PHOTO MESSAGE

「余白の在る家」に暮らしたい [後篇]

HAUS

これからの時代にふさわしいロングライフな住まいを
「余白の在る家」に見た。

 ヘーベルハウスが開発した重鉄の邸宅「RATIUS[RD]余白の在る家」(以下「余白の在る家」)。先月号の「前篇」では、おもに1FのLDKとその中間領域である「縁の間」に焦点をあてた。強靭な躯体構造を生かして築かれたシェルウォールが「縁の間」を囲い、心置きなく過ごせるプライベートエリアを創りあげていた。ヘーベルハウスが提案する「まちもり」の考え方を採り入れた植栽のレイアウトも巧みで、「余白」の持たせ方、「余白」の使い方を具体的に学ぶことができた。

 1Fには「縁の間」のほかに「光の間」という、現代の通り土間に見立てた空間がある。階段室の奥(北側)にある吹き抜けの庭に設えたシェルウォールがリフレクターとなり、柔らかい光をエリア全体に送り込んでいる。撮影日は猛暑日であったが、全館空調システムによって室内は快適な温度に保たれていて、「光の間」でも心地よく過ごすことができた。この居場所を、家族で共有できる読書スペースとしてアレンジした。

 2F奥の寝室に入り、カーテンを開けると、そこには空中庭園のような「青の間」が現れた。1Fから伸びたジューンベリーの木を囲うようにシェルウォールがレイアウトされていて、上手に室内を目隠ししながら、天からたっぷり光を招き入れている。ベッド脇のチェアに腰かけ、庭の景色を眺めているだけでも心が安らぐ。ここにあえてベランダを作らず、空洞にして1Fからシンボルツリーを伸ばしたことで「余白」が生まれ、それが心のゆとりにつながっていることを実感できた。この「余白」もまた、ヘーベルハウスの強靭な躯体をベースに生まれた独創的空間である。

78-story01_01.jpg

シェルウォールを効果的に起用した「余白の在る家」のファサード。ヘーベルハウスならではのノイズレス&モダンな外観だ。

1F 「縁の間」とつながるリビング

78-story01_02.jpg

1FのLDKから「緑の間」へ、さらに「緑の間」を一段下がるとオープンエアのテラスへつながる。独自の住環境シミュレーション「ARIOS」を通じ、季節や時間ごとの日照、日射、通風、採光などを細かく計算したうえで、最適なゾーニングや開口部が設計されている。

78-story01_03.jpg

1Fの中間領域に作られた「縁の間」。シェルウォールによって道路や隣家からの視線を遮りながら空や緑などの自然を上手に取り入れた居心地満点の空間。

78-story01_04.jpg

1Fの床面積は82.36㎡(24.9坪)。南側(下側)のシェルウォールを生かして「縁の間」を設けている。同時にシェルウォールによって室内のリビング空間もプライベートを確保できる。階段室を含む西側の空間が「光の間」となる。

78-story01_05.jpg

2Fの床面積は71.81㎡(21.7坪)。主寝室、書斎、子供部屋などリアルサイズの個室をレイアウト。寝室の南側にシェルウォールを生かした「青の間」が。プライベートを確保できる寝室に対し、書斎は窓側が開いた空間となる。

光の間 Stair Hall + Shell Wall

78-story01_06.jpg

シェルウォールがリフレクターになって柔らかい光を招き入れる。
だからここはもうひとつのマイルーム。

デッドスペースになりがちな階段下の空間。このエリアを心地よい居場所へと転換する発想で完成したのが「光の間」である。スケルトン階段を配置した吹き抜けの奥(北側)に大開口部をつくり、光や空の景色を招き入れている。大開口部の外に設けた堅牢なシェルウォールがリフレクターの役目を果たしつつ外部からの視線を遮るため、開放感とプライベート確保を両立させた空間が生まれる。ここにバタフライチェアをセットし、家族で共有できる読書コーナーをアレンジしてみた。吹き抜けによる縦への広がりと大開口の効果によって、リビングとはまた別の居心地を感じられる。休日にここでギターを鳴らしてもよいし、集中しやすい空間なのでリモートワークにも向いている。この心地よさは、室内の気温をつねに快適に保ち、新鮮な空気を循環させるヘーベルハウス独自の「ロングライフ全館空調システム」による効果も大きい。このシステムは、われわれダッズ世代にとって、心強い体温調節サポート役でもある。

78-story01_07.jpg

階段室の奥(北側)にある植栽エリア。上階に設けたシェルウォールに自然光が反射し、室内にやさしく光を送り込む。グリーンを育て、愛でるにも優れた中間領域だ。

78-story01_08.jpg

ベルギーで古くから実際に使われていた石畳を敷いたエントランス。その先に吹き抜けの「光の間」が見える。まさに現代の通り土間。

Stair Hall + Shell Wall

78-story01_09.jpg

「光の間」を開ければ
ファミリーのいるリビングルームのなかに 「間」が同化していく。

「光の間」とつながるLDKを間仕切るのは全面ガラス張りのブラックフレームスクリーン。完全に閉めれば「光の間」の篭り感が増し、個室のような居場所へと変身する。しかしガラス戸だから圧迫感が強まることはない。反対にスクリーンをフルオープンすれば、「光の間」とLDKは一体となり、開放感がいっそう高まる。

78-story01_10.jpg

「光の間」はLDKと同じタイル床を使用しているため、引き戸を開けると同じゾーンとして溶け込む。絨毯に置いたバタフライチェア(BKF CHAIR)、ベン・ニコルソンのシルクスクリーンポスター。(Sonechika)

