どっしり構える重鉄の家。そこには緑あふれる快適空間が広がっていた。
今回訪ねたのは、埼玉県熊谷市の住宅展示場に建つヘーベルハウスのモデルハウス。今年7月に竣工された、重鉄・システムラーメン構造によるFREXの2F建てモデルだ。悠然と構えるマッシブな邸宅という印象が外観からも伝わってくる。室内に足を踏み入れると、強靭なFREXの躯体を生かした、想像以上に豊かな間取りの居住空間が広がっていた。
1F、2Fともに室内は間仕切りを極力減らし、開口部を多く設けることで光と風を招き入れるパッシブなリビング空間を実現。目隠しの塀や室内にもグリーンをふんだんに取り入れているので、自然との調和を感じられる。吹き抜けに配したスケルトン階段や天空へ開くスカイガーデンの空間デザインも秀逸だ。
1Fはウェルカムスペースからリビング、そしてダイニングキッチンにかけてフロアレベルを変え、多彩な層によって豊かな居住空間がレイアウトされている。2FのLDKに採用したダウンフロア&ハイルーフユニットによる縦横の広がりも見どころ。より自然との共存を感じさせるようなヘイルメリー流アレンジを施した。撮影後、2Fのソファで小休止していると、大開口部から午後の風がダウンフロアを走り、ランドリールームに接続しているベランダのほうへ抜けていった。こんなに開放的なのに、1Fで片付けをする仲間たちの声や物音はあまり聞こえてこない。ハイルーフを見上げながらこの家の包容力のようなものを感じ、しばし寝入った。
1F LDK
床のレベル差を駆使した開放空間
玄関を入ると、土間ホールからリビング、そしてDKまでが一体になった大空間に圧倒される。壁を設けず、フロアレベル(床の高さ)を巧みに変え、ほどよい目隠しとして機能するウッドルーバーを要所に使うことで各空間をさり気なくゾーニング。自然光が射し込む開口部をたっぷりと設けた大胆な設計が、開放感をいっそう高めている。LDKのセンターに立つ円柱は、躯体を支える重要な骨組みとして機能しているだけでなく、直線的なデザインを多用するFREXの中で柔らかいリズムを生み出す視覚的アクセントにもなっている。
1Fの床面積は128.00m2(38.72坪)だが、一切無駄なスペースがなく、しかもワクワクする間取りだ。
1F EARTH FLOOR
1F LIVING & TERRACE
土間ホールよりも1段フロアレベルを上げた12.5帖の1Fリビング。こちらの空間へは靴を脱いで上がるが、床材には土間ホールと同じストーンタイルを採用しているので、空間が途切れず、美しい連続性をもたらしている。また、このリビングの外にはL 字型テラスを設えてあり、フォールディングウインドウを開け放つと室内外が一体化し、居心地のよいパーティースペースを演出できる。
1FリビングとつながるL 字型のテラス空間。メテオブルーのヘーベルウォールが効果的に用いられている。
1Fリビングにガジュマルの木をアレンジ。ガジュマルは沖縄では風水の魔除けで、精霊キジムナーが棲みつく木として語り継がれている。
太い幹と、丸みと厚みのある深緑の葉が生命力を感じさせる。耐陰性があるため室内でも育てやすく、成長も早い。南国生まれゆえ真冬の寒さには弱く、基本的に冬場は室内で育てるほうがよい(鎌倉ロコマート&ガーデン)。プランターはスタッフ私物。
1F DINING KITCHEN
リビングからさらにフロアレベルを一段上げた29.3帖のダイニングキッチン。このフロアにもストーンタイルを採用し、土間ホールとリビングとの一体感を出している。ダイニング奥の窓の向こうは、グリーンが覆い茂るウォールによって上手に目隠し。無機質な塀ではなく、緑を生かすことで視覚的にも豊かな空間を創造している。この開口部によって、ほどよい光がダイニングキッチンを包んでいた。
階段下のスペースは、フロアにピットを開け、そのなかにプランターを複数個設置してミニジャングルのような植栽空間を作りあげている。外なのか内なのか、一瞬錯覚してしまう面白さで、白壁とストーンを基調としたモダンな室内に、生き生きとしたグリーンが効果的に映える。
1Fの階段脇にはシェフレラのプランターをレイアウト。シェフレラは熱帯原産の木で、手のひらを拡げたような立ち姿と丸みのある葉が特徴。風水では良縁やリラックス効果をもたらすと言われ、家族の気を調和してくれる家庭運も高いと言われる。ガジュマル同様、温暖な気候を好み、明るい室内ですくすく育つ(鎌倉ロコマート&ガーデン)。麻袋はスタッフ私物。
2F LDK
2FのLDKは35.5帖。リビングのフロアを下げて天井を上げる空間術(ダウンフロア&ハイルーフユニット)により、従来2.4m の天井高が3.43mにまで伸びている。ダウンフロアの真下は1Fの土間ホール。玄関と同じレベル(この家で最も低い層)にあるスペースだから、2Fのフロアを下げても土間ホールの天高は十分取れるのだ。ダウンフロアリビングの裏に隠された寝室、キッチンからダイレクトでアクセスできるランドリールームとバスルーム、いずれも壁やドアで完全に仕切られていないオープンな間取り。プライベートを尊重しながら、家族の気配も感じられる。そんな居住空間だ。ダイニングテーブル横に置いたフロアスタンドランプ(Sonechika)
2F DOWN FLOOR LIVING
DINING KITCHEN
リビングとひと続きになったダイニングキッチン。このスペースもハイルーフユニットによって天井が高くなっていて実に心地よい。アイランドキッチンに加え、6人掛けのダイニングテーブルを置いてもゆったり。サニタリーエリアとのパーティションを兼ねた作り付けのディスプレイシェルフには、洋酒と洋酒入れの置物をメインにアレンジを施した。
バスルーム&ランドリールームの横には、近隣からの視線を遮る高い壁を設けたサービスベランダを設置。湯上りに涼しい夜風を浴びながら、月明かりの下で美味しいビールを一杯。そんな癒しのひとときが、日常にささやかな喜びをもたらす。
STAIRS & VERTICAL LATTICE
1Fダイニングと2Fを結ぶスケルトン階段の横には、1Fから2Fまで貫くように縦格子の建具を設置。ほどよい目隠しの役割以外に、縦に長く使うことで吹き抜けの縦への広がりを強調させる効果もある。
このウッディな質感は、階段下の植栽や室内の随所に配置したグリーンと調和している。
SKY GARDEN
2F BEDROOM & WORK SPACE
2Fのダウンフロアリビングの裏手に設えた8.7帖の寝室。ベッドのヘッドボードを隔て、その奥には男心をくすぐる秘密基地のような書斎が付帯している。
チェアを1脚置ける程度の超狭小空間だが、セミオープンスペースであり(この書斎からもダウンフロアリビング脇の通路につづく)、書斎脇にはロング窓も付いているので窮屈さを感じない。趣味にもリモートワークにも活用できるマルチなベースメントだ。
ここは、没頭と熟睡を約束する家でもあった。
ヘーベルハウス 熊谷展示場 FREX2
ヘーベルハウス 熊谷展示場 FREX2
住所:埼玉県熊谷市石原369-1 熊谷ハウジングステージ
tel. 048-521-9600(10:00-17:00 火・水定休)
※写真の設えと実物は一部異なります
取材協力:
Sonechika
GT CAMERA
鎌倉ロコマート&ガーデン
BasShu