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新・ひとつ屋根の下の空間学【THE LIVING】ARRANGED BY HM MAG./PART Ⅳ

HAUS

親子の絆を深める家づくりにアメリカンライフスタイルは有効だ。

「リモートワークが増えたので品川のマンションを売って、柏の葉に一軒家を建てることにしました」、「大宮の実家に戻り、リフォームして親と暮らします」、「好きな波乗りができる鎌倉に移住し、家内とネットビジネスをはじめたい」...こんな話は、もはや編集部の周りでも珍しくはない。この1月末に総務省が発表した2021年の人口移動報告によると、東京23区の転出入者数は、初めて転出数が転入数を上回った。コロナ禍前は5万~7万人の転入超過で推移してきた数字が一気に逆転し、1万4828人の転出超過を示したのだ。「おうち時間」の増加にともない、あらたな生きがいやよりよい住環境を求め、郊外の都市へ移住する人が増えているのだろう。リーマンショック後のアメリカでは、マンハッタン在住の富裕層の多くがハドソン河を越えてニュージャージーに安住の地を求めたが、コロナショックを機にそれに近い現象が日本の首都圏でも起きている。同時にこの現象は、昭和の高度経済成長期を背景に、団地ブーム以来つづいてきた核家族化の時代が終わり、あたらしい価値観をもった家族融合の時代がこの国に訪れていることを告げているようにも感じる。郊外の贅沢な敷地内に建つモダンな重鉄の家に出くわすたびに、その思いは強くなる。
 豊川稲荷や東海道赤坂宿の旅籠など、歴史的遺産が数多く残る愛知県東三河エリア。今回我々が訪ねたモデルハウスは、豊川稲荷とJR豊橋駅のちょうど中間に位置する「豊橋中日ハウジングセンター」に建つヘーベルハウス。深く美しいメテオブルーの外壁が印象的な、東三河エリア最新モデルとして建てられたFREXだ。まさに郊外に建てたいサイズ感の重鉄の家で、1Fが親世帯、2Fが子世帯の住居を想定した二世帯住宅となっている。
 親世帯が暮らす1Fは、気持ちよい吹き抜けと和モダンの内装が特長。和室もセットされていて、50~60代の読者が喜びそうな空間が広がる。一方2Fの子世帯の住まいは、ミッドセンチュリーの家具が似合うアメリカンテイストのLDKが30~40代の読者の琴線に触れそうな印象だ。建物をひとまわりして感じたのは、「兄弟のように仲の良い親子が暮らす家」。親目線でいえば、子供となんでも気軽に本音で話し合える仲になりたいと思うし、そこに生きるよろこびを見つけたいとも願う。ヘイルメリーマガジンが提案する「世代も流行も追わない服装術や生き方」は、我らダッズ世代が若さを保つだけでなく、子供との関係を良好に保つうえでも強力なアシスト役になるにちがいない。これからの時代の「ひとつ屋根の下」には、スウェットシャツにデニムスタイルの兄弟や友人のような親子が同居し、フランクにものを言える関係を築いている。そんな関係をスムーズにしてくれる潤滑油のような居住空間こそ必要ではないか...そんなことをつらつら思いながら撮影ポイントを探り、アレンジのイメージを膨らませていった。

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2Fの子世帯の住まいを彩るダウンフロアリビングと「そらのま」の連続する空間。ダウンフロアリビングは8.0帖のリアルサイズで、天井と壁を木貼りによってアール状につなげた柔らかなデザインが印象的。リビングにセットしたラウンジチェアに腰かけると、「そらのま」を抜けて青空が顔をのぞかせる。

アメリカンテイストな子世帯のリビング空間

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豊橋展示場の2Fは、子世帯4人家族が暮らす想定でデザインされている。ダイニング・キッチン、ダウンフロアリビング、アウトドアリビング「そらのま」を備え、居場所や遊び場所が充実した間取りを実現。開口部を全開放すれば半屋外と屋内がひとつながりになった居住空間が姿を現す。またこのフロアにあるベッドルームには書斎スペースが付帯し、リモートワークにも対応可能。2Fは全体的にコンパクトな設計で、水回りを含めて「そらのま」に向かって開いたプライベート感あふれる空間だ。

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左:ハーマンミラー製品のプライウッド(曲げ木)製造を請け負っていたプライクラフト社のラウンジチェア+オットマン。(Sonechika)
右:2FのダウンフロアリビングにセットしたU.S.製ヴィンテージ・フロアランプ。(Sonechika)

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2Fのダイニング・キッチンは15帖の広さ。ミャンマーチークの無垢フローリングは足裏に心地よい感触を伝え、同時に味わい深い風合いも放つ。ウッドテイストを基調にしたアメリカンクラシック風のインテリアが心地よい食事シーンを演出してくれる。ミッドセンチュリーの家具も調和する空間で、長く暮らしていくうちに家具類の経年変化も楽しめそうだ。

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2Fリビングに接続した「そらのま」。横からの視線はルーバーによってほどよく目隠しされつつ、光と風がよく通り抜ける。「そらのま」のソファにかけたU.S.ウール・ブランケット、同じく床に敷いたイタリアン・サープラス・スタイル・ブランケット(以上PACIFICFURNITURE SERVICE)、エメコ・ネイビーチェア(Sonechika)

