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日本で進化するモダニズム邸宅 The Industrialized Haus developed creatively in Japan

HAUS

和洋のハーモニーを奏でるモダニズム邸宅には最良の住み心地が宿っている。

 今月訪ねたのは愛知県岡崎市にある住宅展示場。なかでもひと際存在感を放っていたのが、へーベルハウスの2F建てFREXモデルである。重鉄・システムラーメン構造とALCコンクリート・ヘーベルに包まれた、建物の強靭な骨格が感じられるモダニズム邸宅で、1F・2Fともにアウトドアリビングが充実している点も印象的だった。

 親世帯の住まいを想定した1Fには、ダウンフロアリビングを擁するLDKのほかに、高級ホテルの一室を思わせるモダンな和室が広がっていた。玄関を入って左が洋間、右が日本間という設計だが、モダニズム建築の空間設計もここまできたかと思わせる、和洋美しいハーモニーが奏でるフロアである。一方、子世帯の住まいを想定した2Fのリビング空間は、3メートルを超えるハイルーフユニットと半屋外空間「そらのま」との連結によって、贅沢な広がりとゆとりを実感できた。リビングとキッチンと「そらのま」の三位一体空間は、家族との団らんから週末のホームパーティーまで、目的別にアレンジしやすく、住まう者の想像力も育ててくれる。また、いずれのフロアにもプライベートタイムを充実できるパーソナルスペースが複数個所あり、メリハリをつけた大小(公私)空間の棲み分けも、とても参考になった。

1F LDK

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 1Fは親世帯の住まいを想定した設計。ウォールナットの挽板フローリングで統一されたLDKには、さまざまな仕掛けが施されている。まず20.5帖の開放的なダイニングキッチンとつながる10.2帖のリビングは、床を一段下げたダウンフロア仕様。また、ダイニングキッチンの正面に作り付けられたディスプレイシェルフの裏には4.0帖と2.0帖のパーソナルスペースをそれぞれ配置。この2つの空間は仕切られているので夫婦それぞれの趣味部屋として活用できる。さらに、ダウンフロアリビングを囲むように配置されたデッキテラスと、ダイニングキッチンから出られるタイル張りのアウトドアリビングによって、BBQからティータイムまで、オープンエアの暮らし方のバリエーションが広がる。

1F DINING KITCHEN

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ダイニングキッチンは20.5帖の広さ。大きめのダイニングテーブルを置いても余裕たっぷり。大理石を使用したアイランドキッチンは存在感抜群。ここで料理をふるまいながらゲストと歓談する、そんなシーンを演出できそう。キッチン台の右手と後方には収納たっぷりの棚をセット。食器や酒器のコレクションも増えるにちがいない。また、ダイニングテーブルの先には、オープンエアでティータイムを楽しめるアウトドアリビングが配されている

1F DOWN FLOOR LIVING

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ダウンフロアリビングの南側には2面にわたって天地丈のフルオープン窓を設け、たっぷりと光が差し込むよう工夫されている。リビングはダイニングキッチンとつながっているが、フロアレベルが一段低いぶん篭り感が得られ、また天井が高くなったぶん縦の開放感もおぼえる/サイドテーブルの上にセットしたテーブルランプはホルムガード製、アイスペール、ソファに掛けたオルテガのヴィンテージラグ(以上Sonechika)

1F DISPLAY SHELF

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リビング空間にひと際映えるのが、天井まで連なる作り付けのディスプレイシェルフ。間仕切りの役目を果たしており、シェルフの奥には2つのプライベート空間がレイアウトされている。シャットアウト空間ではないので、奥からでもLDKにいる家族の気配を感じられる。
左写真はミニボトルを入れた地球儀、右写真はアントニオ・ガウディのガラスベース(以上Sonechika)

& PERSONAL SPACES

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左:ディスプレイシェルフの奥に秘密基地のように設けられたパーソナルスペース。キッチンから向かって左側に位置する4.0帖のこの小空間は、釣り好きで読書好きの主人の趣味部屋を想定してアレンジを施した。
窓越しにデッキテラス(ダウンフロアリビングにつながっている)が広がっていて、明るさも前方の開放感も申し分ない/サイドテーブルはTECTAの「K22」、椅子はエメコの「ネイビーチェア」(以上Sonechika)
右:ディスプレイシェルフの奥(キッチンから見て右手)にはもうひとつパーソナルスペースがある。2.0帖のさらにコンパクトな空間だ。こちらはお茶や書を嗜むパートナーの趣味部屋を想定してアレンジ。作り付けのデスクと棚が上手にセットされていて、写真では確認できないが、ディスプレイシェルフの裏面もすべて書棚になっている。この空間の右手にあるアウトドアリビングから窓越しにほどよい光が差し込む。

1F JAPANESE ROOM

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 この邸宅のエントランスを入って右側が9.5帖の和室だ。琉球畳を敷き、和モダンテイストにまとめたシンプルなインテリアが目を惹く。ホテルライクな高級感が漂い、ゲストをもてなす場所としても最適だ。天井には段差をつけ、室内の中心部のみ縦空間の広がりを感じさせる工夫が施されている。このデザインによって空間にリズムが生まれ、間接照明が効果的に機能する。和室に入ると右側に小庭があり、植栽の風景が目を楽しませ、ほどよい光も差し込む。窓からの光量はプリーツスクリーン(蛇腹状のスクリーン)によって調整可能。
今回はエントランスホールから和室に向かう廊下に照明スタンドとスツールをセットし、和室と連動するコーナーもアレンジした。

