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2019年賃貸市場総決算!10大トピックスを振り返る

市場動向

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2019年12月17日

2019年賃貸市場総決算!10大トピックスを振り返る

今年も台風による水害が甚大な被害をもたらしました。賃貸住宅の防災対策について、改めて考えさせられる一年でした。また、消費増税が実施されましたが、不動産市場では大きな影響はありませんでした。しかしながら、不動産テックの台頭や東京オリンピック・パラリンピック2020などイベントを見据えた地価上昇など、賃貸市場を巡る環境は変化しています。今年の賃貸市場に関係する10のトピックスを振り返りたいと思います。

2019年賃貸市場10大トピックス
 1-水害多発 ~賃貸住宅の防災力が問われる~
 2-地価上昇続く ~相続対策の見直しが必要~
 3-貸家新設住宅着工数減少 ~新築物件供給減~
 4-家賃相場は微増、成約数は減少 ~ファミリーニーズ増!?~
 5-消費税10%スタート ~駆け込み需要は少ない~
 6-賃貸不動産経営管理士、累計6万人 ~長期安定経営に欠かせない管理~
 7-高齢者ニーズが台頭 ~人生100年時代の賃貸住宅~
 8-改正入管法施行、多拠点賃貸住宅登場 ~新しいニーズは定着するか?~
 9-電子申告の簡便化 ~青色申告では必須!?~
 10-賃貸借契約の電子契約化 ~不動産テックで変わる部屋探し~

1-水害多発 ~賃貸住宅の防災力が問われる~

今年は台風と大雨などの災害が多発し、全国に被害をもたらしました。台風19号では「流域型洪水」と呼ばれ、50を超える河川が氾濫。また、長期の停電にも見舞われました。「これまでにない」といった言葉は、この数年毎年聞かれ、水害に関しては毎年起こる災害として認識を新たにした方も多いと思います。加えて、やがてくるといわれている大地震への警戒も必要です。

猛威を振るう自然を避けることはできませんが、自然災害に備えることで「減災」は可能です。賃貸経営においても、災害への対策である防災力は長期安定経営を行う上では大変重要なポイントとなってきました。賃貸住宅に求められる防災力とは、「入居者の命と暮らしを守り、早期修復性で事業が継続できること」です。
また、度重なる災害に入居者の意識も変化し、防災力の高さも部屋選びの条件として、重要な選択肢の一つとなってきました。ヘーベルメゾンの入居者に「災害に対する強さ」がお部屋を決める上で決定要因の一つになったかを聞いたアンケートでは、「そう思う・ややそう思う」が77.8%もいました。

■賃貸住宅に求められる防災力 ■「災害に対する強さ」がお部屋を決める上で決定要因の一つになりましたか?

賃貸住宅の防災力については、バックナンバーでも解説しています。
三大災害に耐える賃貸住宅とは?
防災力で賃貸住宅の付加価値を高める
知っておきたい!ペットの防災対策

2-地価上昇続く ~相続対策の見直しが必要~

地価の上昇トレンドは今年になっても衰えず、全国に広がりました。7月1日地点の基準地価では、三大都市圏は7年連続の上昇です。もちろん、それに合わせて相続税・贈与税の土地評価の算定基準となる路線価も上昇しています。主要都府県別に見ても、東京圏、大阪圏では6年連続の上昇、愛知県は7年連続の上昇です。これは商業地だけではなく住宅地も上昇を続けています。

さすがに7年連続して上昇していれば、土地評価も大きく上昇していることが予想されます。アパート・土地オーナーにとって路線価の上昇は、土地評価額の上昇というプラスの面もありますが、将来の相続税の負担増加というマイナス面もあります。相続対策を含めて資産価値を見直した方が良いでしょう。

■貸家着工数および前年同月比(首都圏)

地価動向については、バックナンバーでも解説しています。
地価上昇で、見直しが迫られる相続対策
上昇トレンドが全国に広がる!『2019年公示地価』
2019年『路線価』、東京圏・大阪圏で6年連続上昇!
2019年『基準地価』、三大都市圏7年連続上昇!

