へーベルハウスの2F 建て邸宅専用躯体、RATIUS シリーズの第4弾として発売された「RATIUS[RD]余白の在る家」(以下「余白の在る家」)。この家には、シェルウォールという名の壁を巧みに生かした「縁の間(えんのま)」「光の間(こうのま)」「青の間(あおのま)」という3つの「間」がある。これらの「間」は、住宅シミュレーションシステム「ARIOS」と植栽提案「まちもり」を組み合わせた、光・風・空・緑といった自然の恵みを効果的に暮らしに取り入れる設計手法をベースに完成している。季節の変化、時間の変化に応じて、シェルウォールがどのように機能するかも十分計算されている。このため、オープン(ひらく)とクローズ(とじる)がバランスよく同居する中間領域が生まれているのだ。
われわれ日本人の感覚として、「間」や「余白」は、禅の精神でもある「無」や「空」という言葉につながっている。「無」や「空」は豊饒や平和を意味し、何かに区切られるものではなく、限りなく曖昧に広がっていく空間を想起させる。古くからの日本建築における「間」の考えもきっとそれに基づいていて、元来西洋建築のようにスペースがはっきり区切られた「部屋」は存在せず、柱と柱で囲まれたスペースをわれわれは「間」として認識してきた。土間、床の間、奥の間、板の間、大広間...。この曖昧にして心地よい「間」に何らかの意味を求め、手を加えていく感覚が、日本人の美意識につながったのではないか。
たとえば英国では、自然そのものの風景を大切に庭が設計され、その邪魔にならないように家を建てる。一方、日本の場合は人間がこまやかな植栽技術を駆使して手を加え、美意識をもって庭をアレンジし、住まいの借景として生かす。枯山水の庭はその象徴だろうし、坪庭も日本の産物だ。自然と人工の調和によって「余計なもの」をなくし、建物を含めた空間ぜんたいに「余白の美」を追求する。ゆえに建物自体もノイズレスで、庭の植栽やその先に広がる青空と調和する。「余白」は「ゆとり」と言い換えてよいかもしれない。3つの「間」を見学したあと、そのような感想をもった。
3つの「間」は、オープンとクローズを上手に交差させながら、懐しさと新しさ、胆さと繊細さ、高揚感と安堵感という、奥行きの深さのようなものも漂わせていた。
この心地よさは、玄関ホールでも階段室でも、どこにいても室内を快適な温度に保ってくれるロングライフ全館空調システムによるサポートが大きいこともわかった。今回は2号にわたり、「余白の在る家」を写していきたい。
FACADE with Shell Wall
重鉄ゆえの余白の美。
ヘーベルハウスの2F建て邸宅専用躯体であるRATIUS[RD]。重鉄制震・デュアルテックラーメン構造による強靭な構造は、ロングライフな家づくりを可能にしてくれる。今回発売された「余白の在る家」は、新たなデザインコンセプトとして採用されたシェルウォールが、つなぎ目のないノイズレスで美しいファサードに映えている。建物の基本的なコンストラクションは、2つの立方体を重ね合わせ、室内空間と外壁との間をくり抜いたデザイン。くり抜いたエリアが中間領域の3つの「間」となり、自然との共生を実感できる心地よい居場所になる。住環境シミュレーションシステム「ARIOS」を活用し、①敷地位置を地球視点で正確に把握、②敷地の状況を立体的に解析、③日照・採光・通風などを活かすプランを検討したうえでシェルウォールを配置。「ひらく」と「とじる」の絶妙なバランスを取っている。
2つのシンプルな箱を組み合わせ、大きな箱のほうをくり抜いたようなデザイン。くり抜いた内側の室内に面する側にはすべて窓を設けている。居住空間をひと回り大きなシェルが包み込むような建物は、外から見れば頼もしい防壁となり、内から見れば居住空間の延長線という中間領域を演出する。
EXTERIOR with Shell Wall
開いた先に緑と空を。
シェルウォールによって中間領域が生まれたことで、室内のプライベート空間と屋外のパブリック空間につながりを持たせる緑の存在も際立っている。外構デザインは、室内のリビングから見て開いている空間に緑と空が映えるよう計画され、ヘーベルハウス独自の「まちもり」のコンセプトにしたがって、在来種を中心にした階層構造の植栽を配置。屋外へつづく小径(右頁写真)にも多様な植物が植えられ、「縁の間」と屋外の行き来を楽しめる。中間領域のシンボルツリーはジューンベリー(左下写真)で、これが「青の間」の主役となる。また建物の外側には、ハナミズキのほか、落葉樹も多く植えられていて、「冬に葉が落ちて木の幹と枝があらわになったときも建物と合わさって落ち着いた雰囲気になるよう」(外構を担当したガーデンディレクターの渡邉賢介さん)工夫が凝らされている。建物と緑が一体となって四季を通じて暮らしに潤いを与える。そんな外構計画なのだ。
