新居のおかげで彼らの関係は深まったようだ。
私は、妻と長男、そして9歳のオス猫、8歳のメス犬と暮らしている。猫との出会いは9年前。代々木の街なかを自転車で走っているとき、ペット保護団体の事務所の窓に貼られた「ホゴネコいます」のコピーに足が止まった。窓口にいた女性によれば「この子は生体を扱う問屋ルートで売れ残った子猫のうち、保健所行きを免れた一匹」で、初めて名を聞くオシキャットという猫種であった。その場で私は里親譲渡誓約書にサインし、デイパックに子猫を背負って家に戻った。
犬との出会いはその数か月後。やはり自転車で静岡を巡った折、草薙球場近くの喫茶店で猟師の老人と出会った。老人は猟犬のブリーダーでもあり、住まいに招かれると敷地内では50頭以上もの猟犬の子たちが飼育されていた。ポインターやブリタニースパニエルといった大型犬に交じって一頭だけ、小さな金色の毛並みをしたテリア犬が飛び跳ねていた。奥様が「彼女はボーダーテリアというキツネ狩りの専門家。日本には百頭もいませんのよ」と教えてくれた。その夜私は老夫婦の屋敷に一泊し、ボーダーテリアと一緒に寝た。翌朝、立ち去ろうとする私の胸に彼女が飛びこんできた。「この子は販売の対象じゃないし、私たち夫婦もあと10年もつかどうかわからないから」そう笑って老人は無償で彼女を譲ってくれた。
以来、彼らとの暮らしがつづいている。2022年秋にはマンションから一軒家に引っ越した。新居はヘーベルハウスだ。環境が変わるので大丈夫かなと思ったが、そんな心配をよそにのっけから悠々自適の毎日を送っている。人間以上に居場所を多く確保していて、猫は高い場所と陽当たりの良い窓際を、犬はリビングのソファと玄関ホールのタイルの上を好み、そしてふたりとも水平連続窓のあるダイニングエリアがお気に入りだ。
オシキャットのオスとボーダーテリアのメスが暮らす浜田山シェルター(ヘーベルハウスのCUBICモデル)。2Fのダイニングエリアには、9つのロングFIX窓を並べた水平連続窓からほどよい光が差し込んでくる。このエリアは、冬場でも昼間は暖かく過ごせる。猫は階段を上がった腰壁の上で日向ぼっこし、犬はヘリンボーンのフローリングの上でよく寝そべっている。
光と風を取り込む"装置"の効果を彼らはちゃんとわかっている
マンション暮らしの頃、我が家の猫と犬のあいだにはしょっちゅう小競り合いがあった。寝床の取り合いによる粗相(とくに猫)も見られた。新居に引っ越しとなると余計に不安になったが、居場所の棲み分けができたからだろう、喧嘩も粗相も不思議なくらいなくなった。家を建てる前はキャットタワーを導入しようとも考えた。しかし、新居の設計を担当していただいた荒川圭史さんが描く空間には、猫が自由に歩ける高所を思った以上に確保できることを知り、それもやめた。あいかわらず犬はチャイムが鳴ると吠えるのだが、向かいのご主人からは「いえいえ、ワンちゃんの啼き声は聞こえませんよ」。実際玄関先に出てチャイムを押してみると、遠くで啼いているようにしか聞こえず、ヘーベルハウスの遮音性の高さに驚いた。その意味でも、住みやすい家だなぁと実感している。
家の2Fにあるリビング兼ミニシアター空間は、東側にモンドリアンウインドウを取り付けてあり、冬でも暖かく柔らかい光が差し込んでくる。さらにその南側に設えた窓からは、心地よい風が通り抜ける。その空間にソファを置いて映画や音楽を楽しんでいるわけだが、私たちが仕事や学校に出かけている昼間は、そのソファが彼らの居場所になる。昼間の特等席がどこにあるのか、お互いよく知っているのだ。
昼間はモンドリアンウインドウの下に置いたソファが彼らの寝床になる。
ミニシアターの間仕切り壁には間接照明が入っている。猫はその上で起用に寝転がったり休んだりする。一歳下の犬よりもつねに優位に立っていたい性格ゆえ、ここならば相手を見下ろせるし、邪魔もされずに済む。