階段に腰かけて本を読む。
そこから見下ろす1Fの風景にも余白を感じる。

78-story01_13.jpg

階段の中ほどから撮影した写真。シェルウォールが、2Fの手すりのガラスに写り込んでいる。このシェルウォールに反射した光が「光の間」全体に回っているのだ。

78-story01_14.jpg

階段室の壁は漆喰塗りの仕上げ。季節、時間、天候によって光の角度や光量が変わるので、壁の表情も千変万化する。

78-story01_15.jpg

2Fのフローリングにはヘリンボーンのウォールナット材を使用。フロア全体がウッディな雰囲気に包まれる。

2nd Floor

78-story01_16.jpg

全館空調のもと、3つのプライベートルームへつながるギャラリーのような回廊。

2Fへ上がってそのまま奥(東)へ進むと書斎と主寝室があり、階段を上がってUターンするように回廊を進むと子供部屋にたどり着く。居室をすべて隣接させず、ウッドフローリングの回廊を挟むことで、あらたな居場所を創出している。回廊に低座のシェルフを設け、壁面や棚上にアートを飾ればちょっとしたギャラリーの完成。これもひとつの「余白」空間活用例だ。

青の間 Bed Room + Shell Wall

78-story01_17.jpg

「縁の間」、「光の間」に加え、「余白の在る家」に採用しているもうひとつの"間"が「青の間」だ。坪庭から着想を得て創出した空中庭園のような空間で、主寝室に設けた大開口の外側にシェルウォールで囲った奥行の深い吹き抜け空間を設け、その空洞部に背の高いシンボルツリーを植えている。撮影時は夏の枝葉が生き生きと伸び、白いシェルウォールとグリーンの相性がよく、寝室からの眺めに彩りを添えていた。カーテンを全開にしてもシェルウォールがあるからプライバシーは守られる。ここでは静かに、季節ごとに移り変わる自然の美しさに触れていたい。

Bed Room + Shell Wall

78-story01_18.jpg

空中庭園のような「青の間」を創りあげている強靭な躯体とシェルウォール。

シェルウォールによって大胆に囲われた「青の間」。せり出したシェルウォールの奥行はなんと2.7メートル。高さ5メートルに迫るジューンベリーでも悠々と枝葉を伸ばせる「空洞」だ。この奥行ある空中庭園が窓外の圧迫感を消し去り、心地よい「ゆとり」をもたらしてくれる。大きな庭を持てなくてもこれがあれば十分、と納得できる空間だ。

78-story01_19.jpg

「青の間」の真下は開いたゾーンとなり、石畳とミニガーデン、さらにオープンエアのテラスへつながる。写真手前が「縁の間」。

78-story01_20.jpg

寝室の壁と天井は漆喰塗りを採用。ほどよい光が室内に入り込み、グレーの壁もやわらかく照らされる。

78-story01_21.jpg

4.3帖のウォークインクローゼット。天井部まで伸びたロングFIX窓は、「光の間」に架かるシェルウォールをリフレクターに室内へほどよい光を届ける。窓外では1Fから伸びたグリーンの様子を楽しめる。

2F DAD'S Room

78-story01_22.jpg

隣りの寝室とは一転し、外に向かって全開の書斎。

「余白の在る家」は、各スペースともリアルサイズで設計されているので、部屋づくりの参考になりやすい。2Fにある書斎は7.3帖の広さ。しかし大開口部によって数字以上に広く感じる。隣にある主寝室がシェルウォールで外からの視線を遮断しているのに対し、書斎は南側を全面開いているので、屋外の景色が一望できる。デスク向かいの窓にビスタウィンドウを起用し、大開口部を演出しているのだ。

78-story01_23.jpg

窓の向こうを見下ろせば「縁の間」の風景。
ブラインドを降ろせばシアターに大変身。

78-story01_25.jpg

書斎の東側は「青の間」を囲うシェルウォールによって大通りの喧噪がかき消される。

78-story01_26.jpg

78-story01_27.jpg

書斎の白壁は漆喰塗りでなくあえてフラットに仕上げている。プロジェクターを投影し、100インチクラスのホームシアターとして活用するためだ。昼間は屋外の景色や青空を楽しみつつデスクワークに勤しみ、夜の時間帯はひとり映画鑑賞に没頭するのだ。

SON'S Room

78-story01_28.jpg

限られた敷地に建てる都市型住宅でも余白ある空間を創り
ゆとりある暮らしを送ることができる。

6帖の洋室は子供部屋の設定。「開いた」書斎に比べ、「閉じた」空間演出が施されている。小さな窓の外に目をやると、「縁の間」にかかるスラブ屋根が効いていて、さらに「青の間」のシェルウォールが大通りの目隠しになっているので、より篭り感を味わえる。子どもが成長して巣立ったら、ゲストルームに活用してもいいし、趣味部屋として使うのもありだろう。

78-story01_29.jpg

78-story01_30.jpg

「緑の間」にかかるスラブ屋根と「青の間」のシェルウォールによって室内の篭り感は増すが、真下を見やると、書斎同様1Fに植えたグリーンを観察できる。

ヘーベルハウス 港南台展示場

78-story01_31.jpg

78-story01_32.jpg

RATIUS [RD] 余白の在る家
ヘーベルハウス 港南台展示場

神奈川県横浜市港南区港南台4-23-1
tvkハウジングプラザ港南台内
tel. 045-832-6100(10:00-17:00 火・水定休)
※写真の設えと実物は一部異なります

取材協力:
Sonechika
Kyoto Asahiya

hailmary_78_01.jpghailmary_78_02.jpg
HailMaryこちらのコラムはHailMary2024年10月号に掲載されています。

PHOTO MESSAGE