合併症とは、もともとある病気を原因として起こる、別の病気のことを指します。全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんで起こりやすい合併症には、感染症、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管イベント、ステロイド性骨粗鬆症、眼の病気などがあります。
SLEの長い経過のなかでは、免疫システムの異常や治療薬の影響によると考えられる様々な合併症が起こる可能性があります。そのため、SLEの診療においては、起こりやすい合併症を考慮した診察や検査、合併症に対する治療や管理も行われます。
感染症はSLEの患者さんにとって最も注意すべき合併症です。SLEの治療では免疫を抑える薬が使われることから、感染症にかかりやすくなります。また、SLEでは免疫システムの異常が起こっているため、外敵から体を守るしくみがうまく働かず、感染症が重症化しやすい状態にもあります。
細菌やウイルスなど、あらゆる病原体によって感染症にかかる可能性がありますが、健康な人ではあまり影響のない弱い病原体によって引き起こされてしまう「日和見(ひよりみ)感染症」のリスクも高まります。SLE患者さんでは、とくに結核、非結核性(非定型)抗酸菌症、ニューモシスチス肺炎(日和見感染症のひとつ)、B型肝炎などの感染症によって深刻な状態になりやすいため、予防薬を使用することもあります。
SLEの患者さんにとって感染症は命にかかわる場合もあるため、日頃から予防策を行うことが大切です。
心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの心血管イベントは、SLEの患者さんで起こりやすい重い合併症です。
SLEでは、血管にも炎症が起きているため動脈硬化をきたしている場合が多く、それが心血管イベントを引き起こしやすくしています。
また、特殊な自己抗体(抗リン脂質抗体)を持つSLE患者さんは、血液がかたまりやすいため、血栓ができて血管が詰まることによる肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミー症候群)なども起こしやすいことが知られています。
さらに、SLEの治療に用いられるステロイド薬の副作用で高血圧、脂質異常症、糖尿病などが起きて動脈硬化が進むことも、心血管イベントの要因としてあげられます。
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は骨の強度が低下し、骨折しやすくなる骨の病気です。骨粗鬆症にともなう骨折は直接的に生命を脅かすことはありませんが、生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼすため、重大な合併症です。骨粗鬆症は、加齢や閉経などの影響で起こるほかに、病気や薬が原因となって起こる場合があります。SLEの患者さんでは、治療に用いられるステロイド薬によって起こる「ステロイド性骨粗鬆症」を高頻度に合併します。
SLEの治療に用いられるステロイド薬を長期にわたり使用している場合は、眼の水晶体が白く濁って視力が低下する「白内障」や、視神経が障害され視野が狭くなる「緑内障」といった眼の病気を合併しやすくなります。また、SLEの治療に用いられる免疫調整薬を長期投与している場合、まれに「網膜症」が起こることがあります。
これらは放置すると失明に至る可能性もあるため、定期的な眼科検査が必要です。
このほかにも、SLEの患者さんでは他の膠原病や自己免疫疾患、消化性潰瘍(胃潰瘍や十二指腸潰瘍)、高血圧、脂質異常症、糖尿病、無菌性骨壊死、悪性腫瘍なども合併しやすいことが知られています。