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アパート経営の基礎知識:建築計画編

アパートの建築に関する法規制やエリア・入居者ニーズを満たしたプランニングの考え方について解説します

  • ・どんなアパートが建てられるのか?
  • ・付加価値の高いプランニングとは?
どんなアパートが建てられるのか?

この土地にはどんなアパートが建てられるのか? アパートの建築に関しては、さまざまな法律の規制があります。
専用住宅は一般建築とするのに対し、アパートは共同住宅・長屋住宅に分類され、特殊建築物とされています。

このため、火災時の避難や消火活動、延焼防止関連の法規制などが厳しくなっています。

■用途地域

まず、都市計画法により、計画的な街づくりのための規制があります。住居、商業、工業など大枠の土地利用を定めていて、土地利用の目的から12の用途地域に分けられています。

用途地域の規制内容(住居系のみ抜粋。他に商業系、工業系がある)
第1種低層住居専用地域
用途が住宅地に特化している場所で低層住宅の良好な環境を守るための地域。ただし、床面積50㎡以下かつ建築物の延床面積の2分の1未満の店舗や事務所との併用住宅などは建てられる
第2種低層住居専用地域
主に低層住宅の良好な環境を守るための地域。コンビニエンスストアや喫茶店などの店舗は建てられるが、店舗の場合、3階以上あるいは床面積150㎡超となってはならない
第1種中高層住居専用地域
マンションなどの中高層住宅の良好な環境を守るための地域。病院などの他、床面積500㎡以下なら銀行の支店や物販の店などを建てられる
第2種中高層住居専用地域
主に中高層住宅の良好な環境を守るための地域。住居の他、病院や大学、1500㎡までの店舗や事務所が建てられる
第1種住居地域
住居の環境を守るための地域。店舗、ゴルフ練習場、ホテル、事務所などが建てられるが、3000㎡を超えてはならない
第2種住居地域
住居と商業施設が共存しながら、主に住宅の環境を守るための地域。カラオケボックスの他、3000㎡以上の事務所、ボーリング場なども建てられる
準住居地域
道路の沿線が主な対象。住居の環境を守るための地域だが、客席が200㎡未満の劇場や映画館、300㎡を超える規模の駐車場なども可能

※住宅や共同住宅は、工業専用地域には建築ができません。

■建築基準法

次に、建物を建てる時の細かな規制を定めた建築基準法があります。

●建物の大きさに関する規制
用途地域ごとに敷地面積に対する以下の割合が定められています。

「建ぺい率」:
敷地面積に対する建築面積の割合
「容積率」:
敷地面積に対する建築の延床面積の割合

例えば建ぺい率40%、容積率80%の地域で敷地面積が200㎡の場合は、建築面積80㎡、延床面積で160㎡の建物が建てられることになります。
しかし、実際には敷地が接する道路の幅や角地による規制の緩和など、土地の条件によって規制が異なることもあります。

●道路に関する規制

「接道義務」:
建物を建てる敷地は、原則として4m幅以上の道路に2m以上接する義務があります。
「セットバック」:
現在、敷地が接している道路の幅が4m以上ない場合は、再建築時には両側が道路の中心から2m後退したラインを道路と敷地の境界線とみなし、その内側には建物などを建てられません。反対側が水路や線路となっている場合は、反対側の道路境界ラインから4m後退したラインが道路と敷地の境界ラインとなります。

●高さに関する規制

「斜線制限」:
近隣建物への日照、採光、通風などの影響を制限するもの。北側斜線制限、道路斜線制限などがあります。
「日影規制」:
一定の高さを超える建物を建築する際、隣地にできる影の時間を制限するものです。

●その他の規制
その他に、準防火・防火地域では建物を準耐火および耐火構造にしなければならないこと、外廊下の形の構造や避難通路などについても建物の規模に応じた規制などがあります。

