光の回廊をそなえた荘厳で、神聖で、居心地満点のレジデンス。
舞台は禁酒法時代のシカゴ。酒の密造摘発と黒幕アル・カポネ逮捕に乗り出した財務省の捜査官を主役に描いた映画『アンタッチャブル』。私はこの映画を通じて、Untouchableという言葉には「怖いものに触れてはいけない」というニュアンスだけではなく、「悪の買収や誘いに応じない(強靭な精神と肉体をもつ男)」という別の意味があることを知った。本誌のキャッチフレーズMr.Untouchableはその意味を遵用している。
映画のクライマックスは、シカゴのユニオン駅での銃撃戦である。赤子を乗せた乳母車が長い階段から落ちるシーンは、映画史上最も重要な6分間といわれる『戦艦ポチョムスキ』の「オデッサの階段」のシーンの再現だ。1993年の夏、当時スポーツライターだった私はMLBの取材でリグレー・フィールドを訪ね、そのついでにシカゴ・ユニオン駅へ出向いた。「乳母車の階段」の広さと長さにも驚いたが、コンコースでもっとも印象的だったのは「グレート・ホール」と呼ばれる待合所に広がるアトリウムだった。木のベンチに座って見上げると、ヴォールト構造によってアーチを描く天窓が、摺りガラスをとおして外光を室内に招いていた。あらためて調べると、この駅舎はアメリカンルネッサンスを象徴するボザール様式を用いて作られた建築物で、ホールでは結婚式も行えるよう(その後すぐに新婚旅行へ出立できるよう)教会の内部に似せて設計されているそうだ。荘厳で、神聖で、いつまでも眺めていたい空間だった。
今回われわれが訪ねたのは、大阪の箕面市にある住宅展示場。その一角に建つヘーベルハウスのFREX2最新モデルをヘイルメリー流にアレンジさせていただいた。重鉄・システムラーメン構造ならではの強靭な躯体構造を生かした邸宅で、1F、2Fとも連続するビスタウインドウを配する大開口部が迫力満点。室内に入ると、予想以上に「高さ」が感じられた。2F建て、しかも十分に横の広がりを持つ邸宅なので外観だけでは気づかなかったが、エントランスに足を踏み入れると縦空間の広がりによって生まれる内外の一体感をおぼえる。その理由は、ビスタウイドウの大開口部とリビングのあいだに突き抜ける吹き抜け、そしてエントランスホールの真上を抜ける吹き抜けが、美しいアトリウムを創り出しているからだ。
自然光がガラス窓を通じてアトリウムをやさしく照らし、そこが光の回廊となって荘厳で神聖で心地よい朝を演出している。ダウンフロアのリビングに持ち運んだアームチェアの配置を私があれこれ考えている最中、カメラマンは、アトリウムをとおして生まれた光と影のコントラストを撮るのに夢中だった─。
1F ATRIUM
1FのLDKとビスタウインドウのあいだから、上階へ広がるアトリウムを撮影した。気持ちよい朝の光が室内にさしこみ、真白なアトリウム空間がよりアーティスティックな光景に映ってくる。高い位置からの採光が1Fに十分な明るさと心地よさをもたらしている。
広々としたエントランスホール、スケルトンの階段、さらに上階へ抜けるアトリウムによって横と縦の広がりを同時にもたせている。上階からエントランスを見下ろす光景も美しい。
1FはエントランスからLDK、洗面室まで、和室空間を除きすべて同素材のタイルフローリングを採用。写真はダウンフロアリビングのタイルに朝の光が当たる様子。
1F LDK
およそ36帖の広さをもつ1FのLDK。ダウンフロアリビングには箕面エリアを代表する家具メーカー「SQUARE」の家具を持ち運んだ。
DOWN FLOOR LIVING
ダウンフロアリビングは11帖。大開口の窓とアトリウムを通じてたっぷり光を採り入れ、内外の一体感を得られる。ワークスペース、ダイニング・キッチンとのつながりを保ちながらも、ダウンフロアと天井の間接照明の効果によってほどよい篭り感を得られるよう工夫されている。このリビングと壁を挟んでエントランスホールがある。
DINING KITCHEN
19帖の広々としたダイニング・キッチン。ブルーを基調にしたアイランド型キッチンは、男子の厨房としても相応しいモダンな意匠。キッチン台、食器棚ともに十分な収納スペースがあるので、空間をすっきり演出できるのもうれしい。
