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IT MEANS LIFE STAGE.価値を落とさないマイホームの条件

HAUS

郊外の都市型住宅に大きな可能性がある。

 アメリカの景色のなかで最も健康的で羨ましく感じるのは、ロサンゼルス郊外ならばあちこちで見られる住宅街の風景だ。ウエストコビーナ、パサディナ、リバーサイド、サンベルナディーノ...街々の中心部にはシティーホールや美術館まで文化施設が充実し、少し走ればビッグモール、カーディーラー、モーテルといったお決まりの場所がある。街中を走る道路は総じて広く、両脇には手入れの行き届いた緑の芝生が植えられ、晴れた朝にはスプリンクラーが回っている。そこには必ずと言ってよいほど歩道があり、街路樹が茂っている。街路樹の向こうには頭より低い高さの鉄柵があって敷地内に広い芝生の庭が見え、数ヤード奥に平屋の家が建つ。そんな家並みがしばらくつづきながら、緩やかに坂道がカーブし、より敷地面積の広いレジデンスが建ち並ぶ丘陵地へ向かう、というパターンだ。 
 そんなL.A.カウンティに暮らすミッドクラスの家庭にホームステイしていたのは40年近く前のことだ。何より驚いたのは、家の裏手、道路に面していない「バックヤード」と呼ばれる側に、さらに大きな芝生の庭やスイミングプールを構えていることだった。週末になると家族はここでBBQパーティーを催し、ミニライヴを開き、子供たちは泳ぎ疲れたら芝生の上に寝転がってボードゲームを楽しんでいた。その家の主人に教わったのは「家の表は公的(public)な場所で、裏は私(private)な場所」ということだ。それは自分が生まれた時からすでにあった、住人として守らなければならないルールなのだ、と彼は言っていた。
 日本の長屋文化を否定するつもりはないし、家屋の倍の広さのバックヤードを持つのはむずかしいことも承知の上だが、都市生活者として、純粋に、40年前にアメリカで見たそのような住文化が日本の街々にも早く定着してほしいと願う。住宅が街の景観の一部として機能すれば、自然にその街の価値は高まり、同時にそこに建つ家の価値も高まっていくだろうに、と考える。そうか、渋沢栄一は田園調布の街づくりでそれをやってのけたのか、とも思ったりする。そんなことをつらつら思いまわしながら、ロケバスに揺られてやってきたのは厚木の街。編集部から1時間少々のドライブで到着する、最近頓に人気の郊外エリアだ。この街には米軍キャンプがある。丹沢や秩父へのゲートタウンでもあるので、アウトドア好きダッズにとっては一層魅力的に映るかもしれない。リサーチすると、この街の住宅公園に、今年建ったヘーベルハウスのFREXモデルがあることがわかった。その間取りを見て確信したので、今月の空間アレンジメントをここに決めた。
 このモデルハウスは、郊外に建てる理想的な都市型住宅のひとつであると同時に、玄関横のスペースをはじめ、我々中年男子が欲しくなるほとんどすべての居場所を備えていたのである。

HM RULE1 ガレージもしくはそれに相当する趣味空間。

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ヘイルメリーマガジンが考える「価値を落とさない都市型住宅」とは、①街の景観にプラスの印象を与えながら、②住まう人たちの人生に寄り添い、③彼らのライフスタイルを醸成する "刺激空間"を提供してくれる家───である。その刺激空間が、いきなり1Fのエントランスから広がっていた。「玄関」と呼ぶにはあまりにも贅沢な土間スペース。7~8帖ほどはあるだろうか。外に向かって窓を全開放することもできる。そこでわれわれはラレーの自転車やスツール、ディレクターズチェア、ランタン、洋書などを持ち込んで、大人のサイクルガレージを演出してみた。ゲストを招く「マイホームのなかのパブリックな応接空間」としても活用できそうだ。

