徐々に増加し、4月16日、緊急事態宣言は全都道府県に拡大されました。賃貸市場にとっては繁忙期を直撃したことになります。住み替えを控える人、会社の異動が中止になる人、また大学の授業もいつから始まるか予定が立たず、人の流れは止まってしまいました。

緊急事態宣言は5月27日に解除され、6月からはそれまでの反動もあり、賃貸市場の需要は徐々に戻ってきたようです。ただし、まだ経済全体の回復は見通せていません。賃貸仲介の現場でも、まだ賃貸市場の回復には時間がかかると見ているようです。
アットホームの調査でも、現場の景況感について7-9月期は回復したものの、まだ以前の水準には戻っていません。

■首都圏・近畿圏における直近1年間の業況の推移(賃貸)

※業況判断指数(業況DI)の算出方法
回答店舗による 5 段階の判断にそれぞれ下の点数を与え、これらの合計を全回答数で除して算出。DI=50 を境に、それよりも上なら「良い」、下なら「悪い」を意味する。 【良かった(100)、やや良かった(75)、前年並み(50)、やや悪かった(25)、悪かった(0)】


賃貸住宅のコロナ対策は、入居者の支援策などについて取り上げました。
賃貸住宅の新型コロナウイルス対策

<コロナ関連2>家賃相場は横ばい、一部上昇で大きな影響はなし

コロナ禍による家賃相場への影響が心配されていましたが、今のところ、大きな影響は出ていません。三大都市圏に限っては、上昇、または横ばいの傾向が見て取れます。
不動産情報サービス・アットホーム発表の10月最新データを見てみます。東京23区については、前月比では下落していますが、前年同月比で見ると、シングル向け以外のカップル、ファミリー、大型ファミリーは上昇しています。
愛知県名古屋市では全面積帯で前年同月比を上回っています。大阪府大阪市はシングル向きを除いたタイプで前年同月比を上回っています。

■東京23区-マンション平均家賃指数の推移

家賃相場については、賃貸市場の繁忙期(1月〜3月)と9月時点のものを取り上げました。
今春の家賃相場と新型コロナ・家賃支援策
コロナ禍の最新家賃動向を分析する

<コロナ関連3>新しい生活で生まれた新しい賃貸ニーズ

コロナ禍では「ニューノーマル/新しい生活様式」が話題になりました。大きく変化したのが在宅勤務の普及によるワークスタイルの変化です。また、外出を控えたことによる「すごもり消費」の増加も大きな変化です。
これにより住まいのニーズにも変化が見られるようになりました。一つは住む場所です。出社が減ったことから郊外や駅から遠くても広い部屋などに注目が集まっています。
そして、設備については、在宅勤務のためのワークスペースの確保、在宅時間の増加により趣味が楽しめる土間、ベランダ等、自宅で快適に過ごすためのニーズが高まっています。

●ワークスペースのある賃貸住宅
ワークスペースのある賃貸住宅

コロナ禍の賃貸住宅ニーズについては、バックナンバーでも紹介しています。
アフターコロナの賃貸住宅ニーズ
コロナ禍で借りて住みたい街に変化!?
コロナ禍での人気設備ランキングからニーズを探る

<コロナ関連4>地価は下落基調も大幅な下落はなし

今年7月1日時点の基準地価は、コロナ禍の影響が反映されたものとなりました。
三大都市圏の住宅地は7年ぶりに下落、商業地は名古屋圏を除いてプラスはキープしたものの、上昇幅が5.2%から0.7%に縮小しました。ただし、再開発などが進んでいる地域はまだ地価が上がっています。
この7年間地価は上昇トレンドにあり、実勢価格はそれを上回っていましたが、今回で実勢価格に近づいたともいわれています。

今年発表された路線価は、コロナの影響を受けていない1月1日を評価時点としたものでした。その後の動向が予測できなかったため、国税庁では「広範囲なエリアで概ね20%以上の地価下落が確認された場合には、路線価が地価を上回らないように、一定の補正率を乗じて路線価を減額する」としていました。しかし、それほどの下落はなかったため、補正はありませんでした。

今後の地価動向を見定めるのは難しいのですが、都心のオフィス賃料や店舗賃料の下落は、地価下落の要因となりそうです。
一方、「コロナ被害」と「経済被害」の視点から世界の国をコロナ対応の評価でランキングした調査(ニッセイ基礎研究所)では、日本は台湾、韓国、ニュージーランドに次いで4位です。以前から、海外投資家は日本の不動産を注目しています。今後も海外の投資マネーが日本の不動産に入ってくれば、地価は再び上昇し始めるかもしれません。

■基準地価の変動率推移

地価動向については、路線価と基準地価について取り上げました。
2020年「路線価」とコロナ禍における地価動向
2020年「基準地価」、コロナショックが地価直撃!

