人気高まる重鉄の家。
その極致といえる居住空間を思うがままにアレンジした。
重量鉄骨造の都市型住宅(以下「重鉄の家」)の人気がますます高まっている。堅牢で安心して暮らせる家として、また間取りの自由度が高い家としても評価されており、在宅勤務増にともなう一戸建て需要から、親から受け継いだ自宅の建て替え需要まで、重鉄の家を選択する人たちが増えている。
一般的に鉄骨造の家は、木造やRC造の家に比べ熱伝導率が高く、夏は暑く冬は寒くなりやすいと言われる。しかし、弊誌が「究極のギア」として取材しつづけている重鉄の家:ヘーベルハウスは、軽量気泡コンクリート「ヘーベル」を武器にそんな課題を難なくクリアしている。正確に書けば、「ヘーベル」には、耐久性、耐火性、断熱性だけでなく、軽量性、高強度、寸法安定性、遮音性、調湿性といったマルチ機能が備わっている。初めて取材したとき、それが水に浮く軽さであること、厚みが75mmもあること、自然由来の「呼吸する」素材であること、さらに(ドイツで生まれ)日本で進化した「ヘーベル」のパネル材には独自の研究開発によって細かい鉄筋が組み込まれていることも知り、"最強の壁"のディテールに心惹かれた。
ヘーベルハウスのなかでも最強の躯体をもつモデルが、重鉄・システムラーメン構造によって建てられるFREX(フレックス)だ。その骨組みには、高層ビルの制震装置にも使われているオイルダンパーを一般住宅用にカスタマイズした「サイレス」というシステムが標準装備されている。この強靭さをベースに、外周部の柱と梁だけで躯体が立ち上がるため、間取りの自由度がさらに高まり、広い開口部をもつ空間や心地よい吹き抜け、さらには広々としたアウトドアリビングを設えることもできる。
今回訪ねたのは愛知県大府市の住宅展示場に建つ2F建てのFREXモデル。左右で居住空間を分けた(外壁の色も変えた)二世帯仕様のモダンなレジデンスで、ハイルーフユニットを採用した大空間リビング、1Fから上階を見渡せる吹き抜け、また縦空間を上手に生かしてボルダリングジムを携えたアスレチックルームなど、見どころ満載の空間がレイアウトされている。このレジデンスに一生ものの家具やオブジェを持ち込み、ヘイルメリー流アレンジを施した。
2FのLDKとひとつながりになった「そらのま」に、冬の朝のやさしい光が差し込んできた。10人以上のゲストを招いても決して密にならないだろう贅沢なひろがりのなかで、東京から持ち込んだベンチやソファやエキゾチックなレリーフをセットしていると、まもなく光が室内にも当たりはじめ、自然一体型のパーティーステージが浮かびあがった。
ヘーベルハウス大府展示場FREX2F建てモデル。その2Fに広がる超開放的居住空間。ハイルーフを生かしたリビングに連なるかたちでアウトドアリビング「そらのま」が設えてある。
HIGH ROOF makes comfortable life
室内に開放感を与えるのは、横空間の広がりや開口部の広さだと思い込んでいたが、このモデルハウスにレイアウトされた2Fのリビング(親世帯の住まいを想定)を見れば、要素はそれだけではないことがわかる。このリビングが間取図より広く感じられるのは、天井高をグンと上げるハイルーフユニットを採用し、縦空間に余裕をもたせているためだ。今回はこの心地よい空間に、落ち着いた「茶系」の味つけをしたかったので、ブラウンベースのチマヨラグやアフリカゾウを象った一木造のレリーフ、海図が書かれた地球儀型の洋酒キャビネットなどを持ち込み、雰囲気を出した。
OPEN LIVING makes open mind
強靭な躯体から生まれる「無柱空間」によって、12帖のリビングは21.6帖のダイニング・キッチンと一体化し、さらにアウトドアリビング「そらのま」も室内に連なっている。このフロア自体がひとつの巨大ルームのように感じられるが、それぞれの居場所によって、また時間によっても見える景色や感じる光が変わってくる。だから、リビング、ダイニング・キッチン、アウトドアリビング別にとっておきの椅子を置きたくなるのだ。ネイティブ・スタイルにアレンジしたリビングに据えた椅子は、デンマークの老舗木製家具メーカー「マグナス・オルセン」のラウンジチェア。読書にもギター弾きにもシアター観戦にも満点の座り心地を与えてくれる一脚だ。
2Fキッチンのウォールに設けられた高窓。目隠しになる壁の役割を残しながら採光性を考慮した絶妙なデザイン。キッチンカウンターの奥には、奥さんが趣味室として使える隠れ家のような空間もある。
SORANOMA makes nature lover