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和室にはヘーベルウォールとシックな塀に囲われた小庭が付いている。季節の緑を眺めながらリラックスした時間を過ごせそう

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廊下に置いた照明スタンドはフランクロイドライトの「タリアセン1 フロアランプ」(リプロダクト)(Sonechika)。スツールは、1954年に完成した清家清設計「数学者の家」の玄関先に置くためにデザイナー渡辺力が作りあげた「ソリッドスツール」。座面はウォールナット材、脚部はスチールロッド、(メトロクス)

2F LDK

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 2Fは子世帯の住まいを想定した設計。見どころは、31.3帖の巨大なLDK。ハイルーフユニットを採用し、天井高を3040mmまでアップ。縦空間の広がりによってより開放的に感じられる。挽板ヘリンボーン・ブラッシュドオークのフローリングを採用したリビングは、1Fとはまた別の印象を与えるモダンな空間を演出している。LDKの南側は「そらのま」と直結し、北側もロッジアとスカイウォールベランダの半屋外空間と接続。全開して大人数のパーティーを開きたくなる。一方、このLDKに隣接する2つの狭小空間も印象的。ひとつは南側の「そらのま」につながる床上げの畳コーナー。もうひとつが北側のスカイウォールベランダの手前に設けたリーディングヌックだ。

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リビングの中央にはキャメルカラーのハーマンミラー「イームズラウンジチェア&オットマン」をアレンジ。奥に見えるテーブルは同じくハーマンミラーの「ネルソンペデスタルテーブル」(以上Sonechika)

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リビングに持ち込んだギターはギブソンの「ブルースキング」。小ぶりながらパワフルでソウルフルなサウンドを響かせる(スタッフ私物)

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ブロック調のカウンターキッチンを配したダイニングキッチン。右に見えるのが北側のロッジア。カウンターにセットしたハイスツールは右がアルペールの「BABAR」、左がマジスの「パイプスツール」(以上Sonechika)

2F PERSONAL SPACES

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 キッチン脇に設けられているのは、床上げの畳敷きスペース(下写真)。「そらのま」にも直結していて、自然の明かりで読書や将棋を楽しめる。ごろんと昼寝するのにもちょうどよいサイズだ。一方、小さな読書空間であるリーディングヌック(上写真)の存在もうれしい。仕事や家事で疲れたら、この小さなベンチに籠って好きな本に目を通す。窓の外を眺めながらリラックスもできる。横になって体を伸ばしてもいい。どちらの空間も、家族の誰もがいつでも自由に楽しめる。強靭な躯体構造によってこのようなスペースを自在に作れるのも、ヘーベルハウスならではだ。

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畳の下は収納スペースになっているため空間使いに無駄がない

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床下げの畳敷きスペースは「そらのま」に直結している空間ゆえ、「空」の額をアレンジしてみた。(Sonechika)

2F SORANOMA

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英国製ヴィンテージ・スタッキングチェ(Sonechika)

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2FのLDKに接続する半屋外空間「そらのま」。屋外から見るとよくわかるが、近隣からの視線をコントロールするヘーベルウォールが目隠しになり、プライバシーをしっかり保つ。この、立ち上げた外壁の存在は、外観デザインにもほど良いリズムを与えている。実際に「そらのま」に入ってみると、天が開いていて、最高の開放感を味わえる

2F WORKING SPACE & BEDROOM

家族と向き合う時間と自分と向き合う時間が自然にセパレートされた空間のなかに息づく。そんなモダニズム邸宅に一生暮らしたい。

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 作り付けのデスクとシェルフを備えた3.2帖のワークルームは、広すぎず狭すぎず、絶妙のサイズ。仕事関係の資料やお気に入りの書を並べ、リモートワークに趣味に活躍してくれそうだ。また、デスクの真後ろにはスカイウォールベランダがあるので、気分転換もしやすい。このワークルームは、7.9帖の主寝室に繋がっている。開口部たっぷりの主寝室は居心地満点で、心地よい目覚めができそう。白い壁面を大きくとってあり、プロジェクターを投影してホームシアターを楽しめるのも特長だ。LDKが家族との時間を充実できるスペースであるのに対し、このワークルーム&ベッドルームはプライベートの時間を満喫できる空間だ。

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ヘーベルハウス 岡崎展示場 FREX2

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ヘーベルハウス 岡崎展示場 FREX2
住所:愛知県岡崎市昭和町字木舟25 岡崎中日ハウジングセンター内
tel. 0564-32-6221(10:00-17:00 火・水定休)
※写真の設えと実物は一部異なります

取材協力:
Sonechika
GT CAMERA
メトロクス
ACTUS

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HailMaryこちらのコラムはHailMary2022年11月号に掲載されています。

※屋上で火気使用する際は、屋上防水シートへの飛び火対策のため耐炎性のある焚火シートなどを敷いてご利用ください。

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