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2018年賃貸市場総決算!10大トピックスを振り返る

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2018年12月18日

2018年賃貸市場総決算!10大トピックスを振り返る

2018年は大きな自然災害が相次ぎ、多大な被害をもたらしました。この影響を除けば、「景気は緩やかに回復しているとの認識に変わりはない」と政府は見解を示しています。国内の不動産業界を見ると、米中貿易摩擦などの景気後退リスクが海外にはあるものの、様々なイベントを控え地価上昇が続いていることもあり活況を呈しています。もちろん、賃貸市場にとっても様々な影響が考えられるでしょう。今年の賃貸市場に関係する10のトピックスを振り返りたいと思います。

2018年賃貸市場10大トピックス
 1-災害多発 〜賃貸住宅の防災ニーズ高まる〜
 2-消費税増税決定 〜2019年10月から10%に〜
 3-地価上昇トレンド続く 〜住宅地も上昇〜
 4-固定資産税評価替えの年 〜負担が増える〜
 5-賃貸市場、回復の兆し 〜家賃動向と入居率〜
 6-民法・相続法改正 〜相続が変わる!?〜
 7-小規模宅地の特例厳格化 〜賃貸住宅に3年しばり〜
 8-多様化する入居者ニーズ 〜コミュニティのある賃貸住宅が人気〜
 9-民泊新法施行 〜伸び悩み〜
 10-シェアハウス問題 〜不正発覚〜

1-災害多発 〜賃貸住宅の防災ニーズ高まる〜

1年の世相を表す「今年の漢字」として「災」が選ばれたように、今年は例年にも増して自然災害が猛威を振るいました。各地での地震に加え、台風や豪雨による被害が大きかったのが記憶に残ります。
「平成30年7月豪雨」では岡山県、広島県で大きな被害がありました。もともと雨の少ない瀬戸内海地方だっただけに、想定外の観測史上第一位の豪雨で、災害の予想も大変難しかったと思います。また9月の台風21号は阪神地方を直撃し、関西国際空港が水没・孤立するなどの被害が出ました。
賃貸オーナーも、あらためて賃貸住宅の防災に関しても考えさせられたのではないでしょうか。都市部では地震による火災の二次災害が懸念され、建物の不燃化促進のため建て替えに助成金を出すなど、行政も様々な施策を講じています。オーナーにとっても、防災・減災となる建物の維持管理に努めるほか、入居者への注意喚起などが必要になってきます。
また、「平成30年7月豪雨」の際は、民間賃貸住宅の空き部屋を「みなし仮設住宅」として有効活用していました。これも、オーナーとしては大きな社会貢献の一つだと思います。

災害については、バックナンバーでも解説しています。
防災・減災、賃貸住宅オーナー5つの心得
火災に耐える賃貸住宅とは-都市の不燃化を考える

2-消費税増税決定 〜2019年10月から10%に〜

これまで2回延期されてきた消費税10%への増税が2019年10月より実施されます。今回は、増税後の景気後退を避けるため軽減税率の導入や住宅ローン減税の拡充が行われます。

設備投資、リフォーム、大規模修繕、また新たな土地活用に関しては、大きな影響があります。特に、新たな土地活用で賃貸住宅を建築する場合は、建築請負契約の時期で消費税が8%か10%かの違いが出てきます。
原則は、「引渡し時」の税率で決まりますが、経過措置として2019年3月31日までに建築請負契約を交わしていれば、引渡しが10月1日以降でも消費税は8%です。
なお、2019年4月1日以降に追加工事などが発生した場合の「増額分」は10%となります。
引渡しが、10月1日以降になるような建築や大規模なリフォームは、早めに計画し2019年3月31日までに建築請負契約を済ませておくことをお勧めします。
既に経営を始めている方にとっては、事務所や店舗の家賃に消費税がかかりますが、居住用賃貸は非課税ですので、ほとんど影響はないでしょう。

■消費税増税の適用期限 建築請負契約の場合

消費税については、バックナンバーでも解説しています。
消費税増税で賃貸経営はどうなる!?