3-貸家新設住宅着工数減少 ~新築物件供給減~

賃貸市場の景況感を見る指標の一つに貸家新設住宅の着工数があります。国土交通省発表の2018年の貸家着工数はマイナス5.5%で7年ぶりの減少でした。減少傾向は、2019年になっても続き、10月の貸家新設住宅着工数は、前年同月比でマイナス16.8%、14カ月連続の減少です。「民間資金による貸家が減少し、公的資金による貸家も減少したため」とあります。地方銀行や不動産業者による不正融資問題、違法建築問題が発覚し、金融機関が融資を厳格化したことが響いています。

不正融資問題の影響で、土地オーナーが新たに土地活用を計画する際も、多少融資が厳しくなっているかもしれませんが、金融機関にとって土地オーナーによる土地活用は、担保力もあり事業としても安定していますので、優良案件だと思われます。

賃貸市場では新築物件が少なくなり、新築の希少性が高まっていると聞きます。都市部においては、人口も増えていますので、需給バランスがやや売り手市場になっているかもしれません。

■主要都府県の標準宅地の対前年変動率の平均値推移

4-家賃相場は微増、成約数は減少 ~ファミリーニーズ増!?~

今年の家賃相場で顕著だったのは、まず成約数が減少していることです。首都圏の月ごとの成約数は、2018年12月以来、前年同月比で減少を続けています。要因は、先ほども触れましたが、着工数が減少し新築が供給されなかったこと。そして、住み替えが進まず契約を更新する入居者が増えたことです。分譲マンション価格が高止まりし、ファミリー層の持ち家への買い控えが増えたことが要因の一つでしょう。

この成約数の減少は、家賃相場にどんな影響をもたらしているのでしょうか? 
家賃相場のデータを見ると、繁忙期の今春は全体的に微増、横ばいでした。この10年間の家賃相場の推移を見ても、アベノミクスあたりから家賃は回復し、今では10年前の水準を超えています。
これは、更新や新築減で供給数全体は減ったものの、客足は衰えずニーズが増えていることが要因のようです。若干、売り手市場になり、エリアによっては入居者入れ替えの際に家賃を上げたという例もあります。

持ち家を買い控えているファミリー層に注目してみると、世代としては30代半ばから40代半ばで、いわゆる「就職氷河期世代」です。景気の低迷する時代を駆け抜けてきたこともあり、消費行動は手堅いといわれています。シェアリングエコノミーのブームに見られるように、所有にこだわらない志向を持っています。つまり、住まいも賃貸派が今後は増えることが予想されます。ファミリー、新婚ニーズは、今後も賃貸住宅の大きなニーズに成長する可能性があります。

■1LDK〜2DKの家賃相場の推移(東京圏)

家賃相場については、バックナンバーでも解説しています。
2019年今春の家賃動向!成約数は下落するも家賃は上昇
賃貸市場動向に変化!? 家賃微増、成約数減少が意味するものは?
賃貸派増加で求められる賃貸住宅とは?

5-消費税10%スタート ~駆け込み需要は少ない~

2019年10月、消費税10%がスタートしました。軽減税率導入、ポイント還元などで、小売りでの混乱は避けられませんでした。駆け込み需要も一部あったものの、前回2014年の増税前ほどではありませんでした。

住宅購入については、税制の優遇措置がとられたことで、大きな駆け込み需要はありませんでした。賃貸住宅については、家賃は非課税ですが、賃貸住宅の建築費には消費税がかかります。賃貸住宅の建築については、税制の優遇措置もないため、駆け込み需要があると予測されていましたが、こちらも大きな動きはなかったようです。優遇措置終了後の動向が気になるところです。

6-賃貸不動産経営管理士、累計6万人 ~長期安定経営に欠かせない管理~

賃貸不動産経営管理士とは、「主に賃貸アパートやマンションなど賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を持った専門家」です。昨年度まで、賃貸不動産経営管理士は累計で6万人を超えています。また、11月に行われた試験では過去最高の2万3,605人が受験するなど、注目度は高まり、国家資格化へ向けての準備も進められています。

入居者管理や建物管理については、いかに適正に維持・管理するかで長期安定経営の成否が問われてきます。また、最近では民泊などの新しい賃貸住宅の形態が出てきたり、来年4月に施行される改正民法(債権法)により賃貸借契約書の内容も変わってくるなど、賃貸管理の専門性が高まっています。管理業者の管理能力をオーナーとして見極める必要があるでしょう。

賃貸管理については、バックナンバーでも解説しています。
賃貸経営を成功に導く!今どきの賃貸管理
空室待ちが出るコミュニティ賃貸住宅の『管理』とは!?

