全身性エリテマトーデスはどんな病気? 全身性エリテマトーデス(SLE)とは

病気の特徴

私たちの体には、自分の体を守るために細菌やウイルスなどの外敵を攻撃する「免疫」という働きが備わっています。ところが、免疫の働きになんらかの異常をきたすと、自分自身の体の細胞や組織を攻撃してしまうことがあります。そのために起こるのが、「自己免疫疾患」という病気です。

【免疫の働き】

【免疫の働き】 【免疫の働き】

全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は代表的な自己免疫疾患の1つです。その病名は “全身”を意味するsystemicと “狼に噛まれた痕のような赤い斑点(紅斑)”を意味するlupus erythematosusに由来します。

全身性エリテマトーデスの由来全身性エリテマトーデスの由来

SLEでは、発熱や全身倦怠感のほかに皮膚症状、関節炎などの様々な症状が全身に現れるという特徴があります。
SLEは古くから診断と治療が難しい“難病”と考えられてきました。しかし、現在は診断技術と治療法の進歩により発症早期から適切な治療を受けることも可能になり、病気をコントロールしながら発症前と変わらない日常生活を送るSLEの患者さんも増えています。ただし、依然として長期にわたる療養が必要な病気であることから、SLEは国から医療費助成が受けられる指定難病として認められています。

全身性エリテマトーデス(SLE)の患者数・男女比・発症年齢

世界におけるSLEの有病率は、人口10万人あたり3.2~517.5人と報告されており、国や人種により異なります1)

国内においては、2018年にSLEとして指定難病の医療費助成を受けている人(特定医療受給者証を持っている人)が6万1千人いました2)。医療費助成を申請していない人や医療機関を受診していない人などを含めると、実際には約6~10万人のSLEの患者さんがいると推定されています。

SLEを発症する人の男女比は1:9であり、圧倒的に女性が多い病気です3)

SLEは全ての年齢で発症しますが、とくに20~30歳代の発症が多くなっており、妊娠可能な年齢の女性に発症しやすい病気と考えられています4)

【国内SLE患者の発症年齢】

【国内SLE患者の発症年齢】 【国内SLE患者の発症年齢】
【国内SLE患者の発症年齢】 【国内SLE患者の発症年齢】

永井正規ほか編集, 厚生労働科学研究難治性疾患克服研究事業 特定疾患の疫学に関する研究班, 主任研究者 稲葉裕,
電子入力された臨床調査個人票に基づく特定疾患治療研究医療受給者調査報告書, p130, 2005年3月発行

1)Carter EE, et al. Nat Rev Rheumatol 2016; 12: 605-620.
2)平成30年度末現在 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数/厚生労働省衛生行政報告例(平成30年度末現在)
3)太田晶子ほか. 日本公衛誌 2007; 54(1): 32-42.
4)永井正規ほか編集, 厚生労働科学研究難治性疾患克服研究事業 特定疾患の疫学に関する研究班, 主任研究者 稲葉裕,
電子入力された臨床調査個人票に基づく特定疾患治療研究医療受給者調査報告書, p130, 2005年3月発行

全身性エリテマトーデス(SLE)の原因

SLEは、いくつかの要因が重なって発症する病気と考えられていますが、根本的な原因はまだ明らかになっていません。免疫システムの異常、遺伝的な要因、環境の要因、性ホルモンなどが複雑に関与して発症するものと考えられています。

免疫システムの異常

細菌やウイルスなどの外敵から私たちの体を守るため、免疫システムは、通常、異物(抗原)が体内に侵入するとこれを非自己と認識し、「抗体」をつくって攻撃・排除しようとします。抗体は抗原とくっつき、さらに攻撃を助ける「補体」も結合した「免疫複合体」をつくります。

【正常な免疫システム】

【正常な免疫システム】 【正常な免疫システム】
【正常な免疫システム】 【正常な免疫システム】

ところが、SLEの患者さんでは免疫システムに異常が起きて、自分自身の体を攻撃する「自己抗体」がつくられてしまいます。SLEでは様々な種類の自己抗体がみつかりますが、最も多いのが細胞の中にある核の成分と反応する「抗核抗体(こうかくこうたい)」です。抗核抗体などの自己抗体は、自分の体の成分(自己抗原)とくっついて免疫複合体をつくり、攻撃・排除しようとします。SLEでは、この免疫複合体が体の中で増えていって皮膚や臓器などに沈着することで、炎症や臓器障害などを引き起こします。

【SLEにおける免疫システムの異常】

【SLEにおける免疫システムの異常】 【SLEにおける免疫システムの異常】
【SLEにおける免疫システムの異常】 【SLEにおける免疫システムの異常】

遺伝的な要因

遺伝子が同じである一卵性の双子の場合、2人そろってSLEを発症する確率は25~60%程度と報告されています5)。そのため、SLEの発症には、遺伝的な要因も関与すると考えられています。ただし、これが100%の確率ではないことから、遺伝的な要因だけでなく環境など何らかの要因も発症に関与している可能性があるとみられています。

5)Deapen D, et al. Arthritis Rheum 1992; 35: 311-318.

環境の要因

海水浴やスキーなどで日光(紫外線)に長時間さらされることが、SLE発症のきっかけとなる場合が多くあります。そのほかには、ウイルス・細菌などの感染症、妊娠・出産、特定の薬剤の使用、ケガや外科手術なども発症の引き金になると考えられています。

【SLE発症の引き金となる環境の要因】

【SLE発症の引き金となる環境の要因】 【SLE発症の引き金となる環境の要因】

性ホルモン

SLEの患者さんの約9割は女性であり、20~30歳代で発症しやすいのが特徴です6)。このように妊娠可能な年齢の女性に多く発症することから、女性ホルモンがSLEの発症に関与すると考えられています。

6)太田晶子ほか. 日本公衛誌 2007; 54(1): 32-42.

性ホルモン