骨粗鬆症Q&A 原宿リハビリテーション病院 名誉院長 林 泰史 先生

原因について

母親は腰が曲がっています。骨粗鬆症は遺伝するのでしょうか 骨粗鬆症は弱く遺伝しますが、その影響は大きくありませんので、早いうちから予防に取り組み、骨粗鬆症にならないようにしましょう。

背景
(北海道:39歳女性)検診で骨量を測ったところ、骨量がかなり少なく、60歳代だと言われてショックを受けました。母は80歳になりますが、背中が曲がり、骨粗鬆症の治療を受けています。骨量が少ないのは遺伝でしょうか。私も骨粗鬆症になる運命なのでしょうか。

骨粗鬆症は弱く遺伝しますが、それほど遺伝の影響力は強くありません。日常生活の過ごし方で十分に克服できますので、今から生活習慣を見直せば、骨粗鬆症になる可能性は低くなります。

39歳で60歳代の骨と言われたということは、骨粗鬆症ではないものの、それに近い状態ということでしょう。骨量検査を受けた20代後半~40代前半の女性の数%に骨量が非常に低いケースが見られたという報告もあります。そのような場合は、検診を受けたところで精密検査のため医療機関を紹介されたり、日常生活の指導が行われたりします。

20代~60代の女性にとって、骨量検診は、将来、骨粗鬆症になる可能性があるかどうかを知るために役立ちます。検診はショックを与えるためではなく、今のうちから骨を強くして、生き生きとした人生を送るための“お知らせ”なのです。

80歳の女性であれば70%近くは骨粗鬆症になりますので、お母さまの骨粗鬆症が遺伝して娘さまに影響することについてはあまり心配する必要はないでしょう。
骨粗鬆症の原因について

遺伝によって骨量が低くなっている人でも、食事や運動などの生活習慣を改善することにより、骨量は増えることがわかっています。若い年齢で骨量が低いとわかったことは、生活改善のチャンスを示されたと捉えて、がんばってください。骨量について心配な場合は整形外科などを受診して医師に相談するとよいでしょう。

腰部に激痛があり、脊椎骨粗鬆症、腰椎圧迫骨折と診断されました(男性) 骨粗鬆症は高齢者や閉経後の女性に多く見られます。男性の場合は、骨粗鬆症を引き起こしている別の病気がないか診てもらいましょう。

背景
(新潟県:79歳男性)自宅で花の手入れをしている時、腰に激痛を感じて入院し、脊椎(せきつい)骨粗鬆症、第1腰椎(ようつい)圧迫骨折と診断されました。退院後、ある大雪の朝にコルセットを着用し忘れて雪落としをし、腰椎に激痛があり再び入院しました。コルセット、腰痛体操、軽い散歩は続けているのですが、このまま進行は続くのでしょうか。薬などの治療は受けた方が良いのでしょうか。

診断内容から、骨量が減っているのは間違いないと思われます。骨粗鬆症は、高齢者や閉経以後の女性に多くみられますが、男性の場合は80歳以上の高齢者や糖尿病など何らかの病気に伴って起こることが多いため、骨粗鬆症を引き起こしている病気がないかよく調べていただく必要があります。

原因となる病気がある場合は、それを治療すれば骨量も改善されることがありますので、そちらの病気の治療が優先です。特に病気がない場合は79歳にもなると病気を伴っていない男性でも骨粗鬆症にかかる人が増えますので、医師と相談のうえ、骨粗鬆症の治療をすると良いでしょう。

骨量は、女性は閉経期(50歳代)で急激に減少しますが、一定の年齢に達すると、男性・女性ともにそれほど大きく減少しないといわれています。従って、今後はあまり心配せず、今まで続けてきた腰痛体操や軽い散歩を持続すると良いでしょう。ただし、コルセットを長期間装着しますと、逆に腰の筋肉を弱めますので、腰痛が軽くなっているようでしたら、力仕事をする時以外は少しずつコルセットを外すようにしてみましょう。

また、高齢者が太ももの付け根を骨折しますと、要介護になる恐れがあります。転ばないよう十分気をつけ、日頃から適度な運動(散歩、軽い体操など)を行い、足腰を鍛えておくよう心がけましょう。

関節リウマチでステロイド剤を服用していますが、大丈夫ですか ステロイドの副作用の中で頻度が高いのは、ステロイド性骨粗鬆症とそれに伴う骨折です。骨粗鬆症の予防および治療を積極的に行うことが望まれます。

背景
(埼玉県:39歳女性)昨年、関節リウマチと診断され、ステロイド剤を毎日服用していますが、骨粗鬆症の原因になると聞きました。カルシウムをたくさん摂ろうとしているのですが、仕事柄、外食が多く、なかなか改善できません。将来、骨粗鬆症になるのでしょうか。

ステロイド剤を服用している人は骨密度が比較的高い人でも骨折することがあり、1日5mgの内服でも骨粗鬆症の予防や治療が必要であることがわかり、2004年にステロイドホルモン内服による骨粗鬆症の管理と治療のガイドラインが作成されました。

39歳と若く、腰や背中が丸くなっていたりせず痛みがなく、骨折の経験がないことなどから、骨はまだ弱くなっていないかもしれません。しかし、3カ月以上にわたって、ステロイド剤を毎日内服していますので、骨が弱くなっていないかどうか、検査を受けた方が良いでしょう。

自分では気がつかない腰や背中の骨の変形があったり、平均的な骨密度より20%以上減少している場合はもちろん、そのような症状や検査値がなくても、日常生活の改善は不可欠ですし、場合によっては骨を強くする薬などによる治療が必要です。

通勤時間や休日を利用して体を動かしたり、外食が多ければ、牛乳・乳製品を追加したりサプリメントでカルシウムを摂るなど、生活習慣を工夫して骨が弱くなるのを防ぎましょう

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