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HEBEL MAKES STORY
ヘーベルハウスが紡ぐ新しい物語

HAUS

ヘーベルハウスには、時代を超えた物語がある。

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 この写真は、スコットランド国立博物館の収蔵庫に保管されている鉱物「トバモライト」のクローズアップだ。トバモライトは、自然界で何万年もの営みによって生まれたケイ酸カルシウム水和物の沸石のひとつで、奇跡の石と言われる。ヘーベルハウスに使用される「ヘーベルウォール」の素材は、この天然トバモライトを、オートクレーブ養生によって人工的に再現した板状結晶構造体であり、その耐久性理論を化学的に構築した日本の旭化成グループが生成するトバモライトは、現在世界で最も精巧な出来のトバモライトと評される。完成した結晶構造体を顕微鏡で見ると、きわめて緻密で、板がきれいに絡み合っているようなカードハウス構造をしている。強度に優れ、熱や水で化学変化を起こさず、物性的にきわめて安定しているため、寸法変化や腐食とは無縁の壁を生み出す原動力になっているのだ。
 1998年、その素材開発力を背景にヘーベルハウスは「ロングライフ住宅宣言」を放ち、日本における工業化住宅のクオリティ向上に貢献した。「住宅を長期に使用する資産とするならば、耐久性の明示と維持費用の開示は事業者の責務である」。これは当時の旭化成社長、山本一元さんの言葉だが、このような強い意志をもって貢献を果たそうとする企業精神には学ぶべき点が多い。トバモライト耐久性理論の研究は、やがて「外壁パネル保証30年」の明示にもつながる。
 そして2020年、ヘーベルハウスは、新しいデザインの都市型住宅モデル「FREX AXiii(フレックスアクシー)」を発表した。同時に、この新しい住宅デザインにあわせ、バウハウスの時代に生まれたモダニズム建築のDNAを受け継ぐ新しい外壁デザイン「MICRO STRIPE」(マイクロストライプ)と、その壁を彩る新しいテクスチャー「TOBERMORY WHITE」(トバモリーホワイト)を開発した。自らの原点といえるトバモライト石を明確に想起させるヘーベルウォールの開発によって、ヘーベルハウスは、また新たな物語を歴史のノートブックに刻んだのだ。

都市型住宅のニューデザイン フレックスアクシー誕生

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 ヘーベルハウスを代表する重鉄・システムラーメン構造の都市型住宅「FREX」に新しいモデルが誕生した。新デザインのヘーベルウォール「マイクロストライプ」を起用して完成した「FREX AXiii」(フレックスアクシー)だ。
 AXiii の語源は「axis(軸)」。ヘーベルハウス独自の黄金比からなる立体罫線を基準寸法とし、平面で描かれた設計図を「軸×軸×軸」で立体化した家である。デザインの基調は、ヘーベルハウスが今回初めて導入した「縦モジュール」を罫線化して書き起こしていき、グリッドに沿って家を形作っていく。今までは「Ⅹ×Y」の平面モジュールで設計されていたが、縦モジュールを導入したことで、モジュールを基本に窓を配置したり、モジュールに合った外壁版の配列が可能になった。整然美とでも言おうか、その出で立ちは、無駄を削ぎ落としたモダニズム建築の究極の美しさを見せている。
 特長的な窓の名は「ウォールディバイダ」。この、タテに伸びた窓によって家を左右に分割するような間取りも容易くなった。突き抜けるような窓が天井より高い場所に伸びているため、より空が広く見え、光も取り込める。FREX AXiiiのデザイン思想は、造形過多にしないこと。四角いキューブの塊から余分な部分を削って、削って、削りぬくという潔いデザインを志向している。壁自体が美しいので、過度なデザインを必要としないのだ。

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室内から見ると、天井面よりも窓の高さが少し勝っていることがわかる。
ウォールディバイダという縦長の窓を起用したFREX AXiiiの外観。現代のバウハウス建築を感じる佇まいだ。