WORK SPACE
ダウンフロアリビングの背には、低めのパーテーションを挟んでワークスペースを設置。ダウンフロアリビングとは違う目線とアングルで空間を感じられる。PCワークだけでなく、ワイン片手に読書に没頭するなど1人の時間も楽しめそう。
J-STYLE ROOM
エントランス脇にレイアウトされた和室。応接間としての役目も果たし、部屋の前を走る縁側のような敷台はほどよい高さがあって靴の脱着が楽。ここに腰かけてちょっとした会話もできる。室内は琉球畳12帖分のサイズが絶妙で、戸を閉めると篭り感が一気に増す。和室奥に置いた和モダンのフロアスタンドランプ(Sonechika)。
2F SUB LIVING
2Fのサブリビングは趣味部屋として活用できそうな、ほどよいサイズ(8.7帖)。部屋全体が床上げされ、フルフラットでアウトドアリビングにつながっている。ヘリンボーンの挽板フローリングと部屋を横切る梁、そして壁代わりに誂えた建具のシェルフが印象的。階段からもシェルフにレイアウトされたモノたちを眺められ、シェルフの隙間から奥のリビングの様子を感じることができる。
2F OUTDOOR LIVING
2F KID'S ROOM
こちらは2Fの子供部屋。シングルベッドとデスクがきちんと収まる6.7帖のサイズ。子供が成長し、家を離れたあとは趣味部屋として活用できそう。
2F BEDROOM
2Fにレイアウトされた11.6帖の主寝室。1Fのリビングの真上に位置し、1F同様ビスタウインドウからアトリウムをわたって光が入ってくる。1FのLDKの場合、2Fのビスタウインドウからの光も受け容れるため、ダウンフロアリビングに差しこむ光量はたっぷりあるという印象だった。これに対し、上階にあるこの寝室の場合は、その2分の1の開口部を通じ、ほどよい量の光がさしこんでくるという印象。心地よい光を受け容れ、かつ枕元には直射日光が当たらないよう工夫されている。
WIC
主寝室に付設されたウォークインクローゼット(5.4帖)からも屋外を感じることができる。心地よい雰囲気のなかで、その日のコーディネートを楽しめるスペースだ。
寝室から下階を見下ろした風景。アトリウムが光の回廊になっていることがよくわかる。
FACADE
ヘーベルハウスみのお展示場の外観。1F、2Fともに3つの連続するビスタウインドウを起用し、大開口を創り出している。このようにダイナミックかつ好きな場所に大開口を設置できるのは、重鉄・システムラーメン構造による強靭な躯体構造ゆえ。内と外の一体感を重視した設計によって進化したモダニズム建築を創り出している印象だ。
1F TERRACE
内と外とのインターフェイスの役割を果たす1Fのテラス。椅子を並べてコーヒーブレイクしたり読書したり。夕涼みにももってこいの空間だ。
ROOFTOP
この邸宅はルーフトップも備えている。天にひらくこの空間では、屋上ガーデンを作ったり、ゴルフのパッティング練習場を作ったりするのも楽しそう。
ヘーベルハウス みのお展示場
HEBEL HAUS FREX2 MINOH MODEL
ヘーベルハウスみのお展示場の開放的なエントランスホール。上階まで吹き抜けるアトリウムが光の回廊となり、明るく開放的な室内空間を生み出している。2Fまで立ち上げたグレーの壁が1Fのプライバシーを確保し、その壁伝いにスケルトンの階段が設らえてある。階段の下に飾ったのは1980年代のポップアート(Sonechika)。
ヘーベルハウス みのお展示場
HEBEL HAUS FREX2 MINOH MODEL
大阪府箕面市今宮1-1-1 ハウジングウェルビーみのお内
tel. 072-734-7177(10:00-17:00 火・水定休)
※写真の設えと実物は一部異なります
取材協力:
SQUARE
Sonechika
BasShu
GT CAMERA
※屋上で火気使用する際は、屋上防水シートへの飛び火対策のため耐炎性のある焚火シートなどを敷いてご利用ください。