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2F洗面所も「そらのま」に面した明るい空間。その床に敷き詰められたヴィンテージ調のヘリンボーン・タイルの雰囲気のよさに思わず目を奪われた。

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右:ヴィンテージラダー、ペイントオールセット(Sonechika)

和モダンが映える親世代のリビング空間

1Fは親世帯が暮らす居住空間を想定。和モダンスタイルの洗練されたインテリアデザインに統一し、子世帯を含む家族全員が集まれる広々としたLDKを配置。親世代にはうれしい和室も備えている。この和室はゲストを招く応接空間として、また、書道や茶道など非日常のひとときを味わえる趣味的空間としても活用できる。屋外には坪庭や、ダイニング・キッチンとつながるテラスも設けている。吹き抜けによって1Fと2Fをつなぎ、2Fから光を落とす設計。それぞれの世帯の気配は感じるが、それぞれの生活空間はしっかり分けているのだ。

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1FのLDKは27.9帖。リビング上部は2Fへつながる吹き抜け構造で縦への開放感も味わえる。深みある色に経年変化したフローリング、タイル貼りの壁面、上下に広がる圧倒的な大開口。それらはすべて縦横の直線で構成されていて、心理的に縦横への広がりを感じさせるよう計算し尽くされたデザインだ。

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1Fのリビングには縁側もある。2Fベランダが軒代わりになり、外とつながる開放感が味わえる。

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1Fのダイニング・キッチン。アイランドキッチンと6人家族がゆったり座れるダイニングテーブルを配した一家団欒の場。屋外にはテラスもある。

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1Fにある8.0帖の和室。日常の中に非日常を味わえる空間として活用したい。琉球畳を配した和モダンな空間。奥の廊下から回り込み、さらに窓際に設けた2.7帖の広縁を通って畳の間までアクセスするという本格的設計。丸窓障子の向こうには小さな坪庭が見え、四季の変化を味わうことができる。

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和室へとつづく、御影石と砂利を敷き詰めた廊下。この雰囲気抜群の廊下をわたり、左へ回り込むと2.7帖の広縁と畳敷きの和室が現れる。この廊下の左手は収納スペースになっている。

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左:柳宗理の名作バタフライスツール。
右:継ぎ目なく輪を描くようにつくられたフレームの座イス、背もたれにあしらわれた格子が美しい座イス。
(以上天童木工)

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飛騨産業EIGERアームチェア(Sonechika)

ベッドルームに隣接した子世帯の書斎スペース

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2Fにある子世帯の書斎(6.5帖)は、10帖の主寝室と隣接している。書斎のデスクは作り付けで、ほどよい目隠しの役目を果たすシェルフと一体型のデザイン。書斎と寝室を隔てる壁はなく、部分的にスケルトンになったシェルフが両部屋をさり気なくセパレートしているのだ。この空間に、60s~70sサウンド好きの主人を想定してヘイルメリー流アレンジを施した。朝の目覚めはきっと快適で、昼間のワークタイムも心地よいに決まっている。

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小窓を通して柔らかい自然光がデスクに入り込む。小型のカメラを飾っておくのにもちょうど良い。

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左:ミッドセンチュリーデザインのサイドキャビネット。
右:比較的リーズナブルなわりに長く座っていても疲れないマルトスのアームチェア。(Sonechika)

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ヴィンテージの陶器製香水ボトル3種。(Sonechika)

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部屋に置いておくと効果的なデコレーションにもなるヴィンテージスーツケース。(Sonechika)

WORK WELL,SLEEP WELL.

そして一番欲しいのは
仕事と趣味と睡眠の質を高める瞬間移動可能なベッドルーム。

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愛知県・豊橋展示場に建つ3F建てFREXモデル。重鉄・システムラーメン構造、オイルダンパー制振システム「サイレス」を採用し、強固な躯体を実現したロングライフな住まいだ。間取り設計は、親(父・母)とその息子家族(4名)の計6名が暮らす二世帯住宅を想定。親世帯が暮らす1Fの床面積は149.29m2(45.16坪)、子世帯が暮らす2Fの床面積は141.69m2(42.86坪)。贅沢な広さには違いないが、比較的リアルサイズに近い間取りのため、現実的なハウスプランをイメージできる。力強さを見せる外壁は、人気の高い「メテオブルー」。室内にはダウンフロアやアウトドアリビングの「そらのま」、リビングの吹き抜け、アイランドキッチン・パントリー収納などが揃っている。FREXの魅力をたっぷり体感できる1棟だ。

ヘーベルハウス豊橋展示場 FREXモデル
住所:愛知県豊川市篠束町仲堀65-1 豊橋中日ハウジングセンター内
tel. 0533-78-5300(10:00-17:00 火・水定休)
※写真の設えと実物は一部異なります

取材協力:
Sonechika
天童木工
メトロク
PACIFIC FURNITURE SERVICE
クロサワ楽器日本総本店

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HailMaryこちらのコラムはHailMary2022年4月号に掲載されています。

※屋上で火気使用する際は、屋上防水シートへの飛び火対策のため耐炎性のある焚火シートなどを敷いてご利用ください。

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