匠の職人技を工業的に再現した新しい壁マイクロストライプ

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 FREX AXiiiのヘーベルウォールに起用された「MICRO STRIPE」(マイクロストライプ)は、職人の削り出しの技術・匠の技をヘーベルハウスが独自の技術で工業的に再現した新しい壁。約300ミリ角の格子柄をベースに、細密なストライプラインを彫りこむことで、繊細な質感を表現し大判タイル貼りのような高級感と美しさを醸し出している。ヘーベルハウスがこれまで手がけてきた中で最も細く繊細な縦のラインが美しいこの壁は、彫りの深さが1mm以上変わると遠くから見た時の色味が変わってしまうため、彫りにはミリ単位の精巧さを要したという。通常の型枠にコンクリートを流し込む「型枠成型」では、この繊細さは再現できない。型枠をはがす際に、引っ張り強度がかかり、エッジが欠け、角が丸まってしまう。「MICRO STRIPE」のストライプの角が垂直に立っているのは、職人技とも言える削り出しの高度な技によるものなのだ。ストライプのピッチは15.25㎜と、ミリ単位で規定され、わずかな狂いも許されない。 
 ヘーベルハウスの従来の塗装はALCコンクリートヘーベルのデザインに合わせ、石や土など自然素材をモチーフにしており、そのリアルな質感を再現するために単色ではない粒や色の重なりで塗装する「多彩塗料」を採用している。そんな中、今回は多彩塗料でありながら、あえてその多彩感を消し、漆器のようなマット感を表現するという凝った手法で完成している。多彩塗料による壁のテクスチャーは、奇跡の石「トバモライト」へのオマージュを表現したいというヘーベルハウスの願いから生まれたものである。

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ヘーベルウォール史上最もピッチの細いストライプを起用した「マイクロストライプ」。角の立った繊細な削り出しと多彩塗料によって、近くで見ても遠くから見ても同じ色彩感が出るよう工夫されている。

ヘーベルハウスの原点を回帰させるトバモリーホワイト

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「TOBERMORY WHITE」(トバモリーホワイト)は、ヘーベルウォールの原点であるトバモライト石をモチーフに、独自の塗料と塗りの技術によって、艶を抑えた純粋で明るい白を実現した新テクスチャーである。トバモライトは、別名「奇跡の石」と呼ばれる。火山地帯の地下で石灰岩を含む地層にマグマが接触した際、石灰岩に含まれるカルシウムとマグマのケイ素が高温で化学反応を起こし、このとき生成される特殊な変成岩が地熱によって高温・高圧になった地下水と反応してできた石で、その生成には何万年もの歳月を要すると言われる。
 20世紀に入り、この石の結晶が「これ以上化学反応を起こしにくい極めて安定した物質」と解明され、建材として普及していたセメントの性能向上に役立つ。その後、人工のトバモライト結晶がオートクレーブ養生によって生成され、ALC(軽量気泡コンクリート)が開発されることになるわけだが、窯の中でどんな化学反応が起きているのかは謎のままだった。
その謎を解き明かしたのがヘーベルハウスの生みの親、旭化成の研究チームである。最先端のX線解析技術を用いて生成メカニズムを解き明かし、常に高品質で安定したトバモライト結晶を生成することに成功したのである。「TOBERMORY WHITE」は、ヘーベルハウスの進化の系譜を物語るテクスチャーでもあるのだ。

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手前が、新色「トバモリーホワイト」を吹き付けたサンプルボード、奥が既存の「輝白」を吹き付けたサンプルボード。
トバモリーホワイトは、マイクロストライプのレリーフに相応しく、きめの細かい粒が特長のオフホワイト色だ。

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「奇跡の石」と言われるトバモライト。
1880年、スコットランドのインナー・ヘブリディーズ諸島に属するマル島で、鉱物学者であり探検家でもあったマシュー・フォースター・ヘデル博士によって発見された。

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HailMaryこちらのコラムはHailMary3月号に掲載されています。

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