確定申告をしなければいけない人とは?
アパート経営により所得が発生すると、所得税を納税しなければなりません。その納税方法は、納税者が自ら申告する申告納税制度(確定申告)が採用されています。
つまり、所得税の計算を行い所得税が発生する場合は、必ず確定申告を行い納税しなければならないのです。
ただし、給与所得があるサラリーマンの場合は、アパート経営による年間の所得が20万円以下の場合は確定申告をしなくてもよいことになっています。
アパート経営を始めた当初は、必要経費が多いため手取り収入があっても帳簿上赤字になることがあります。
この場合は、確定申告をすることにより、損益通算といって給与所得と不動産所得(アパート経営の所得)とを相殺できます。
つまり、不動産所得のマイナス分を給与所得と合算して、その分の税金の還付を受けることができます。これも、アパート経営の節税メリットの一つです。
収入と所得はどう違う?
一番最初に理解しておきたいのが、「収入」と「所得」の違いです。
「収入」とは、いわば売上のことで、アパート経営でいうと家賃、共益費、礼金、敷金・保証金のうち返還する必要のないもの、更新料などが挙げられます。また、最近普及が進む太陽光発電による売電収入も売上として計上します。
「所得」とは、収入から必要経費を差し引いたものです。所得は税務上10種類に分類されていて、不動産所得、事業所得、給与所得などがあります。これらの所得をそれぞれ求め、全ての所得を合計した総所得額に対して課税されます。
アパート経営の必要経費とは?
アパート経営に要した費用は、少額でも全て必要経費になります。代表的なものには、下記のようなものがあります。
- 費 目
- ポイント
- 借入金利子
- 建物・設備の取得に要したローンの利息。アパート経営では、大きな必要経費の一つ
- 減価償却費
- 建物・設備の減価償却分を毎年、必要経費として計上する
- 租税公課
- 租税とは税金、公課とは例えば組合費などの公の費用のこと。初年度に発生する登録免許税、不動産取得税、印紙税の他、固定資産税、事業税も必要経費。所得税や住民税、相続税は必要経費にはならない
- 修繕費
- 建物や設備の修理代金、入居者の入れ替え時などに発生するメンテナンス費用
- 損害保険料
- 火災保険、地震保険などの掛け金で当年分
- 委託管理費
- 不動産会社へ支払う管理費
- 手数料
- 不動産会社への仲介手数料
- 水道光熱費
- 共用部分の水道光熱費
- 立ち退き料
- 老朽アパートの建て替えで発生した、立ち退き料や建物の取り壊し費用も必要経費。なお、自宅建て替えの場合の費用は、必要経費にはならない
- その他
- ローン借り換えに要する諸費用、税理士報酬、弁護士報酬、通信費、消耗品費など
青色申告と白色申告の違い
確定申告には、青色申告と白色申告があります。どちらも記帳の作成と保存の義務があり、その点で労力はさほど変わりません。
青色申告には、下記のような節税のためのさまざまな優遇措置があります。特に事業的規模を満たしていれば、そのメリットは大きく広がります。
事業的規模とは、おおむね5棟または10室の経営規模です。
また、記帳といっても、アパート経営の場合は、小売業のような事業に比べとてもシンプルですし、会計ソフトがあれば専門的な税務知識がなくても帳簿作成は簡単です。大きな節税効果が望める青色申告が有利です。
■青色申告と白色申告のメリットの違い
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青色申告 |
白色申告 |
特別控除 |
複式簿記の採用で65万円の特別控除が必要経費に計上できる(事業的規模の場合)※ |
なし |
専従者給与 |
青色専従者給与として、全額必要経費に計上できる(事業的規模の場合) |
配偶者は86万円、それ以外は50万円まで必要経費に計上できる |
損失の繰越 |
発生した損失を3年間繰り越すことができる。また、前年に繰り戻して税金の還付を受けることもできる |
不可 |
※表は左右にスクロールします。
※2020年分より電子申告等の要件を満たさない場合は55万円
減価償却とは?
アパート経営には、支出を伴わない必要経費があります。その一つが、アパート経営で大きな必要経費となる減価償却費です。
初めて確定申告を行うオーナーにとっては、この減価償却という概念が非常に分かりづらいかと思います。
例えばアパートを建築した場合、その費用については、取得した年に全額を必要経費にすることはできません。一定の年数を通して毎年、価値が目減りした分だけを必要経費として計上していきます。それが減価償却です。
一定の年数とは、法定耐用年数といって、資産ごとに定められており、建物の場合は構造などによって違います。
減価償却費の計算方法には定額法と定率法があります。建物、附属設備、構造物(アプローチ、植栽など)はすべて定額法で計算します。それぞれ耐用年数によって、償却率が定められていますので、取得価額に定額法の償却率を掛けて算出します。
具体的な計算方法は実務編で解説します。
■減価償却のイメージ(定額法)
毎年、価値が減少した分を減価償却費として必要経費に計上