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HAUS

ロマネスク様式が育み、ル・コルビジェが求め、ヘーベルハウスが極めた、モダニズムの永久空間。

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南仏プロヴァンスの田舎町にあるル・トロネ修道院だ。いまでも多くの建築家が最も好きな建造物として掲げる。この修道院が建てられた1175年前後、大都会パリでは、中世ヨーロッパのゴシック様式を代表する煌びやかな大聖堂の建設がはじまっていた。当時の都市型建築物の多くは、この大聖堂のように、外壁も柱も内壁も華美な装飾で覆い尽くされていたわけだが、ル・トロネ修道院には一切それが見られなかった。逆に非装飾の限りを尽くしたような、厚みある石の壁に覆われたシンプルかつマッシブな建物。しかし計算されたプロポーションや窓の取り方によって光の諧調が完璧で、神聖なる場所としての存在感は抜群だ。1983年夏、バックパッキングの貧乏旅の途上、この修道院の裏庭を借りて一泊したことがある。翌朝お礼参りに訊ねた礼拝堂は、窓が少なく、またそれぞれの窓が小さい印象だったが、室内は明るかった。また、屋外の暑さに比べると、礼拝堂のなかの涼しさといったらなかった。石畳のひんやりとした足元の感じはいまでもよくおぼえている。

L'abbaye Du Thoronet
ル・トロネ修道院(1160~1200年頃建設)
南仏プロヴァンスにある3つのシトー会修道院の一角。モダニズムの建築家たちに大きな影響を与えた。

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ル・トロネ修道院に代表される建築スタイルは、18世紀後半から19世紀初頭のロマン主義的な時代の流れのなかで「ロマネスク様式」と呼ばれるようになり、巨大かつ華美が売りのゴシック様式とは一線を画した。さまざまな装飾を施し、壁や柱の物理的な存在感をできるだけ消そうとしたゴシック様式に対し、「ロマネスク様式」建築物は、壁や柱の存在感をあるがままに伝えた。剥き出しの美学、その原点がここにある。この、革命的な「ロマネスク様式」の建築物を徹底的に研究した男が、ル・コルビジェだった。「白く軽快なモダニズム」への方向転換後、コルビジェは、サボア邸などの大作を残していくが、その後期の作家活動に最も大きな影響を与えたのが「ロマネスク様式」の建造物だったと言われている。とりわけ、上の写真のラ・トゥーレット修道院を設計する際には、何度もプロヴァンスを訪ね、ル・トロネ修道院の実測を重ねてデザインモチーフにしたそうだ。彼は後に、「この(ル・トロネ)修道院のディテールひとつひとつが、創造的建築の原則を象徴している」と語っている。

Couvent de la Tourette
ラ・トゥーレット修道院(1957年建設)
晩年のル・コルビジェ代表作のひとつ。仏リヨン郊外に建つ。「ル・トロネ修道院」をモチーフにしている。

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写真左サイドに注目。建物頂部まで切り込んだスリットからの光の諧調によって、室内に崇高で落ち着いた雰囲気がもたらされている。ル・トロネ修道院やラ・トゥーレット修道院など歴史様式の研鑽と、最新の工業化住宅技術との融合が、ハイエンド邸宅としてRAUMFREXの付加価値を高めている。

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HailMaryこちらのコラムはHailMary10月号に掲載されています。

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