全身性エリテマトーデスの治療 疾患活動性のみかた

全身性エリテマトーデス(SLE)の病状は、重症度または疾患活動性などによって把握されます。

疾患活動性とは、SLEによる病気の勢いを表したものです。SLE患者さんは、長い経過のなかで、疾患活動性が高い活動期や、疾患活動性が低い非活動期をくり返したりします。疾患活動性が高い場合を重症、疾患活動性が低い場合を軽症と表現することもあります。

また、患者さんの現在の症状や臓器障害の状態を表して、寛解(症状などがない状態)、再燃(いったん治まった症状が再び悪化した状態)と呼ぶこともあります。

【SLEにおける疾患活動性】

【SLEにおける疾患活動性】 【SLEにおける疾患活動性】
【SLEにおける疾患活動性】 【SLEにおける疾患活動性】

患者さんの状態を知るためには、生活の質(QOL)も大切です。
疾患活動性(重症度)やQOLには、これらを客観的に把握するための評価指標があり、個々の患者さんの状態を点数化して表わすことができます。疾患活動性やQOLのスコア、またその変化量は治療方針を決める際の重要な情報になります。

SLE疾患活動性の評価指標(疾患活動性指標)

SLE疾患活動性の評価にはいくつかの方法がありますが、欧米ではSLEDAI(SLE disease activity index)スコアが、疾患活動性の評価指標(疾患活動性指標)として用いられています。SLEDAIスコアは24の症状・臓器障害や検査の項目から成り、それぞれの項目に重み付けされた点数が付けられており、患者さんごとに点数を合計してスコア化します。日本でも、指定難病の医療費助成の基準となる重症度は、SLEDAIスコアを用いて判定します。

また、BILAG(British Isles Lupus Assessment Group)2004による疾患活動性指標が用いられることがあります。BILAGインデックスには97の項目があり、症状・臓器障害ごとに決められた活動性判定基準にもとづき、それぞれの症状・臓器障害がカテゴリー A(重症)~D(非活動性)、E(既往なし)に分類されます。さらに、カテゴリー Bが1つ以上ある場合にSLEは重症と判定されます。評価項目が多く、判定のしかたも複雑であるため、日常診療よりも臨床試験において用いられることが多い指標です。

健康関連QOL指標

SLE患者さんのQOLを調べる評価指標としてはSF-36(Medical Outcomes Study Short Form 36)などが用いられます。SF-36は、特定の病気や症状に特有な健康状態を調べるのではなく、包括的な健康状態を8つの尺度で測定する調査票です。体や心の状態だけでなく、普段の仕事や家事、付き合いなどがどの程度できているかを確認することで、身体的側面、精神的側面、役割/社会的側面を調べることができます。

【SF-36の8つの尺度】

尺度名 得点の解釈
(上段:低い、下段:高い)
身体機能
  • 入浴または着替えなどの活動を自力で行うことが、とてもむずかしい
  • 激しい活動を含むあらゆるタイプの活動を行うことが可能である
日常役割機能
(身体)
  • 過去1ヵ月間に仕事やふだんの活動をした時に身体的な理由で問題があった
  • 過去1ヵ月間に仕事やふだんの活動をした時に、身体的な理由で問題がなかった
体の痛み
  • 過去1ヵ月間に非常に激しい体の痛みのためにいつもの仕事が非常にさまたげられた
  • 過去1ヵ月間に体の痛みはぜんぜんなく、体の痛みのためにいつもの仕事がさまたげられることはぜんぜんなかった
全体的健康感
  • 健康状態が良くなく、徐々に悪くなっていく
  • 健康状態は非常に良い
活力
  • 過去1ヵ月間、いつでも疲れを感じ、疲れはてていた
  • 過去1ヵ月間、いつでも活力にあふれていた
社会生活機能
  • 過去1ヵ月間に家族、友人、近所の人、その他の仲間とのふだんのつきあいが、身体的あるいは心理的な理由で非常にさまたげられた
  • 過去1ヵ月間に家族、友人、近所の人、その他の仲間とのふだんのつきあいが、身体的あるいは心理的な理由でさまたげられることはぜんぜんなかった
日常役割機能
(精神)
  • 過去1ヵ月間、仕事やふだんの活動をした時に心理的な理由で問題があった
  • 過去1ヵ月間、仕事やふだんの活動をした時に心理的な理由で問題がなかった
心の健康
  • 過去1ヵ月間、いつも神経質でゆううつな気分であった
  • 過去1ヵ月間、おちついていて、楽しく、おだやかな気分であった

このほかにも、SLEによるQOLへの影響を調べる評価指標として、日本語版LupusPROなどがあります。

QOLの状態は治療方針にも影響します。例えば、SLEの疾患活動性は低いものの、副作用によりQOLの障害があると判断された場合は、治療薬を減量することもあります。