3-地価上昇トレンド続く 〜住宅地も上昇〜

地価の指標は、1月1日時点の「公示地価」「路線価」、7月1日時点の「基準地価」がありますが、どの指標を見ても上昇トレンドは衰えていません。
今年は商業地だけではなく、住宅地も三大都市圏を中心に上昇しました。直近の指標となる国土交通省の「地価LOOKレポート・平成30年第3四半期(H30.7.1〜H30.10.1)」でも主要都市の地価は緩やかな上昇基調が継続しています。上昇の主な要因は、以下の4点によるオフィス、店舗、ホテル、マンション等に対する投資が引き続き堅調なこととしています。
■空室率の低下、賃料の上昇等好調なオフィス市況
■再開発事業の進展により魅力的な空間・賑わいの創出
■訪日観光客の増加に対応した旺盛な店舗、ホテルの建設需要
■利便性の高い地域等での堅調なマンション需要

地価上昇は、上がり始めた頃からミニバブルと言われていましたが、今も上昇を続けています。首都圏では、東京五輪後の地価下落が懸念されていますが、2025年の大阪万博開催が決定したことで、関西圏の地価が今後、上昇基調を強めるかもしれません。
土地オーナーにとっては、地価の上昇は資産価値の向上になるので良いことなのですが、固定資産税や相続に関しては負担が増すことになります。今後の動向に注目したいところです。

■基準地価の変動率推移
出典:国土交通省・基準地価より

地価動向については、バックナンバーでも解説しています。
公示地価:「住宅地10年ぶりに上昇!「平成30年公示地価」
路線価:「平成30年「路線価」、主要都府県で5〜6年連続上昇!
基準地価:「平成30年「基準地価」、全用途平均が27年ぶりに上昇!

4-固定資産税評価替えの年 〜負担が増える〜

固定資産税は3年に一度、評価額が見直されますが、今年はその評価替えの年でした。今回の評価替えの基準となるのは2017年1月1日ですが、3年前の2014年と比べても地価は上昇しています。
東京区部全域で見ると2014年の公示地価は1㎡あたり504,800円、2017年は同549,100円で、44,300円の上昇です。区部の平均を上回る文京区では3年間で75,600円も上昇しました。単純計算すると200㎡の土地で1,512万円の上昇、330㎡では2,495万円もの上昇になります。

実際の固定資産税は公示地価の7割を目安とされ、急激に負担が増えないように調整措置がとられています。地価の上昇ほど、固定資産税の負担は急ではないと思いますが、地価が上がれば維持・管理費とでも言うべき固定資産税は上がります。特に都市部の土地に関しては、空き家、空きの多い駐車場、空室の多い老朽アパートなどは、固定資産税を含めて維持・管理コストがかかり、資産としては不良資産と言わざるをえません。

また、昨今問題になっているのが実家の問題です。子どもがみんな独立し、将来誰も実家を引き継ぐ予定がない場合、実家が空き家になるリスクがあるのです。その場合でも固定資産税は毎年かかってきますし、相続税も大きな負担を強いられます。対策としては、両親が元気な内に、相続評価を大きく減額できるアパート併用の自宅に建て替えるなどの土地活用などがあります。
まだまだ、地価の上昇トレンドは続くと思われます。将来へ向けての対策も考えなければなりません。

■アパート併用の自宅を建てた場合の小規模宅地等の特例の適用

固定資産税については、バックナンバーでも解説しています。
評価替えで固定資産税の負担が増える!?

