全身性エリテマトーデスの治療 臓器障害や合併症に対する治療

全身性エリテマトーデス(SLE)では、臓器障害の種類や程度によって治療が異なります。とくに、ループス腎炎や精神・神経症状を持つ患者さんでは、それぞれの病型分類に応じて薬物療法を選択します。

また、SLE患者さんでは様々な合併症が起こる可能性があり、それらに対する治療や管理も行われます。

ループス腎炎

ループス腎炎はⅠ型~Ⅵ型に分類されます。ループス腎炎の治療の中心は、ステロイドと免疫抑制薬の併用です。

Ⅲ型やⅣ型、Ⅴ型では、ステロイドに免疫抑制薬を併用して早期の寛解を目指し、効果が得られたら免疫抑制薬で維持します。なかでも、腎臓の機能が悪化しやすいⅢ型やⅣ型では、ステロイドの大量点滴投与(ステロイドパルス療法)により治療を開始することがあります。

Ⅵ型は、長期の腎炎持続の結果としておこる慢性変化で、それ自体はステロイドや免疫抑制薬による治療の対象になりません。慢性腎臓病(CKD)としての管理をおこないます。

いずれのループス腎炎でも、必要に応じて、アフェレーシス療法や血液透析も検討されます。

精神・神経の症状

ステロイドや免疫抑制薬が用いられます。重い精神・神経症状に対しては、ステロイドパルス療法や免疫抑制薬の点滴投与も検討されます。
精神症状の状態により抗精神病薬や抗うつ薬が併用されます。神経症状が血栓による場合は、抗凝固薬が投与されます。

血液の異常

SLEによる血球減少は多くの患者さんでみられますが、全身の血管炎などの重い症状に対してはステロイドパルス療法や血漿交換療法が用いられます。
抗リン脂質抗体が陽性で血栓ができやすいSLE患者さんには、血液をかたまりにくくする抗凝固薬や抗血小板薬を用いることがあります。

肺や心臓の障害

間質性肺炎や肺高血圧症など重症の障害が起こった場合は、ステロイドパルス療法や免疫抑制薬の併用が検討されます。

合併症に対する治療

感染症

結核やB型肝炎ウイルスに過去にかかったことがある患者さんでは、ステロイドや免疫抑制薬の使用によってこれらの感染症を発症(再活性化)する可能性があります。ステロイドや免疫抑制薬を開始する前に、感染症の予防のための薬剤を事前に使用することもあります。インフルエンザ、肺炎球菌などの予防接種(ワクチン)を受けておくことも大切です。帯状疱疹も非常に多い合併症で、注意が必要です。

ステロイド性骨粗鬆症

ステロイドを長期間(3ヵ月以上)服用する場合は、ステロイド性骨粗鬆症が起こりやすくなります。年齢、ステロイドの使用量、骨密度などを検討して、発症のリスクが高いと考えられる場合には、骨粗鬆症の治療薬を併用します。

糖尿病

ステロイドを長期間服用すると糖尿病を起こしやすくなります。ステロイドによる糖尿病がみられたら、食事・運動療法で経過をみます。必要に応じて糖尿病の内服薬やインスリン注射が行われます。