全身性エリテマトーデス(SLE)は皮膚や関節の症状が中心の軽症の患者さんから、重い臓器障害をともなう重症の患者さんまで、症状や臓器障害の程度によって様々なタイプがみられ、それらを考慮した重症度にもとづく分類がなされています。それぞれの重症度に応じて治療法も異なります。
【重症度にもとづくSLEの分類】
重症度 | 補足説明 |
---|---|
軽症 | |
円板状エリテマトーデス (DLE) |
円板状皮疹 |
皮疹、粘膜症状 | 紅斑や脱毛、口腔潰瘍などの皮膚や粘膜の症状 |
関節炎、筋症状 | 関節の痛みや腫れ、筋肉痛など |
レイノー現象 | 寒冷刺激で手指の色が白・紫・赤へと変化する症状 |
漿膜炎 (少量の貯留液) |
肺・心臓をおおう膜の軽度の炎症 |
尿沈渣異常/間欠的タンパク尿 | 尿タンパク検査の異常などが時々ある |
中等症 | |
持続性タンパク尿 | 尿タンパク検査の異常が続く |
溶血性貧血 | 抗体などによって赤血球が破壊されて起こる貧血 |
血小板減少性紫斑病 | 血小板の減少による紫斑などが現れる |
精神神経症状 (脳神経障害、脊髄障害、髄膜炎、機能的精神症状など) |
顔・眼・手足の麻痺、髄膜の炎症による発熱・頭痛 などの神経症状、不安・抑うつなどの精神症状 |
心筋炎 | 心臓の筋肉の炎症により心機能が低下する |
漿膜炎(多量の貯留液) | 肺や心臓をおおう膜の炎症で多量に水が貯まる |
重症 | |
ネフローゼ症候群 | 腎臓の障害で尿中に多量のタンパク質が出る |
腎不全 (急速進行性、慢性) |
腎臓の機能が低下した状態が続く |
精神神経症状 (けいれん重積発作、意識消失発作、器質性脳症候群) |
けいれん発作が続く、意識を失う、認知障害や幻覚・妄想・混乱などの意識障害 |
間質性肺炎 | 肺胞のまわりの組織(間質)の炎症による肺炎 |
肺高血圧症 | 肺の血管が狭くなり血液が滞り心臓に負担がかかる |
全身性血管炎・血栓症 | 血管の炎症や血管が詰まる血栓症が全身で起こる |
橋本博史. 全身性エリテマトーデス臨床マニュアル 第3版. 日本医事新報社, p140-151, 2017. より改変