5-賃貸市場、回復の兆し 〜家賃動向と入居率〜

家賃相場も地価上昇に合わせじわじわと回復し、全体傾向としてはリーマン・ショック前と同様の水準になりつつあります。2018年春の繁忙期でも、不動産情報サービスのアットホームの首都圏の家賃相場はアパート、マンション共に上昇しました。
直近では、住宅新報社の9月のデータがあります。東京圏ではマンションはどの間取りも5期連続の上昇となりました。微増ながらも上昇を続けています。ただし、長期入居が増え住み替えが少なくなったこともあり、成約件数は減少しているとのことです。

また、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の「日管協短観(2017年10月〜2018年3月期)」によりますと、関西圏の入居率が94.1%から96.4%と大きな伸びを示しました。首都圏は96.3%から95.5%と下がりましたが、高い入居率をキープしています。

■東京圏の賃貸マンション家賃推移 1LDK〜2LDK

家賃動向については、バックナンバーでも解説しています。
2018年春の家賃動向!地価上昇を受け市場回復は!?

6-民法・相続法改正 〜相続が変わる!?〜

相続に関する民法改正が成立しました。改正は約40年ぶりとのことです。
主な改正内容には次のようなものがあります。
■配偶者居住権の創設
配偶者居住権とは、配偶者が相続後も自宅に終身または一定期間、無償で使用することができる権利です。相続財産が自宅しかない場合など、法定相続通りに他の相続人に遺産分割を求められると配偶者は困ってしまいます。そこで、自宅に関しては「所有権」とは別に「配偶者居住権」を新設することで、配偶者が住まいや生活資金を確保しやすくなるようにしたものです。
■相続人ではない親族への寄与分に対して金銭要求が可能に
生前、被相続人の介護をしていた場合などの寄与分も相続においては時に問題になっていました。今回の改正では、法定相続人ではない親族、例えば息子の嫁が介護をしていた場合、法定相続人ではない嫁も特別寄与分として金銭を要求できるようになりました。
■自筆証書遺言の簡素化
自筆証書遺言の目録に関しては、パソコンでの作成が可能になり、法務局での保管も可能になります。ただし、自筆証書遺言は不備が指摘されるケースが多く、公正証書遺言での遺言を勧める専門家が多いようです。

今回の改正は、超高齢社会で起きうる問題に対するセーフティーネットの意味合いが強く、特に対策を講じる必要はなさそうです。相続の基本対策は、遺言や家族信託などがまず基本になります。

相続については、バックナンバーでも解説しています。
相続が変わる!? 民法(相続法)改正のポイントは?
公正証書遺言の作り方 〜最も確実に意思を遺す相続対策〜
相続新時代! 4つのリスクとその対策
相続税の課税対象者が増加傾向!今後も増加するのか?

7-小規模宅地の特例厳格化 〜賃貸住宅に3年しばり〜

2018年度の税制改正では、土地オーナーにとっては注目すべき改正が行われました。小規模宅地等の特例の要件に、二つの要件が追加され厳格化されたことです。
一つは、同居していない親族、例えば独立した子どもでも相続開始前3年以内に、本人または配偶者の持ち家ではなく賃貸住宅に住んでいれば適用されるという要件です。しかし、この要件を利用するため、便宜的に持ち家を贈与するなどして、持ち家はないように見せかけるケースが増えていました。
そこで、適用要件に、相続開始前3年以内に3親等内の親族等が所有する家に居住したことがある場合、相続開始時に持ち家を過去に所有していたことがある場合は、対象から除外されることになりました。

もう一つが賃貸住宅の土地の要件です。
小規模宅地等の特例が自宅で適用できない場合などは、賃貸住宅の土地に適用させることで大きな相続税の節税効果が生まれます。しかし、これも不正に適用されるケースが増えたために、3年間のしばりが設けられました。
相続開始前3年以内に賃貸経営を開始した土地は、この特例では除外されることになったのです。言い換えると、賃貸住宅を建てても3年以内に相続が発生すると、この特例は適用できないということになります。ただし、3年以上前から事業的規模で賃貸経営をしているオーナーが賃貸住宅を建て替えたり、新築した場合を除きます。相続対策としては、早めの計画が必要になってきます。

