今月は、琵琶湖の湖南に位置する滋賀県草津市の住宅展示場を訪ねた。そこに建つヘーベルハウスのLDK空間にヘイルメリー流アレンジを施すのが目的だ。琵琶湖に近いゆえ、今回の家の主人を「バスフィッシングが趣味のダッズ」と想定し、相棒になりそうなモノたちを集めた。このフロアは、スカイコテージの脇にこれぞマンケイブ(男の洞穴)と言える小部屋を備えている。「スカイコテージ+マンケイブ」を男のベース基地としてアレンジしたのだ。この写真だけ見ると、「家族のことを無視しているじゃないか」とお叱りを受けるかもしれない。が、そこは流石のヘーベルハウス。ご安心あれ。じつはこのフロアにはスカイコテージ以外にもうひとつ、広々としたアウトドアリビングが備わっているのだ。その空間はダイニングキッチンから直結しているので、家族や仲間とBBQを楽しめるよう演出を施した。
撮影に入る直前、このフロアのフォールディングウィンドウを全面開放した。そのときの心地よさといったらなかった。都市住宅にあってもこれほどに自然の恵みを得られるのかと、琵琶湖からやってくる朝風に感動し、本気で釣りに出かけたくなったのである。
人生につまずいたら釣りへ出かけよ。
先人の言葉どおり、スランプのときは湖へ出かける。
フィッシュオンの快感は何にも得がたいものだけれど、湖から戻り、ウェアを乾かし、小さな折りたたみ椅子に座り読書をはじめた午後のすっきり感は、それ以上の収穫。
今日もまた、湖から気持ちいい風が吹いてくる。
背丈ほどの高さのヘーベルに囲まれたスカイコテージはマンケイブ(小部屋)に連なる。
そこでしばらく洋書を参考に原稿を書いていると午後の光が入り込んできて、「そろそろ仕事をきりあげろ」そう囁いてくる。
「マンタイムは終了だ」と。
つねに視線が外を向くから、このフロアは心地よい。
視線の先には、スカイコテージだけでなく、大空食堂を携えたアウトドアリビングも構えていて、壁の向こうには限りない地球の広がりを感じる。
そんな場所で、愛しい家族や愛しいモノたちと暮らしたい。
アメリカでは、自分の誕生年のランタンを購入し大切に使いつづけるという習慣がある。
二世代、三世代にわたり、古いランタンを受け継ぐファミリーも少なくない。
アウトドアリビングは、そんなランタンたちが一等活躍できる場所であり、絆の象徴になれる場所でもある。
こんな時代だから、家族との時間をもっと大切にしたくなる。
こんな時代だから、男子厨房に入り料理の腕をふるうこともある。
こんな時代だからこそ、大切なのは人間らしいふれあい。
心のディスタンスは近い方がいいに決まっている。
だから、心と心をもっと近づけてくれる家に住みたい。
夕暮れのアウトドアリビングでぼくは今日見た美しい冬の湖について彼女に語り、彼女は今宵のパーティーで出すべきお酒について、ぼくにアドバイスを求める。
美しい空と家をつなぐトワイライトゾーンのようなこの場所で、あたらしい一年がはじまった。
取材協力:イレクターズ
※屋上で火気使用する際は、屋上防水シートへの飛び火対策のため耐炎性のある焚火シートなどを敷いてご利用ください。