首都圏における「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査について
首都圏の一戸建・マンション居住者で住まいの温熱環境(あたたかさ、涼しさ)に満足でない人は5割を超え、夏季・冬季は約7割に達する。住まいの温熱性能の低さに加え、生活者の温熱環境に関する意識の低さなども温熱環境への満足度が高くならない理由の一つ。

2016年8月10日
旭化成建材株式会社
株式会社旭リサーチセンター

 旭化成建材株式会社(本社:東京都千代田区、社長:堺 正光、以下「旭化成建材」)快適空間研究所※1及び株式会社旭リサーチセンター(本社:東京都千代田区、社長:沢山 博史、以下「旭リサーチセンター」)は、「あたたかい暮らし研究会」※2において、首都大学東京 建築学域 須永研究室と共同で首都圏の一戸建持家(以下「一戸建」)とマンション持家(以下「マンション」)の温熱環境の実態と満足度調査を実施しましたので、その結果をお知らせします。

<調査報告トピックス>

  1. 1.

    年間を通した家全体の温熱環境(あたたかさ、涼しさ)に満足していない人は55%で、その比率はマンションより一戸建の方が多く62%。

  2. 2.

    一戸建では、夏・冬季とも温熱環境(あたたかさ、涼しさ)に満足していない比率が約7割を占め、梅雨・夏・冬季の湿度に満足していない比率も約7割。

  3. 3.

    一戸建の方がマンションと比較して起床時の居間・食堂の室温が低く、起床時に16℃未満になっている比率が6割を超える。築21年以上では約半数が10℃以下。

  4. 4.

    一戸建では、1階と2階の温度差を感じる人や暖房室と非暖房室の温度差を感じる人が7割を超える。

  5. 5.

    一戸建の主な不満要因は「暖房をしないと寒い」、「暖房室と非暖房室の温度差を感じる」、「暖房していても寒い」が三大要因。

  6. 6.

    一戸建はすべての部屋でマンションと比べて満足している人が少ない。特に冬季の玄関・洗面所・浴室・トイレでは、寒いと感じ、満足していない人が7割以上。

  7. 7.

    一戸建で「寒くて使いたくない部屋・スペースがある」と感じている人は約4割で、廊下、トイレ、浴室を挙げる人が多い。

  8. 8.

    温熱性能・温熱環境という言葉をよく知らない人が約7割、「家の温熱環境と健康が大きく関係していることを知っている」と答えた人はわずか13%。

  9. 9.

    温熱環境のいい家ができなかった理由、購入しなかった理由を、「温熱環境及び温熱環境のいい家に関する意識・知識がなかった」とした人が36%。

1.調査の背景・目的

 旭化成グループでは、2016年度より3カ年の中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」をスタートさせ、「クリーンな環境エネルギー社会」「健康・快適で安心な長寿社会」の実現に取り組んでいます。その中で旭化成建材が属する住宅領域は、人びとの健康で快適な生活に貢献し続けることを目指しており、断熱材事業の拡大は重要な事業戦略の一つです。
 近年、健康管理や省エネの視点から、住宅を適温に保つ断熱性能が重視されており、旭化成建材では、「快適空間研究所」※1を2014年に設立し、室内の温熱環境の研究、マーケティング活動などを行っています。2015年には、建築、環境、生活者などの視点から研究を進め、居住空間やそこでのライフスタイルの研究をさらに深化させるために、旭リサーチセンター及び首都大学東京 建築学域 須永研究室とともに「あたたかい暮らし研究会」※2を発足しました。
 今後、「あたたかい暮らし研究会」では、「快適空間研究所」における室内の温熱環境の研究やマーケティング活動の一環として、様々な取り組みをしてまいりますが、その第一歩として「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査を行いました。
 この調査では、首都圏における一戸建持家とマンション持家の冬季の温熱環境の実態を把握するとともに、築年数別、季節別、部屋別の満足度や建物内における室温差の有無等を調査し、温熱環境や生活者の実態を明らかにしました 。

2.調査概要

  1. (1)調査内容
    首都圏における「住まいの温熱環境の実態と満足度」調査
  2. (2)調査目的
    住まいにおける温熱環境の課題抽出と生活者の温熱環境に関するニーズ探索
  3. (3)調査対象
    首都圏(1都3県)の一戸建持家居住者、マンション持家居住者(761人)
  4. (4)調査期間
    2016年1月22日~24日
  5. (5)調査方法
    ウェブアンケート調査

3.調査のまとめ(詳細は下記参照)

 超高齢社会ともいえる今日、異常気象等の影響もあり、建物内でヒートショックや熱中症で亡くなる方が増加し、社会的課題の一つとなっています。一方、人生90年時代において人生を長生きするだけでなく、いかに生き生きと暮らしていくかという生活の質も問われる時代になっています。
 今回の調査では、首都圏における冬季の室内の温熱環境とそれらの満足度の実態を調査するとともに、一戸建とマンション、築年数別、季節別、部屋別の満足度や建物内における室温差の有無等を調査し、温熱環境と生活者の実態を明らかにしました。調査結果からは、温熱環境への満足度が全般に低く、特に一戸建は、マンションと比較して住まいの温熱環境評価が低いことの他、一戸建では、居間・食堂の起床時の室温が16℃未満になっている比率が6割を超えることや、築21年以上では約半数が10℃以下であることなどがわかりました。
 また、季節別に見ると、一戸建の夏・冬季の温熱環境に満足していない比率が約7割であることや、冬の一戸建では、1階と2階の温度差や暖房室とその他の部屋との温度差を感じる人が7割を超えること、寒くて使いたくない部屋やスペースのある人が約4割であることも分かりました。
 一方、今回の調査では、温熱環境という言葉の認知度が低いことや、温熱環境のいい家にできなかった理由、購入しなかった理由として、温熱環境及び温熱環境のいい家についての意識・知識がなかったことを挙げる方が3割を超え、温熱環境に対する満足が高くなっていない理由が、住まいだけでなく、生活者の温熱環境に関するリテラシーにも関係していることも分かってきました。

4.今後の展開

 これらの結果を踏まえ、「あたたかい暮らし研究会」では、今後も住まいの温熱環境に関する調査を行っていくとともに、首都圏の生活者を対象にしたセミナーやフォーラム、ワークショップを開催し、啓発活動に努めてまいります。当研究会の活動内容に関しては、HPでの公開を予定しています。(http://www.asahikasei-kenzai.com/akk/kaiteki-lab/index.html
 また、「快適空間研究所」では、旭化成建材のネオマフォーム工場(茨城県猿島郡境町)近接地において、自社の断熱材(ネオマフォーム)を用いた体験棟、展示棟(仮称:快適空間ラボラトリー)の建設を進めており、温熱環境に優れた空間の提案を行ってまいります。これらの施設の竣工は2017年1月を予定しており、竣工後は工務店等の断熱材ユーザー様を対象に温熱環境体験サービスを企画しています。
 今後、「快適空間研究所」及び「あたたかい暮らし研究会」では、生活者の住まいの温熱環境に関する意識、知識を高めていくための調査研究・情報発信の他、日本の住まいを省エネルギーでありながら、そこに住まう家族の体と心をあたたかくする住まいにすべく啓発活動を行っていく予定です。同時に旭化成建材は断熱材メーカーとして、より良い製品とサービスの提供を通じて、温熱環境に優れた空間やそこでの住まい方の提案に努めてまいります。

以上