税制改正については、バックナンバーでも解説しています。
平成30年度税制改正のポイント

8-多様化する入居者ニーズ 〜コミュニティのある賃貸住宅が人気〜

平成最後の時を迎え、"人生100年時代"や"働き方改革"など、時代のトレンドが人々のライフスタイルを大きく変えようとしています。住まいのニーズもライフスタイルの変化とともに多様化し、賃貸住宅においても入居者ターゲットは細分化してコンセプトを打ち出すことが必要になってきました。
今は、単に学生、社会人、ファミリーといった分け方だけではなく、年齢や家族構成、ライフスタイルごとにニーズを満たしたコンセプト賃貸住宅に人気が集まっています。
特に最近では、賃貸住宅でも「ゆるやかなコミュニティ」があることが人気のポイントです。ペット共生型賃貸住宅、子育て共感賃貸住宅、あんしん共有賃貸住宅、シニア向け安心賃貸住宅など、どれもキーワードは「ゆるやかなコミュニティ」です。賃貸住宅では、かつては敬遠されていたコミュニティですが、時代の変化とともにニーズの高まりを見せているのです。
その他、共働き夫婦二人の賃貸住宅や家族の成長に合わせて変化できる賃貸住宅など、特定のターゲットに絞ったコンセプト賃貸も人気です。

■入居者ターゲットの細分化

入居者ニーズについては、バックナンバーでも解説しています。
賃貸派増加で求められる賃貸住宅とは?
ライフスタイル別に賃貸住宅ニーズを探る
駅近よりも優先する「立地」の条件とは?
1人暮らしに最低限必要な賃貸住宅ニーズとは

9-民泊新法施行 〜伸び悩み〜

今年6月に民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行されました。11月30日時点での届け出件数は12,268件(うち受理済みは11,018件、うち事業廃止は222件)とのことです(観光庁発表)。想定よりも伸び悩んでいるという状況のようですが、その要因は煩雑な手続きや自治体による条令があるようです。
例えば、京都市は民泊施設の800メートル以内に管理者を駐在させ、住居専用地域は1〜3月の60日間しか営業できません。また、世田谷区では住居専用地域での営業は土日祝日のみで平日はできないなどの条例があります。
民泊は、まだまだ本格稼働にはいたっていませんが、民泊事業に参入する企業は不動産業界以外からも後を絶ちません。それだけ将来の見通しについては大きな期待が寄せられているということです。今後の動向に注目です。

10-シェアハウス問題 〜不正発覚〜

シェアハウス問題は、不動産業界に大きな衝撃を与えました。シェアハウス投資に際して、銀行や販売会社、仲介業者による不正融資が発覚したのです。投資家の預金残高の水増し、多額の融資を得るための販売価格の水増しなどです。
ここで、被害に遭った人の多くは、いわゆるサラリーマン大家さんです。
賃貸住宅への個人投資家は大きく二つの投資家に分けることができます。サラリーマン大家さんと土地オーナーです。サラリーマン大家さんの場合は土地がありませんので、土地込みで1棟まるまる購入して賃貸経営をはじめることになります。しかし、もともと資産のないサラリーマンにとっては大きなリスクを伴います。しかも本来なら借りることのできない多額の融資を不正によって借りられるようにしたのでは無理があります。問題となったシェアハウスの商品自体も専門家から見れば決してクオリティーが高いとは言えない商品でした。

不動産投資は、ミドルリスク・ミドルリターンと言われ、中長期にわたって安定したリターンが得られます。しかし、ニーズに基づいた確かな事業計画、長期にわたり高いクオリティーを維持できる賃貸住宅、そして適切な維持管理があってこその話であることは言うまでもありません。土地オーナーも同様で、賃貸経営については信頼できる会社に依頼し、綿密に計画したいものです。

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