<コロナ関連5>部屋探しもデジタルトランスフォーメーションの波

リモート会議、オンライン商談など、非対面のニーズは部屋探しの現場でも求められています。接客もオンライン、内見も360度画像やスタッフによる現地からの中継、もしくは入居希望者だけが現地に行って内見するなど各社工夫をこらした対応が進んでいます。その後の契約もパソコン等で行うIT重説(重要事項説明)、契約書は郵送で済ませば、すべてが非対面で完結します。この流れは昨年から徐々に進展していたのですが、コロナ禍でさらに進んだようです。契約書も電子署名が進展すれば、データのやりとりだけですむでしょう。その他、仲介事業者の管理運営システムも含め、賃貸市場にもデジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せています。

<コロナ関連6>確定申告・相続税等、申告納税期限緩和

コロナ禍では、様々な支援策や優遇措置が施されましたが、昨年分の確定申告・相続等の申告納税についても期限が緩和されました。
確定申告の期限は1カ月伸び4月17日までとなりましたが、それ以降でも柔軟に確定申告書を受け付けることになりました。延長に際しても特別な申請は必要なく、申告書の右上の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載するだけです。
相続が発生した場合でも、このコロナ禍では相続人が集まって遺産分割協議をするのは困難です。相続の申告期限も特に決まりはなく、「やむを得ない理由のやんだ日から2カ月以内」となっています。慌てず最寄りの税務署へお問い合わせください。

7-民法改正(債権法改正)で賃貸借契約に変化

4月1日に民法(債権法)が改正されました。主な改正内容は次の通りです。
(1)原状回復や敷金に関する内容を明文化
国土交通省の「原状回復ガイドライン」の浸透により、すでに商習慣化されていますが、「入居者は原状回復義務を負うものの、通常損耗や経年変化については原状回復義務を負わない」旨が民法に明記されました。また、敷金については、家賃等を担保するものと定義されています。
(2)設備故障の際の家賃減額
自然災害などで設備が故障した場合、復旧に時間を要する場合があります。その間、使用できなくなった設備等の割合に応じて「当然に賃料は減額される」と明記されました。
(3)連帯保証人に極度額を設定
賃貸借契約で連帯保証人を付ける場合、「極度額(連帯保証人の責任限度額)」を明記することになりました。限度額の規定はありませんが、家賃の1年分から2年分が目安です。
ただし、近年では保証人ではなく家賃保証会社を利用するケースが増えていますので、影響はあまりないと思われます。

民法改正については、バックナンバーでも解説しています。
民法改正で変わる賃貸借契約

8-「賃貸住宅管理適正化法」施行

「賃貸管理適正化法」が12月15日より一部施行されます。
この法律は、近年増加する賃貸住宅の管理に関するトラブルに起因したものです。特にサブリースの家賃保証等の契約条件の誤認を原因とするトラブルが多発し社会問題となり、一部の悪質な業者から、オーナーや入居者を守るため整備されました。
主な内容は、「サブリース業者への規制」、「オーナーへの重要事項説明」、「管理業者の登録」、「賃貸不動産経営管理士等の専門家の設置」などが義務化されたことです。

賃貸管理適正化法については、バックナンバーでも解説しています。
賃貸住宅経営は「所有と経営の分離」へ」

9-重要事項説明で「水害リスク情報」の説明義務づけ

この数年、風水害による被害が後を絶ちません。今年も、「令和2年7月豪雨」では甚大な被害を及ぼしました。中でも被害の大きかった熊本県の人吉市では、ハザードマップで浸水の被害が予測されていたエリアでもありました。
近年、被害が多発していることも含め、国土交通省は、「不動産取引時に水害ハザードマップを使って対象物件のリスクを説明すること」を8月28日から義務化しました。賃貸住宅も対象です。これまで重要事項説明の項目には、土砂災害や津波の項目は入っていましたが、水害(洪水・雨水出水・高潮)のリスクは含まれていませんでした。
また、対象物件が浸水想定区域に該当していないことで、水害リスクがないと入居者等が誤認することのないよう配慮した説明をすることとしています。

風水害対策については、バックナンバーでも解説しています。
コロナ禍における賃貸経営の風水害対策

10-自筆証書遺言書保管制度開始

7月10日に法務局で「自筆証書遺言書」を保管する制度が始まりました。10月末時点で、9,211件の申請があります。1カ月平均約2,300件ペースで、利用者は堅調に推移しているようです。
自筆証書遺言は、これまで自宅や貸金庫等で保管する以外には、弁護士などに預けるか、遺言信託を利用するなどしか方法がありませんでした。
今回の保管制度では、改ざんや紛失のリスクがなくなる他、「検認が不要」や当初無かった「死亡時の通知」が加わり、メリットも増えました。今後も申請は増加しそうです。

相続法の改正については、バックナンバーでも解説しています。
相続が変わる!? 民法(相続法)改正のポイントは?

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