キッチンカウンターはキャットウォークの役目も果たす。おやつが欲しいとき、このルートを通って台所に立つ家内のもとへおねだりに来る。
狭小部屋のラグの上は犬の定位置。土を掘るように前足で床をかく癖があるので、生地の強いBasShuのコットンラグには助かっている。
狭小部屋にはMUJIのスタッキングシェルフを入れた。縦30cm強の洋書が収まるだけでなく、100円ショップで購入した猫部屋がひとつの口にすっぽり収まってくれた。1メートル20センチほどの高さがあるが、猫は難なく出入りできる。
人生の伴侶たちがよろこぶヘーベルハウスの空間づくり。
筆者が新居にヘーベルハウスを選んだ一番の理由は、強靭な躯体構造によって、より広くより自由に家づくりを行えるという特性を、モデルハウス取材を通じて実感したからだ。写真の邸は重鉄モデルのFREXを躯体にもつ3F建ての好例で、そのメリットを最大限に活かしながら、余計なものを取り除いてノイズレスで伸びやかなリビング空間をつくりあげている。
IN THE LIVING
飽きの来ないモノトーンのインテリア構成も見事だし、壁の白とグレーの使い分けも上手い。それ以上に感心するのが、2Fのリビングに愛犬たちと一緒に寝転ぶことのできるL字型のソファが堂々とセットされている点だ。以前、行きつけの獣医に教わったことがある。「家のなかで最も人の匂いがついている場所ってどこだかわかります?リビングにあるソファです。ご主人もよくソファで寝てしまって、ヨダレなんか垂らしちゃって奥さんに叱られること、ありません?ソファの上でワンちゃんがスヤスヤ眠れるのは、一番安心できる場所だからなんです。ワンちゃんのいるご家庭のソファはゴロンと寝られるタイプがいいんですよ」。
ノイズレスで余白を活かした居住空間を彼らも気に入っているようだ。上の段に座っているのがチワワとヨークシャーテリアのミックス、下の段にいるのがダックスフンド。
TILE FLOOR
ヘーベルハウスを取材していてよく目にするのが床タイル。これは犬たちにとって大変ありがたいマテリアルである。写真は、ダウンフロアリビングにタイルを敷いた例。タイルは滑りにくく、汚れに強いというだけでなく、夏場は犬たちがクールダウンし体温調節できる絶好の居場所になる。筆者が飼っているボーダーテリアのように寒冷地出身の犬にはとくに喜ばれる。事実、猛暑日にクーラーを入れ忘れて外出したら、犬は玄関の床タイルの上に寝そべっていた。ヘーベルハウスは「DOMA」をテーマに、玄関脇などに広がるタイル敷きの土間空間を提案しているが、敷地に余裕があれば、犬のためにも「DOMA」をぜひ取り入れてみたい。
CLEAN AIR
吹き抜けやハイルーフユニットなど、天高の室内空間はペットの匂いが篭りにくく、人もペットも快適に過ごすことができる。さらに最近は、フロア全体を快適な温度に保ち、きれいな空気を循環させる「ロングライフ全館空調」もヘーベルハウスは新たに採用している。写真の「レジデントサイト横浜町田展示場」もロングライフ全館空調を採用しているので見学の価値あり。空気循環システムが整っていて、これだけの抜けがあれば完璧だ。(住所:神奈川県相模原市南区上鶴間本町9-50 tel.042-711-6570 / 10:00-17:00 火・水定休)
PANTRY SPACE
この写真もレジデントサイト横浜町田展示場を取材した時に撮影した一枚。キッチンカウンターのパーティションの裏手にパントリースペースが広がっていて、ゲストの視線から隠れる場所には犬の食事スペースもあった。パントリーは収納力が抜群で、大容量のペットフードからおやつまで楽に収納できるので、給餌はすべてこの空間で賄える。このような「隠す」空間もヘーベルハウスは自由自在に作ることができるのだ。
GARAGE