7-高齢者ニーズが台頭 ~人生100年時代の賃貸住宅~

人生100年時代、高齢者にとっては住まいも大きな問題です。高齢者の住まいは、これまで自宅か介護施設の二択しかありませんでした。自宅も高齢者にとっては庭の手入れや管理が煩わしかったり、段差などの安全性に不安を感じることがあるのも事実、かといって介護施設にいくほどではありません。

75歳以上の約7割は自立した元気な高齢者ですが、そんな元気な高齢者が手軽に安心して住める賃貸住宅が注目されています。バリアフリー仕様はもちろんのこと、将来への健康不安を解消する見守りサービスなどのサポートも充実しています。今後も、賃貸市場にとって高齢者は大きなニーズとして高まっていくでしょう。

■75歳以上の高齢者の自立度



高齢者向け賃貸住宅については、バックナンバーでも解説しています。
入居者属性と実例に見るシニア向け賃貸住宅の人気の理由
アクティブシニアのライフスタイルに応える賃貸住宅

8-改正入管法施行、多拠点賃貸住宅登場 ~新しいニーズは定着するか?~

今年、新しい賃貸ニーズの動きがありました。一つは改正入管法の施行により、多くの外国人労働者の受け入れが始まりました。今後も外国人は、留学生を含め増えていくことが予想され、賃貸住宅の大きなニーズとなります。日本賃貸住宅管理協会では、「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン・部屋探しのガイドブック」を作成し、入居促進をしています。言葉や生活習慣の違いがありますので、管理面での対応が必要ですが注目すべきニーズです。

もう一つは、定額制の居住サービスで、多拠点賃貸ともいわれています。これは、定額制で全国に点在する賃貸住宅に短期間に住み替えられるというサービスです。都心と田舎の二拠点生活や全国を移動しながら仕事や生活をするといったニーズに応えたもので、まだ特別なケースだとは思いますが、今後の動向が注目されます。

思い起こせば、かつてペット可や高齢者の賃貸住宅はニーズとして敬遠されていたのも事実です。しかし、専用の設備等が進化し、管理面も充実したことで、今では確かなニーズが形成されています。最近では、民泊やシェアハウスのニーズが台頭し、一定の市場規模を形成しています。ライフスタイルが多様化する中、新しいニーズには注目しておいた方がよいでしょう。

入居者ニーズについては、バックナンバーでも解説しています。
ライフスタイル別に賃貸住宅ニーズを探る

9-電子申告の簡便化 ~青色申告では必須!?~

今年から電子申告が簡便化されました。これまで、電子申告にはマイナンバーカードが必要でしたが、なくてもID・パスワードを取得すればできるようになりました。ID・パスワードの取得は、税務署の職員と対面による本人確認を行う必要があります。手間暇を考えると、この機会にマイナンバーカードを取得したほうがよいかもしれません。ID・パスワード方式は、暫定的な対応とのことです。今後、マイナンバーカードは、健康保険証の代わりになったり、ポイントが付与されたりと利用拡大が予定されています。

また、2020年分から電子申告または電子帳簿保存のいずれかをしていない場合、青色申告特別控除の上限が65万円から55万円になります。現在、青色申告特別控除65万円を受けている方は、今度の確定申告からチャレンジしてみるとよいでしょう。
国税庁のホームページで確定申告書を作成し、完成したデータを電子申告すれば完了です。国税庁のホームページでは動画も含め、解説が充実しています。そちらも、ぜひ参照してください。

10-賃貸借契約の電子契約化 ~不動産テックで変わる部屋探し~

賃貸借契約に関する電子契約の社会実験が10月から始まっています。
電子契約でのポイントは二つ。まず、重要事項説明。従来は宅地建物取引士による対面が義務づけられていた重要事項説明をテレビ電話などネット上で行うIT重説です。
もう一つは、賃貸借契約もネット上で完結してしまうというものです。契約に関しては契約書の署名捺印が必要なため送付のやりとりが必要でした。これを電子署名が施された契約書をメールやクラウド上からデジタル交付し、賃貸借契約を完結してしまおうというものです。
つまり、契約に関しては不動産会社に足を運ばなくても契約が完結できます。業者にとっても、業務の効率化が進みます。
さらに、最近はスマートフォンで鍵の施錠ができるスマートキーが普及し、内見も予約を入れて不動産会社の立ち会いなく自由にできるようになっています。そうなると、スマートフォン一つで、部屋探しから契約まで完結できるようになります。
これらの最新のテクノロジーと不動産を融合させた技術は不動産テックと呼ばれていますが、部屋探しのスタイルが変われば、入居者へのアピールの仕方も変わってくるかもしれません。

部屋探しについては、バックナンバーでも解説しています。
変わる部屋探しと賃貸住宅への満足度

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