全身性エリテマトーデス(SLE)の診断は、問診や診察、検査を行い、それぞれの結果を総合的に判断した上で決定されます。
SLEの疑いがあると言われたら、できるだけ早く、専門医がいる病院を受診し、詳細な検査と正確な診断を受けることが大切です。
SLEは膠原病のひとつとして扱われ、SLEを診断できる専門医は、内科(膠原病内科、腎臓内科など)、リウマチ科、皮膚科などの診療科に所属しています。
問診では主に、気になる症状が始まった時期やその症状が今も続いているかどうか(現病歴)、過去にかかったことのある病気や受けたことのある手術(既往歴)、家族で膠原病などにかかっている人がいるか(家族歴)、合併症やアレルギーの有無、妊娠・出産の有無などについて聞かれます。そのほか、SLEの診断では幅広い質問項目が確認されます。
そして、医師が目で見たり触ったりすること(視診や触診)で皮膚や粘膜、関節をはじめとする全身の状態を調べて、SLEを疑う症状が実際にあるかどうか確認します。
その上で、SLEを診断するための検査、SLEと間違いやすい別の病気を除外する(鑑別)ための検査などを行います。
検査の結果がでると、問診や診察による症状や全身の状態を加味し、総合的な検討の上で、診断基準などをもとに診断されます。
SLEの診断には、米国リウマチ学会(ACR)の分類基準(1997年改訂)とこれをさらに改訂したSLICC(Systemic Lupus International Collaborating Clinics)分類基準のいずれかが用いられます。
ACRによるSLE分類基準 (1997年改訂版)
11項目のうち4項目以上を満たした場合にSLEと診断されます。
①頬部紅斑 (きょうぶこうはん) |
鼻すじからほうれい線のあたりに紅斑(平らな場合、膨らんでいる場合がある)が出ているか? |
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②円板状皮疹 (えんばんじょうひしん) |
円板状の皮疹が出ているか? |
③光線過敏症 | 紫外線にあたって異常な日焼けのような紅斑ができたことがあるか? |
④口腔潰瘍 (こうくうかいよう) |
口や鼻・のどに痛みのない潰瘍(口内炎のような症状)があるか? |
⑤関節炎 | 2ヵ所以上の関節で腫れや痛みなどがあるか? |
⑥漿膜炎 (しょうまくえん) |
胸膜炎や心外膜炎を発症しているか? |
⑦腎障害 | 尿にタンパクなどが出ているか? |
⑧神経障害 | けいれん発作や精神症状があるか? |
⑨血液学的異常 | 溶血性貧血、白血球減少などがあるか? |
⑩免疫異常 | 抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体があるか? |
⑪抗核抗体 (こうかくこうたい) |
抗核抗体があるか? |
SLICC分類基準(臨床症状)
①【臨床症状】【免疫学的項目】のうち、それぞれ1項目以上を含む4項目以上に該当するか、
② ループス腎炎と病理診断され、かつ抗核酸抗体もしくはdsDNA抗体が陽性の場合にSLEと診断されます。
【臨床症状】
①急性皮膚エリテマトーデス | 頬に紅斑が出ているか? 水ぶくれを伴う紅斑が出ているか? 水ぶくれや紅斑などが、全身の皮膚や粘膜(口や粘膜)に出ているか?皮膚が盛り上がっている紅斑が出ているか? 紫外線にあたって異常な日焼けのような紅斑ができたことがあるか? など |
②慢性皮膚エリテマトーデス | 首から上、あるいは全身に円板状の紅斑が出ているか? 増殖性の紅斑が出ているか? 皮膚が部分的に硬くなっていないか? 口や粘膜に紅斑が出ていないか? しもやけによく似た症状はないか? 円板状の紅斑と網状、丘状、斑状などの白色病変や、萎縮、ただれ、潰瘍はないか? など |
③口腔潰瘍 | 口蓋や頬、舌、あるいは鼻腔に潰瘍ができているか? |
④非瘢痕性脱毛 | 髪の毛が薄くなっていたり、傷んでいるか? |
⑤滑膜炎 | 関節が2ヵ所以上腫れていたり、水が溜まっているか? または、2ヵ所以上の関節に痛みがあったり、朝に30分以上こわばりを感じないか? |
⑥漿膜炎 | 胸が痛くなったり、胸苦しさを感じないか? |
⑦腎症 | 検査でわかる |
⑧神経障害 | けいれんが起きていないか?手や足の指先にしびれはないか? 混乱することはないか? |
⑨溶血性貧血 | 検査でわかる |
⑩白血球減少、リンパ球減少 | 検査でわかる |
⑪血小板減少 | 検査でわかる |
【免疫学的項目】
①抗核抗体 | 検査でわかる |
②抗dsDNA抗体 | 検査でわかる |
③抗Sm抗体 | 検査でわかる |
④抗リン脂質抗体 | 検査でわかる |
⑤低補体血症 | 検査でわかる |
⑥直接クームス陽性 | 検査でわかる |
Petri M et al. Arthritis Rheum. 2012; 64(8): 2677-2686より作成
Hochberg MC. Arthritis Rheum 1997; 40: 1725 より作成