ガレージはクルマやバイクなどの趣味を充実させるための秘密基地である。同時に、愛犬家にとっては落ち着いて人生の伴侶と過ごせる空間でもある。家族とほどよい距離感を保ちながら過ごせるので、「離れ」的要素が強い。フローリングの汚れを気にすることなく、人も犬も土足で楽しめるし、毛の手入れなどの作業にも向いている。願わくばワークデスクを持ち込んでリモートワークできたり、ブーツのまま犬と寝られるソファベッドを持ち込んだりして、終日愛犬と過ごせる隠れ家にアレンジしたい。この発想はヘーベルハウスの提案する「DOMA」とも共通している。「GARAGE & DOMA」を新たなドッグライフ空間としてアレンジ強化していきたい。
一段上がった場所にワークスペースを設けたビルトインガレージのアレンジメント例。土足OKの床タイルは愛犬にお誂え向き。夏場はクールダウンもできる。
OPEN DOOR
筆者が新居を建てた際にヘーベルハウスにオーダーした「ペット対応片開戸」。ペットが自由に出入りできる小さな開戸がついた建具で、犬も猫もすぐに潜り抜けることができた。冬の寒い時期にドアを開け放しにしておく必要がないので便利。開戸を使用しない場合は、カバーを簡単に付けられる。
※光の関係でオレンジに見えているパネルの色は、スモークブラウン色です。照明などにより色の印象が異なる場合があります。
CAT'S SPACE
猫の居場所はさまざま。昼間は陽当たりの良い窓際でまどろみ、ときおり思い出したように窓外の景色を楽しんでいる。また、網戸越しに入り込む風に触れて気持ちよさそうにしているかと思えば、高い場所に寝床を探して間仕切り壁の上まで跳びあがる。その意味で、空間設計の自由度が高いヘーベルハウスは猫にとってもありがたい家である。吹抜け部に梁を通してキャットウォークにしたり、高い場所にのぞき窓を作ってあげたり、壁をくり抜いて通り道を作ってあげたり、多種多様の仕掛けを演出できる。
猫のニオイ対策は?
PET DINING
猫も犬も食事は落ち着いた所で取りたがるので、安心して食すことのできる空間を作ってあげたい。上写真は(壁の向こうにある)子供部屋の一部を削って作ったペットのダイニング空間。テーブルは弊誌でもおなじみアイアン家具職人の浅田圭介さんに教わって筆者がハンドメイドしたもの。上が猫用、下が犬用、それぞれのテーブルに自動給水機をセットしている。下写真は棚の下を利用して犬用のダイニング空間を拵えた例だ。
DOG'S ROOM
猫は高い所に行けばひとりの時間を持てるが、犬の場合はそうはいかない。だからフロアレベルに「犬間」を拵えてやりたい。どんなに人懐こい犬でもひとりで篭りたい時がある。干渉を受けずに落ち着ける場所を与えてもらうことで、吠えの回数が減り、気持ちも和らぎやすくなると言われる。コーナー空間を上手に間仕切り「犬間」として有効利用できるのもヘーベルハウスの特長だ。
犬の足洗いは?
SUNNY PLACE
太陽や風の恵みを感じながら過ごせる半屋外空間は、人間だけの居場所ではない。人生の伴侶であるペットにとっても居心地のよい場所にちがいない。ヘーベルハウスのアウトドアリビングでしばしば見かけるのが、壁の代わりに設えた「ルーバースクリーン」。半屋外空間では、犬はともかく、猫が外へ飛び出さないか心配だが、細かい格子状のルーバースクリーンは安全だ。乗り越えない高ささえ確保できれば跳び越えることはなく、屋外に興味津々の猫の満足度を高めてくれる。筆者宅の2Fのベランダの場合は、隣家のベランダから上半身が丸見えになるため目隠し用に約90cmの高さのパネルを笠木に付け足した。その結果、猫が跳び越えられない高さを確保でき、周囲は空しか見えないプライベート感たっぷりのミニアウトドアリビングができた。また、1Fに作ったウッドデッキと寝室を開放して犬と遊ぶときには、寝室の入口をシャットアウトして猫の家出を防いでいる。
ルーバースクリーンは近所の視線を感じることなく光や風をしっかり通してくれる。高ささえしっかり取れば、猫が外へ飛び出す心配もないので安心だ。