HM RULE2 男子厨房に入るべき時代に相応しいダイニングキッチン。

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在宅時間が長くなったいま、家族とのコミュニケーションを「食」で取る重要性をあらためて感じる。だから、食事を愉しみ、語らい、笑い合える場所としてダイニングキッチンのデザインや設えには惜しみなく力を注ぎたい。厚木FREXモデルの1Fに広がる20帖のダイニングキッチンには、誰もが集いたくなる空気が漂っている。キッチンに備え付けられた長いカウンターテーブルとその奥につながるダイニングテーブルは、アットホームなビストロといった佇まい。料理好きな家人の喜ぶ顔が目に浮かぶが、同時に、男子厨房に入り家族や仲間に自慢料理をふるまってもみたくなる。食事の後はダイニングキッチンに接続した8.7帖のダウンフロアリビングで、語らいと寛ぎのひとときを過ごす。そんな時間を日常的に愉しめる空間なのだ。
ダイニングキッチンの壁に掛けた額装の絵画(Sonechika)

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アレンジしたサイクルガレージ空間に持ち込んだギアたち。壁の飾り棚には、ガレージツール、アウトドアツール、そして趣味の書を並べた。

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左からヴィンテージのインダストリアル・テーブルランプ、ハイロースツール、チェコの名門TON製のハイスツール。(以上Sonechika)

HM RULE3 日本人のアイデンティを呼び覚ます和モダン空間。

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階段を上がり、子世帯の住居を想定した3FのLDK空間に入ると、まずユニークなこの空間に目を奪われる。和モダンなデザインが施された小上がり空間だ。畳敷きではなく、ソフトクッションパネルを敷き詰めている点がカジュアルで、そのままゴロリと横になって本を読み、昼寝もしたくなる。こういうスタイルの小上りであれば、遊び盛りの子供たちも気に入ってくれそうだ。アメリカンスタイルのLDKとオープンに隣接しているのに違和感なくマッチしている点がすばらしいし、小上がりなった床下が収納になっている点も見逃せない。日本人ゆえ、住まいのどこかに「和」の要素を入れたくなる。郊外に建てる比較的広めの住宅であれば、このような空間演出も叶うにちがいない。

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2Fから階段を上がってくると、この棚が見え、その奥に小上りの和空間がレイアウトされている。棚上部に並べたシンガポール製一輪挿し、女神像のランプ、棚の手前に置いたソリッドウド・ハイバックローチェア(以上Sonechika)その他は編集部スタッフ私物。

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和空間の下は収納スペースになっているので昼寝用のブランケットはここに仕舞っておける。

HM RULE4 いつでも心身をリリースできる開放的なリビングルーム。

3FのLDKは約30帖の大空間。開放的なこの「無柱空間」を実現しているのは、建物外周部の柱と梁だけで建ち上がるFREXの強靭な躯体構造ゆえ。視線の先には、大開口から見える窓外の景色と、LDKに接続したベランダも広がっている。巧みなデザインとレイアウトによって横の広がりを感じさせ、同時に天井高を上げたハイルーフユニットを採用することで縦空間にも余裕を持たせている。キッチン→ダイニング→リビングが一体となり縦長にレイアウトされている空間だが、この設計に合わせフローリングを縦貼りしているのも隠しワザ。視覚的に奥行感をもたらし、より一層広い空間に感じさせてくれるのだ。このようなリビング空間を目の当たりにすると、ロマンスカーで都心まで1時間通勤できる厚木に土地買って、広めの都市型住宅を建てたいと真剣に思うのである。

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3Fに広がるLDK空間。写真手前にキッチンがある。右サイドに見えるベランダは十分にBBQを楽しめるサイズ。

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ダイニングテーブルに置いたアンティークの天秤 、レザーのプランターカバー(いずれもSonechika)。ギターコードが一目でわかる大判ポスターは編集部スタッフ私物

HM RULE5 堅牢な躯体構造によって生まれるレストストップ。

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3Fから屋上につづく階段下の通路。ここにソファーベンチを備え付けるアイデアは出色だ。吹き抜けの高い天井のおかげで窮屈に感じず、階上の窓からたっぷりと光が入り込み、他の場所にはない居心地を味わえる。光の廻りを配慮し、屋上への階段をスケルトン仕様にしている点、さらに天井にセットしたシーリングが空気の流れを作り出している点もよく考えられている。開放的でありながら、篭り感もある不思議で愉しい空間。気分転換に仕事をしても集中できそうだし、ギターを弾いたり(音が反響して最高に気持ちよかった)、読書や趣味に没頭したりするのにも向いている。家族が競って占有したくなりそうな空間だが、ヘイルメリーマガジンはここに映画『ブリット』のポスターを掲げ、男のレストストップを演出した。