限られた敷地に建てる都市型住宅の場合、広々とした庭やウッドデッキを確保するのはむずかしい。だから半屋外空間「そらのま」は貴重な存在。アウトドア料理からプチキャンプまで思いのままに楽しめ、リモートワークの気分転換にも最適な場所になる。近隣からの視線をシャットアウトしながら青空や星空を眺められる贅沢。そして室内に風と光をたっぷり届けてくれる自然の出入口。今回は、室内リビングのソファに敷いたものと別柄のチマヨラグを「そらのま」のソファに敷いてネイティブ・スタイルの統一感をもたせ、さらに味つけとしてメキシコの伝統家具であるエキパルチェアを置いた。ブルーのオルテガ製ラグ(LUCKY JOHN STORE鎌倉店)
OPEN CEILING makes family ties
強靭な躯体を活かしたヘーベルハウスのダイナミズムは、吹き抜け空間からも感じられる。子世帯の家族の住まいを想定した棟は、1Fにある22.6帖のLDKから2Fの子供部屋やリモートワークスペース、さらに屋上階までの動線が気持ちよく突き抜けている。吹き抜けの効果はいうまでもなく、光と風がふんだんに通り抜ける開放感だ。たとえ建物がコンパクトでも、吹き抜けがあれば住む人の心の中にまで爽やかな風を吹かせる。よく観察すると、光と風を縦横無尽に行きわたらせるため、細やかな工夫を積み重ねていることがわかる。要所要所の開口部に加え、階段をスケルトン仕様にし、2Fの動線には腰高の壁ではなくフェンスを用いて「抜け感」を演出している。こうした緻密に考えられたデザインが、吹き抜けの効果を倍増する。
2Fにはリモートワークに最適なスペースが備わっている。吹き抜けで縦につながる設計なので、仕事しながら下階で家事をする奥さんとのコミュニケーションもかんたんに取れるのだ。
HOME GYM makes healthy body
親世帯の住居の1Fと2Fを結ぶ階段裏に設えた本格的なアスレチックルーム。トレーニングマシンを置いただけのレベルではない。雲梯、サンドバック、ロープ昇り、クライミングといったハードな自重トレーニングができる空間なのだ。いずれも建物の内壁や天井に、直接器具を設置したり、吊り下げたりしなければならないため、住宅の強度がネックになる。しかしヘーベルハウスならこんな夢のようなアスレチックルームもたやすく再現できてしまう。とくに驚いたのが吹き抜けの縦空間を利用したクライミングウォール。専門施設も顔負けのクオリティで、さっそくトライしてみたくなった。
無駄のない空間利用によって完成したアスレチックルーム。階段下を利用してトレーニング器具の収納スペースを確保している。
そして秘密基地も、思うがままに。
親世帯の住居の1Fにある10.7帖の寝室と2.5帖のWICとの間に、なにやら誘い込むような細い通路が伸びている。その先にあるのは秘密の隠れ家めいた小さな書斎。広さは2帖ほどだが、ダウンフロアになっていて、採光窓もついているのでイヤな閉塞感はない。絶妙の篭り感を味わえるおかげでリモートワークに集中できそうだし、趣味の時間も没頭できそうだ。作りつけの書棚とデスクも空間を無駄にしないポイント。足元の採光窓は、椅子に座るとちょうど目線の高さにきて、坪庭や外の風景が眺められて気分がいい。居場所は、このサイズで必要十分だとさえ思える。2Fリビング同様、床にはオルテガラグを敷いてみた。
MAN CAVE makes healthy mind
名古屋市の東側、知多半島の付け根に位置する大府市。その中心部にある住宅展示場に建つ2F建てのヘーベルハウス。2021年3月にオープンした愛知県内では最新のFREXモデルだ。重鉄の邸宅が叶えるワイドスパンに、ハイルーフユニットによってつくり出された3m超えの天井高による垂直方向への広がりが加わったダイナミックな居住空間を体感できる。「おうち時間」が増えている昨今、自宅でアウトドア体験を可能にするアウトドアリビングや、本格的なアスレチックトレーニングができるスペースなど、毎日を充実させるアイデア満載の設計も見どころ。建物は二世帯住宅を想定した設計で、親世帯が暮らす棟と子世帯が暮らす棟の外壁を、それぞれ清廉なトバモリーホワイトと重厚なメテオブルーに色分けしている点にも注目したい。外から見ると完全にセパレートした別棟に見えるが、じつは1F・2Fとも左右の住居はつながっている。子世帯の居住空間はダイナミックな吹き抜けが特長だ。
ヘーベルハウス大府展示場FREX 2F建てモデル
住所:愛知県大府市横根町前田40-1 中京テレビハウジング大府内
tel. 0562-45-1225(10:00-17:00 火・水定休)
※写真の設えと実物は一部異なります
取材協力:
Sonechika LUCKY JOHN STORE鎌倉店
GT CAMERA
クロサワ楽器日本総本店
BLACKSMITH Co.
※屋上で火気使用する際は、屋上防水シートへの飛び火対策のため耐炎性のある焚火シートなどを敷いてご利用ください。