骨粗鬆症Q&A 原宿リハビリテーション病院 名誉院長 林 泰史 先生

カルシウムについて

カルシウムを効果的に摂る方法を教えてください 骨粗鬆症の人はカルシウムを1日に700~800mg摂ることが推奨されています。カルシウムだけでなくバランスよく栄養を摂れる一汁三菜を基本にカルシウムの多い食品を意識して取り入れましょう。

背景
(神奈川県:66歳女性)骨粗鬆症の予防をしようと思っています。カルシウムが不足すると骨量が減ると聞きましたが、食が細く、牛乳・乳製品も苦手なので、食事でカルシウムをたくさん摂ることはできません。カルシウム剤でも効果はあるのでしょうか。また、カルシウムは1日のうちでいつ摂ると良いのでしょうか。毎日摂り続けないといけないのでしょうか。

食べ物からでもカルシウム剤でも、カルシウム源としては同じですので、骨粗鬆症予防に役立ちます。食べ物中のものでも、また薬の中に含まれているものでも、カルシウムのほとんどは炭酸やリン酸などと固く結合した物質でできているため、まず胃酸で溶かされないと体内では吸収されません。

食べ物の方がカルシウムの吸収に役立つ物質を含むうえに、他の微量なミネラルやビタミンも一緒に摂れますのでお勧めですが、どうしても食が細い場合にはカルシウム剤も効果があります。
人間の体は、血液中のカルシウム濃度を常に一定に保つよう調節する仕組みが働いています。このためカルシウムは摂り貯めがききませんので、毎日、摂り続けることが大切です。

人間の体を作っている約60兆個の細胞は血液中のカルシウムを使って活動しています。寝ている間でも全身の細胞はカルシウムを必要とするため、食べ物や飲み物を口にしない就寝中に血液中のカルシウム濃度が下がらないように、骨を溶かして血液にカルシウムを送り込もうとする作用が強まります。これが骨を弱くする原因の1つとなりますので、毎日夕食時にカルシウムをたっぷりと摂り、血液中のカルシウムの量が十分に保たれるようにすることも大切です。

ひと工夫でカルシウムアップ

カルシウムが含まれた健康食品でも効果があるのですか 健康食品のカルシウムも骨量を増やす効果はありますが頼り過ぎないようにしましょう。あくまでも食事からカルシウムを摂ることを優先して、不足分を健康食品で補いましょう。

背景
(神奈川県:51歳女性)骨粗鬆症の予防や治療には、牛乳など、カルシウムを多く含む食品が良いと聞きましたが、乳製品を摂るとお腹をこわしやすいため、悩んでいます。テレビなどで「カルシウム配合」といった食品を宣伝していますが、こういった食品でも効果があるのでしょうか。

カルシウムを含んだ健康食品でも、薬と同じ効果があります。カルシウムは、酸素やナトリウムと同様に、海水や土などに含まれている元素です。カルシウムを含んだ健康食品の多くは、海草や貝殻、真珠などを原料とし、水溶液に混ぜて飲みやすくしたり、粉末を生クリームなどに混ぜて食べやすくしたものです。

湿気や熱によって簡単に壊れてしまうビタミンCや多くの医薬品とは異なり、カルシウムは熱によって変化しないという性質があるため、健康食品が作られる過程でカルシウムが変化したり、壊れて減少することはほとんどありません。従って、規定量の健康食品を摂れば、骨を強くする効果は得られるでしょう。

医薬品は、1錠に含まれる薬品の含有量や、溶解する時間、効果などについて、国の厳しい基準を満たしたものしか販売することはできませんので、薬の専門知識がなくても、安心して使うことができます。健康食品も、ほとんどは薬に劣らない品質管理がされていますので、カルシウム剤については安心して使ってください。

ただ、例えば1日のカルシウム摂取量を200~400mg増やしたい場合、牛乳で補えば100円以内で収まります。高価な健康食品を買わなくても、小魚・豆類などの食品を摂っていれば、カルシウムとともに他の栄養素もたっぷりと補給することができます。
食品別カルシウム一覧

若い女性のダイエットは、将来、骨への影響はあるでしょうか 骨量は成長とともに増え続けますが、20歳ころが骨量のピークになります。若い女性が過度なダイエットにより十分なカルシウム摂取ができないと、将来、骨粗鬆症になるリスクは高くなります。若い頃に最大骨量を高くし、下げない努力が大切です。

英語の「ダイエット」は、食事そのものを指しますが、日本語で「ダイエット」というと食事制限の意味になります。食事で摂るカロリーが、消費するカロリーよりも多くなりますと、余分なカロリーが脂肪として体内にたまって肥満になります。

そこで、食事全体のカロリーを減らして体重を減少させるのがいわゆるダイエットで、中高年で、肥満や糖尿病の人には正しい医学的な治療法です。ポイントは、必要な栄養分は十分に摂りながら、脂肪や糖分など、カロリーの高い食物を減らしていくことです。

若い女性でも、明らかに肥満の人は食事制限で体重を減らすことが必要ですが、あまり太っていないのに、美容上の理由からダイエットをすることはおすすめできません。若い頃にカルシウムを十分に摂り、「ピークボーン(最大骨量)」を高めて骨粗鬆症にならないようにすることが大切です。カロリーを制限することで、カルシウムの摂取まで減らして将来骨折を招かないために、慎重にダイエットをしてください。
骨粗鬆症の原因について

TOPへ戻る