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アメリカ国内で製作されたオフィシャルライセンスデザインによる映画『ブリット』のリプロポスター (Amazonで購入)。
S.マックィーン主演映画のパンフレットは編集長私物。

HM RULE6 テレワークにも集中できる篭り感抜群のベースメント。

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3Fのベッドルームの奥にある秘密基地のような書斎。テレワークにも集中できそうなコンパクトな勉強部屋だ。ベッドルームとは壁で仕切られていない点がチェックポイント。頭より低い高さの書棚でさり気なくセパレートすることで、ほどよい籠り感を生み出している。写真左サイドの窓からは光がふんだんに射し込むので、開放感も味わえる。この書斎空間に、アンセル・アダムスが使いそうな大判カメラを2機とインダストリアル系の椅子、ヴィンテージのトランペット、さらには往年の名QBテリー・ブラッドショーの写真などを持ち込んで少々ラギッドな演出を施してみた。読書の友であるウィスキーを並べるミニバーもすぐ手に届く場所にレイアウトでき、機能的なのだ。

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1930年代製のトランペット(Sonechika)、S.スティルスの名盤『Illegal Stills』(ディスクユニオン 下北沢店)

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写真左:スイスの名門カメラメーカー、ジナーの4×5大判カメラ。そのS型のエキスパートセット。
写真右:SINERと並ぶ世界最高峰の大判カメラメーカー、リンホフの4×5カメラ。ミルスペックにも採用された名機だ。(いずれもGT CAMERA)

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写真右:編集部スタッフがアメリカのモーテルやホテルに泊まるたびに(もちろん断りを入れて)頂戴してきたボールペン。なかなか手に入らないお宝だ。

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写真左:デンマーク製ヴィンテージのネストテーブル、アルミナムフレームのチェア。(いずれもSonechika)
写真右:書斎脇にはミニバーをセットしウィスキーのミニボトルを並べた。背景を飾るのは、1970年代を象徴するNFLのシーン。

HM RULE7 快眠できる寝室、そして雨の日でもテントを張りたくなるアウトドアリビング。

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3Fにあるベッドルームは11帖。書斎を含む広さだから間取図を見た限りちょっと狭いかもと思ったが、実際に取材すると、半屋外のアウトドアリビング「そらのま」とひと続きになっている開放感たっぷりの空間に驚いた。ゆっくり目覚めた週末は、そのまま「そらのま」でブランチを楽しめそうだ。取材日はあいにくの雨だったが、「そらのま」に一人用のテントを張って、試しにしばらく篭ってみた。ポツポツと雨音を感じながらの読書は、妙に心が落ち着く。これもまたアウトドアリビングのひとつの楽しみだと知った。

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ヘーベルハウスの都市型住宅FREX。重量鉄骨の柱や梁による強靭な構造体は耐力壁を必要とせず、また柱のスパンを大きくとれるため、開放的なリビング空間から自由な間仕切り演出まで可能にする。厚木住宅公園に建つのは、その最新型3F建てモデル。街の景観美に貢献する、白く眩いヘーベルウォールのファサードをもつモデルハウスだ。1Fは親世帯が暮らすイメージで床面積は124.49㎡。3Fは子世帯家族向けで床面積は106.67㎡。2Fは賃貸用に設計されていて、賃貸併用型プランも想像しやすい。1Fエントランスにはガレージ並みに広い土間が広がり、3Fにはダイニングテーブルが置ける広さのベランダと、半屋外のアウトドアリビング「そらのま」を設けている。さらに屋上にはルーフガーデンを設置。都市型住宅において庭を持たずして、家の中にいながら屋外で過ごすための居場所が充実している点も魅力。この秋の週末に、ぜひ訪ねてみてください。

ヘーベルハウス厚木展示場 FREXモデル
住所:住所:神奈川県厚木市妻田西1-9-28 厚木住宅公園内
tel.046-225-8566(10:00-17:00 火・水定休)
※写真の設えと実物は一部異なります

取材協力:
Sonechika
GT CAMERA
ディスクユニオン 下北沢店

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HailMaryこちらのコラムはHailMary11月号に掲載されています。

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