縁の間 Living + Shell Wall
マイルームは石畳の屋根付き回廊。
限られた敷地内に建てる都市型住宅において、「余白」を持たせる家づくりは日々心地よく暮らすためのキーポイントになるだろう。「余白の在る家」では、完全に閉ざされた壁ではなく身長より低い塀でもない、シェルウォールで囲ったゾーンに屋根を設けることで「縁の間」という中間領域をあざやかに生み出している。「縁の間」にはベルギーの街中で古くから実際に使われていたという石畳が敷かれ、趣も満点。その石畳を少し下りると白いテーブルと椅子が置かれたオープンエアのテラスが設えてある。「縁の間」で涼んだり、オープンエアでブランチを楽しんだり。さほど奥行きのないスペースでも楽しみが広がるのだ。欲張って室内リビングを広く取るのではなく、プライバシーを保ちつつ自然と共生できる半屋外空間を作るほうがゆとりある暮らしを送れる。そんなことを教えてくれる「余白」空間なのだ。
シェルウォールによって「縁の間」はプライベートが保たれ、石畳を一段下りるとオープンエアのテラスにつながっている。季節や時間によって光の入り方が変わってくるのも楽しい。
Living + Shell Wall
カーテンいらずのリビングと、ほどよく明るいダイニング。
1FのLDKから南側の窓外を見た様子。向かって右側にシェルウォールに囲まれた「縁の間」を設けている。シェルウォールがほどよい目隠しになっていることがよくわかる。向かって左側は、ダイニングから外に向かって開くという発想で屋外の光を取り込んでいる。
LDK
1FのLDKは約26帖の広さ。全面開口の窓外に視線を向けると「縁の間」をはじめとする半屋外空間がひと続きになっていて、LDKがさらに広く感じられる。
リビングはこのようにシンプルな箱型になっているため、家具やアートを配置しやすく、住まう人のライフスタイルが反映されやすい。朝・昼・夕の時間ごとに屋外から入ってくる光の角度が変わってくるので、漆喰の塗り壁や塗り天井の表情の変化を楽しめる。角度は変わっても、どの時間帯も光の量はちょうどよく、滞在中は始終居心地がよかった。ちなみにこの写真は正午の時間帯に撮影したもの。また、室内のダウンライトの配置が巧みで、夜の時間帯には別の心地よさを味わえるそうだ。
DINING KITCHEN
ここは自然の恵みをいただく最良の場所。
ビスタウインドウを通じて窓外の景色を楽しみながら食事できるダイニング空間。キッチンの奥(北側)にもロングFIX 窓を設け、上手に光を採り入れている。室内の床タイルと半屋外の石畳の相性も良く、裸足でそのまま外に出たくなる。
BATHROOM
サニタリールームでリラックスタイムを。
リビングの壁の向こう側にレイアウトされたサニタリールーム。中庭から自然光がたっぷりと降り注ぎ、グリーンも楽しめる。シェルウォールによってプライベートが守られているので、小椅子を一脚置いてリラックスしたくなる。
ENTRANCE HALL
土間のような玄関ホールも快適。
「縁の間」の床面と同じ石畳を敷いた和モダンなエントランス。ウォルナット材でできたシンプルな建具や漆喰の塗り壁とのバランスが絶妙。ロングライフ全館空調システムのおかげでここでも快適な温度が保たれている。この土間のようなエントランスが「光の間」につながっている...
玄関をあがるとそこには「光の間」が現れた。
階段をあがるとまもなく「青の間」も現れた。
シェルウォールがいかに「余白」づくりに貢献しているか、
いかにロングライフ全館空調システムの役割が大きいか、
そのレポートは来月号までしばし「間」をあけることにしよう。
ヘーベルハウス 港南台展示場
RATIUS [RD] 余白の在る家
ヘーベルハウス 港南台展示場
神奈川県横浜市港南区港南台4-23-1
tvkハウジングプラザ港南台内
tel. 045-832-6100(10:00-17:00 火・水定休)
※写真の設えと実物は一部異なります
取材協力:
Sonechika
Kyoto Asahiya