まずはご自分の土地について、どんな建物が建てられるのか、建築の専門家に調べてもらうことをお勧めします。

■自治体条例

用途地域や建築基準法の他に、気を付けなければならないのが、各自治体が定めている条例や指導要綱です。

例えば豊島区では、総戸数が9戸以上で1戸30㎡未満のアパート建築には、1戸あたり50万円の税金が課せられる「狭小住戸集合住宅税」があります。
この他、東京23区のそれぞれの区でも単身世帯のアパート建築に、なんらかの条例や指導要綱が定められています。

逆に、規制だけではなく、防火性・耐震性向上のために木造アパートや古いアパートの建て替えには助成金を出す自治体もあります。

付加価値の高いプランニングとは?

どんな間取りにするのか、どんな設備・仕様にするのか、建物の外観・外構はどうするのかなどのプランニングについては、経営環境編でも解説したとおり、エリアや入居者のニーズを反映し、いかに差別化を図っていくかがポイントとなります。

●差別化のポイント
(1)市場ニーズに基づいたプランにする
同じ単身者でもそのエリアで求められているのは、学生か、サラリーマンか、女性向けかといった細分化された市場ニーズに合わせプランニングをする。

(2)需給状況を見極める
ニーズの高いプランでも供給過剰と思われる場合は、ニーズがあり、かつ供給不足のプランを考える。

(3)コンセプトで付加価値を高める
エリアの特性を見極めて、防犯強化、ペット共生、子育て支援、高齢者向けなどコンセプトが明確なプランニングをする。

以前は入居者層を学生、社会人、新婚、ファミリーといった大きなカテゴリーで分けていました。
しかし、現在は入居者の生活スタイルが多様化した影響もあり、入居者ターゲットの細分化が進んでいます。
どんな入居者ターゲットがいて、どんなプランニングが求められているかを確認し、建築計画を進めていくことが重要です。

従来の
入居者層
細分化された
入居者の
ターゲット層
想定される間取り ターゲットにあわせて重視する
プランニングのポイント
学生 学生 ワンルーム、1K 25㎡以上、トイレ・風呂別など。音大生などは防音室
社会人 若手社会人 ワンルーム、1K 防犯性、宅配ボックスなど日中の不在をカバーしてくれるもの
中堅社会人 1DK、1LDK 部屋の広さや収納など。家具や生活用品・趣味のものなどの置き場に困らない間取り
女性 1DK、1LDK 防犯性。豊富な収納や洗面所、浴室など水廻りの充実
新婚 新婚 1LDK、2DK、2LDK 広めのリビング、使い勝手の良い水廻り設備(対面キッチンなど)
ファミリー 子育て 2DK、2LDK 子どもに目が届くようなプランニング、和室、使い勝手の良い水廻り設備(対面キッチンなど)、ベビーカーを置ける広めの玄関
ファミリー 2DK、2LDK、3DK、3LDK 部屋数の確保、豊富な収納、使い勝手の良い水廻り設備(対面キッチンなど)
ペット共生 1LDK、2DK、2LDK ペットに配慮した建具、内装材、ドッグランや足洗い場など
高齢者 1DK、2DK、2LDK 段差のない間取り、非常時・緊急時の通報システム

※表は左右にスクロールします。

また、最近人気の設備や仕様については次のようなものがあります。

  • セキュリティ:防犯に特化したアパートは女性に人気が高い。
  • 耐震性:東日本大震災以降、注目度があがっていてアピールできる。
  • 収納:ウォークインクローゼットなどが人気。
  • 宅配ボックス:ネットショッピングの増加とともに、必要性もアップ。
  • IT設備:インターネット回線も一つのライフラインといえるほど必須。
  • キッチン:単身者でも自炊が増え、2口コンロが人気。

長期にわたるアパートの安定経営を実現させるためには、築年数を経ても競争力を失わないプランが必要です。
そのためにも、立地条件と合わせて入居者のターゲット層を絞り込み、それに合わせた建築計画を立てることが重要なファクターなのです。

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